まず安倍首相がサプライズ、突然の経済対策発表は黒田総裁への圧力か

  • 経済対策は事業規模28兆円超、今年度の追加歳出額に触れず
  • 黒田総裁への圧力強まる、首相の経済アドバイザーも期待感を誘導

経済対策に関する発表としては異例なことばかりだ。NHKは高校野球の西東京大会の模様を放送していた。安倍晋三首相が経済対策の事業規模を28兆円超と述べたのは、東京から900キロ離れた福岡だった。

  政策ウォッチャーたちは油断していた。これまでの首相の重要な政策発表は東京で行われたし、通常は複数のテレビ局で生中継される。それに首相の口から経済対策の数字が飛び出したのは、農業などさまざまな問題について語り終えた後だった。しかもパッケージ全体には複数年の財政投融資なども含まれ、エコノミストが最も知りたい2016年の追加歳出額には言及しなかった。

  発表のタイミングは予想外だった。先の当局者発言は29日の与党会合で総額が調整されることを示唆していたからだ。安倍首相は経済対策を承認するための閣議を来週開くことを確認した。

  異例のやり方だったために一般国民への周知は比較的限られたものの、早期に発表したおかげで黒田東彦総裁を始め日本銀行の政策委員会メンバーは、29日の政策決定会合に入る前に財政措置の全体的な数字を知ることになった。

  HSBCホールディングスのアジア経済調査共同責任者のフレデリック・ニューマン氏(香港在勤)は、「安倍首相の財政パッケージ発表で、ボールは黒田総裁の側に投げられた」として、「行動を求める圧力が日銀にかかっている」と話した。

  政府の圧力を示すもう一つは27日の日本経済新聞の記事だ。同紙は朝刊の1面で日銀内に追加緩和論があると情報源を示さずに報じた。マイナス金利の引き下げには複数の当局者が反対で、株の購入では力不足との意見があると報じ、国債購入増額の可能性が高いことを示唆した。

  中央銀行が政府の財政を直接手当てする「ヘリコプターマネー」については、黒田総裁が公に否定している。日銀の国債購入増額と財政支出拡大の組み合わせは次善の策といえるだろう。

  安倍首相の経済アドバイザーである前内閣官房参与の本田悦朗氏も今月、日銀が29日に追加措置を取らない決定をした場合はその理由が知りたいと発言。そのような決定なら市場が反応して円は高くなる公算が大きいと指摘し、日銀に対する市場の期待を誘導した。

  UBS証券の青木大樹シニアエコノミストは政策発表について「安倍首相が日銀に圧力をかけていることは確実だ。経済対策が発表されたことで、日銀が今回の会合で行動しないことはさらに難しくなる」と話した。

  日銀に期待を寄せるのは政府ばかりではない。ブルームバーグがアナリスト41人を対象に15-22日に実施した調査では、32人が日銀は今週の会合で追加緩和を決めると予想している。

  ニューマン氏は「日銀は全ての政策手段をほんの少し拡大するだけで、投資家が望んでいるようなバズーカにはならない公算が大きい」と失望のリスクを指摘している。

原題:Abe’s Unusual Stimulus Unveiling May Be Directed at the BOJ (1)(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE