1万7000円拒む春の悪夢、日銀ゼロ回答に身構える投資家-日本株市場

エコノミストのおよそ8割が追加金融緩和を予想する段階になっても、日経平均株価は心理的節目の1万7000円を抜け切れない。投資家の脳裏にあるのは、市場の期待に反し日本銀行が動かず、失望売りで急落した4月の悪夢再来だ。

  ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、日銀は7月に追加緩和に動くと想定してきたが、株式や為替相場が英国国民投票前の水準に戻し、「何より日銀は政府の経済対策を見極めたい意向が強いはず。手段も限られる中、今回は緩和を見送るかもしれない」と予想する。ゼロ回答なら、日本株には「外国人投資家の資金が流入した反動や短期の仕掛け売りによって急落する可能性がある」と警戒感を示した。

  明治安田アセットマネジメントの杉山修司チーフストラテジストも、日銀の金融政策に変更はないとみており、「日本の経済情勢はかなり改善した。この時点からの追加緩和は、日本経済に悪影響を及ぼす可能性が高い」と言う。

日銀の黒田総裁

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg *** Local Caption *** Haruhiko Kuroda

  参院選での与党勝利を受けた経済刺激策への期待で、日経平均は7月2週(11ー15日)に急騰し、2009年12月以来の週間上昇率(9.2%)となった。国債の直接引き受けで財政支出を拡大するなどのいわゆる「ヘリコプターマネー政策」をめぐる思惑で、翌週も続伸。ただし、回復すれば6月1日以来、ほぼ2カ月ぶりとなる1万7000円には届いていない。

  ブルームバーグがエコノミスト41人を対象に22日までに実施した調査によると、日銀が28、29日に開く金融政策決定会合で追加緩和を行うと予想したのは32人(78%)となった。

  しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、「個人的には追加緩和を行ってほしいし、今回は実施すべきと考えるが、実際には政府の補正予算編成に合わせて秋まで見送りとなる可能性もある」と予想。株価は追加緩和をある程度織り込んでいるだけに、日銀が何もしなければ、為替は1ドル=100円に向けドル安・円高が進み、日本株の急落も不可避とみる。

  エコノミストの6割が追加緩和を予想した4月28日の会合時には、日銀が金融政策を現状のまま据え置き、失望売りで日経平均は一時前日比3.7%安と急落。直前は日銀への期待で4月8日の1万5400円台から同25日の1万7600円台まで2000円以上上げた経緯がある。日銀失望後も日本株は上値を切り下げ、英国が欧州連合(EU)離脱の判断を下すショックも加わった6月24日に1万5000円を割り込んだ。

  また、日銀が今回追加緩和に踏み切ったとしても、新味のある政策が打ち出されるとは投資家の間でみられておらず、株式市場が素直に好感しないリスクも懸念されている。エコノミストが予想する追加緩和の手段は、指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ増額が最も多く、マイナス金利の拡大やマネタリーベースの増加ペースの引き上げ、長期国債や不動産投信(J-REIT)の買い入れ増加など。

  三菱UFJ国際投信・戦略運用部の石金淳チーフストラテジストは、「日銀はマイナス金利の深堀り、ETFやJーREITの買い入れ増額くらいはやらざるを得ない」としながらも、「ETFなどは金額が小さく、株式市場へのインパクトは乏しい」と話している。

  東海東京調査センターの長田清英シニアグローバルストラテジストは、「市場関係者の約8割が何らかの金融緩和を見込む中で、日銀が何もしないことは許されないという雰囲気がある」と指摘。一方で、追加緩和の実施有無にかかわらず、「打ち止め感が出るか、手詰まり感がさらに強まる可能性が高く、日銀にとっては非常に苦しい状況」との認識も示した。

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