強硬派の米を日欧がけん制、大手行の自己資本規制強化めぐる議論

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  • 銀行が恣意的に操作できないことが肝要と主張-FRB理事
  • 白川審議官、レバレッジ比率「3%の基準大きく上げるべきでない」

国際決済銀行(BIS)バーゼル銀行監督委員会で2016年末までの合意を目指す大手銀行への資本規制見直し議論で、日米欧当局が攻防戦を繰り広げている。リーマン危機の経験からより厳しい規制導入を主張する米に対し、日欧は行き過ぎた規制となることをけん制している。

  バーゼル委上部組織の中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ(GHOS)は1月の会合で、金融危機後の規制の枠組み作りは今年で終わらせると宣言。自己資本比率算定の際に分母となるリスクアセットの計算方法見直しと、新たに導入する大手行への「レバレッジ比率」の上乗せ議論について年内に結論を出す方針だ。

  金融庁の白川俊介審議官は6月下旬のインタビューで、リスクアセットの計算見直しに関連し「大きく自己資本の要求が増加するのは望ましくない。項目ごとの調整を優先すべきだ」と主張。白川氏によれば、バーゼル委の提案内容を足し上げると単純計算で銀行が自己資本を最大70%増やす必要に迫られるという。

  バーゼル委では、リスクアセットの算出手法の見直しに関連して、例えば現在リスクウエート100%の株式は250%に、最高50%の融資枠は同75%に引き上げることなどを提案している。

反発する銀行界

  リーマン危機の震源地となった米は、市場取引を規制するボルカールール導入などバーゼル委に先駆け一部規制を厳格化してきた。米連邦準備制度理事会(FRB)のダニエル・タルーロ理事はリスクアセット算出に関し、銀行が内部の計算手法で恣意(しい)的に資本水準を操作できないようにすることが肝要だと述べた。

  GHOSでは「全体的な資本水準を大きく引き上げないこと」でも合意している。バーゼル委メンバーでもある白川氏も「規制強化は必要だが、最低限にとどめるべきだ。同じことを言うメンバーもいれば、金融危機の経験から銀行を過信しては駄目だとするメンバーもいる。方向性は拮抗(きっこう)している」と明かした。

  こうした中、銀行界は規制強化に強く反発する。英HSBCホールディングスのイアン・マッケイ財務責任者は5月、バーゼル委が自らの提案にこだわるならば、銀行界は「もう、やりようがない」と懸念を表明した。

  日本の金融界では全国銀行協会が、「全体的な資本水準を大きく引き上げない」としたGHOS合意を尊重すべきだと主張。ヨーロッパでは、欧州連合財務相理事会も規制が合意の通りとなることを期待するとしている。

レバレッジ比率上乗せの必要性

  レバレッジ比率規制は、資産の個別リスクを考慮せず総資産などに対し一定の資本を求めるもの。自己資本比率規制と並行して使われる「最後の歯止め」の役割を期待されている。

  レバレッジ比率についてGHOSでは1月の会合で、国際基準行で総資産の3%とする基本要件で合意しており、現在システム上重要な銀行(G-SIBs)への上乗せの有無を検討している。白川氏は「3%という基準は適切で、大きく引き上げるべきではない。単純な枠組みだけに拘束力が強過ぎてはいけない」と述べた。

  白川氏は個別のリスクを考慮して算出する自己資本比率よりレバレッジ比率規制の水準が厳しくなれば、リスクに対する備えがおざなりになる銀行が出てくるのではないかと懸念している。

  バーゼル委によるとG-SIBs(2015年時点)には、三菱UFJ、みずほ、三井住友の邦銀3メガグループをはじめ、英HSBC、米JPモルガン・チェース、シティ、ドイツ銀などの商業銀行、米ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーの投資銀行を含む30グループが含まれる。

(第11段落以降に白川氏のコメントなどを追加しました.)
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