目先の経済対策より構造改革を-市場関係者から効果に疑問の声

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  • 外国人労働者の受け入れや雇用制度見直しを-クレディSの市川氏
  • 衆院選を念頭に政治の安定性を買う意味がある-大和総研の小林氏

参院選で勝利を収めた安倍晋三首相は、デフレからの完全脱却と成長への道筋をつけるため、経済対策の月内取りまとめを指示した。首相は「総合的かつ大胆」な対策でアベノミクスのエンジンをふかすと意気込むが、エコノミストからは目先の経済対策より第3の矢としての構造改革を急ぐべきだと、その効果に懐疑的な声が聞こえる。

  「何もする必要はない。失業率は3.2%で完全雇用。下手に公共事業をやろうとすると建設労働力が足りず、民間の建設にも支障を来す」-。クレディ・スイス証券の市川真一チーフ・マーケット・ストラテジストは「目先の景気対策ではなく、日本の経済構造を変えていくような手を打っていくべきだ」とし、外国人労働者の受け入れや雇用制度の見直しなどを具体例に挙げた。

  政府は経済対策の財政支出を3兆円規模で検討している。財源に充てられる2015年度の剰余金は税収が7年ぶりに予算額を下回り、約2500億円と14年度(約2兆2000億円)の1割程度にとどまった。政府は赤字国債は発行しない方針で、今年度の国債費など既定経費の使い残しのほか、建設国債の発行で確保。公共事業を柱に財政投融資を活用し、事業規模の拡大でインパクトを狙う。

  政府は26日午前、自民党政務調査会の全体会議に経済対策案を提示した。公共事業は熊本地震や東日本大震災の復旧・復興や防災強化のほか、大型クルーズ船受け入れのための港湾整備など観光インフラ整備が柱。また、財政投融資の活用によるリニア中央新幹線の全線開業の8年間前倒しや整備新幹線の建設加速化も明記された。現段階で対策の規模や効果は盛り込まれていない。

  第3の矢を王道と位置付けるSMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、「景気は改善も悪化もしていない。景気が悪化局面でない今、あまり財政支出をするべきではない」と指摘する。景気が横ばいの時に大型の対策を打てばその後、反動で景気が落ち込むとの見方だ。即効性が期待できる公共事業も、人手不足で大きな効果は期待できないとみる。

評価分かれる

  国内総生産(GDP)比200%超の債務を抱える日本が国債を追加発行することを疑問視する声もある。ワシントンにあるアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)のレジデントフェローを務めるデズモンド・ラックマン氏は「高齢化が進み、家計の貯蓄率が低下傾向にある中、高い水準の債務を抱える日本が赤字支出を増やすことは得策ではない」と言う。

  大和総研の小林俊介エコノミストは「補正予算でどうこうするということ自体がべき論からずれている。長期的な経済成長率の潜在的な力を上げていくのであれば堂々と正規予算に盛り込むべきだ」と指摘。その上で、安倍政権が次の衆院選を念頭に、「経済合理性はあまりないが、経済対策を出すことで株価や支持率を高め、政治の安定性を買う」という観点からは意味があると分析する。

  宮前氏は、支持率向上に結び付くプレミアム付きの商品券や旅行券などの消費喚起策が経済対策の鍵を握るとみる。「消費喚起策を大規模にするなら今年選挙をする気があるという証左だ」と予想。しかし、政府が早々に赤字国債を発行しない方針を示したことから財源の問題が残っている。

  経済対策に肯定的な見方もある。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のシニアアナリストのフランシス・チャン氏(在香港)は、経済対策が融資増につながることから銀行株が上昇するとともに、円安が進むことで輸出関連企業にプラスに働くと予想。輸出の回復基調を下支えし、GDPを押し上げるとみている。

(4段落目に政府が自民党に提示した経済対策案の内容を追加し更新.)
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