過去最高の8割が追加緩和予想、問われる本気度-日銀サーベイ

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  • 7月予想は41人中32人と圧倒的多数-手段トップはETF買い増し
  • 緩和なければ市場失望、円高進行との見方-追加緩和の効果に疑問も

日本銀行が今週開く金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るとの見方が、異次元緩和導入以降の過去最高に達したことがブルームバーグのエコノミスト調査で分かった。2%の物価目標の早期達成のためには何でもやるとしてきた日銀の本気度合いが問われており、緩和がなければ円高が進むとの見方が多い。

  エコノミスト41人を対象に15-22日に実施した調査で、日銀が28、29日の会合で追加緩和を行うとの予想が32人(78%)と圧倒的多数を占めた。 直前予想としては4月会合前(56%)を抜いて、量的・質的金融緩和が導入された2013年4月3日会合(100%=対象13人)以降、最も高くなった。

日本銀行

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  追加緩和の具体的な手法については、エコノミスト39人(複数回答)のうち指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ増が28人(72%)と最も多く、マイナス金利の拡大(25人、64%)、マネタリーベース増加ペースの引き上げ(20人、51%)、長期国債の買い入れ増(18人、46%)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ増(14人、36%)と続いた。

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  消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)だけでなく、エネルギーと生鮮食品を除く日銀版コアCPI、刈り込み平均値、上昇・下落品目比率など、日銀が物価の基調として重視している指標も軒並み鈍化している。企業短期経済観測調査(短観)や生活意識アンケート調査など、企業や家計のインフレ期待も低下を続けている。6月会合では2%目標の達成に「警戒信号が点滅している」との指摘も出た。

無策なら日銀の本気が疑われる

  JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「こうした状況下、7月会合では日銀の2%物価目標の達成に関する本気度が問われる」と指摘。日銀は2%物価目標の実現を目指し、「市場の一部にある『緩和限界説』に真っ向から反論するためにも、今後はマイナス金利の深掘りを含め、さらなる緩和策を実施する可能性が高い」とみる。

  日銀は前回4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で物価目標の2%に達する時期を「2017年度中」と従来の「17年度前半ごろ」から先延ばしした。先送りはこの1年あまりで4回目だった。今回先送りすれば、1月以来3カ月ごとに半年先送りするという事態になる。

   黒田東彦総裁は24日、中国・成都で開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、今週の金融政策決定会合でとりまとめる展望リポートについて、政府が月内にも策定する経済対策の効果も織り込んで経済・物価見通しを作成すると表明。金融政策については「2%の物価安定の目標をできるだけ早期に達成する観点から適切に判断していく」と語った。

  三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎シニアエコノミストはブルームバーグの調査に対し、17年度のコアCPI前年比は0.8%上昇程度にとどまると指摘。日銀の2%達成時期は「18年度前半」に先送りされるとみる。物価がマイナスで推移している状況下、「これを放置することは、目標達成の本気度を疑われることになりかねないため、現状維持はない」とみる。

  野村総合研究所の井上哲也金融ITイノベーション研究部長は「この間の円高によって、少なくとも物価見通しの引き下げは不可避」とした上で、追加緩和を行うことが「『できるだけ早く2%目標を達成する』という現在のコミットメントと整合的な判断になる」という。三井住友信託銀行の花田普調査部経済調査チーム長も「ここで緩和しなければ日銀の姿勢が決定的に疑われる状況にある」という。

緩和やってもやらなくても円高

  日銀が策を打たなければ失望感から円高が進むとの見方が強い。日本総合研究所の山田久チーフエコノミストは「市場が追加緩和を織り込む中、何らかの対応がなければ、このところの円高修正・株高の流れを逆流させかねない」という。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストも「緩和が行われなかった場合、追加緩和を織り込んでいた市場は失望し、円高・株安が進む」とみる。

  もっとも、追加緩和手段が限られる中、サプライズを起こすのは難しく、日銀が追加緩和を行っても実体経済への効果や円安・株高を促す影響は乏しいとの見方も根強い。明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは追加緩和が行われても、「よほど大胆な内容にならない限り、材料出尽くし感や打ち止め感から、長期金利のマイナス幅は縮小、円高、株安が進む可能性がある」という。

  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは「追加緩和を実施してもしなくても、円高になることには変わりはない」とみる。既に市場は追加緩和の可能性を相当織り込んでおり、実現しても「ドル円相場は『噂(うわさ)で買って、事実で売り』となろう。現状維持となった場合は政策運営の手詰まりを意識する声が海外投資家を中心として高まり、やはり円高になろう」という。

  クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは「量的・質的金融緩和の拡大で市場の期待を上回るサプライズを演出するのも、もはや不可能」と指摘。「中途半端な拡大でお茶を濁すとなれば、むしろ量的・質的緩和の限界を自ら露呈することとなり、市場の大きな落胆から逆効果となるリスクが極めて大きい」とみる。唐鎌、尾形両氏は今会合では追加緩和の見送りを予想する。

日銀内にも持続可能性への懸念

  複数の関係者によると、日銀内で巨額の長期国債を買い続ける現在の量的・質的金融緩和の持続可能性に懸念を示す向きが増えつつあり、政策運営はより慎重に効果とコストを見極めるべき局面に来ているとの見方が広がっている。

  日銀は黒田総裁の下で2013年4月、2%目標を「2年程度の期間を念頭において、できるだけ早期に実現する」とのコミットメントを掲げて、量的・質的緩和を導入した。しかし、3年以上経過しているにもかかわらず、いまだに2%の物価目標の早期達成のめどが立たず、度重なる達成期限の先送りを迫られている。 

  今会合で質を中心とした追加緩和を見込むみずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは、同時に「2年の期間の弾力化、2%の目標の長期目標化」が行われると予想。政府主導で13年1月に結んだ「政府と日銀の協定を結び直すことも考えられる。円安の追い風に乗った短期戦から、為替が逆風に転じた中、長期戦の態勢で時間をかけた対応にギアシフトを行うタイミングに来ている」と指摘する。

国債買い入れの減額は時間の問題

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「長期国債のスムーズな買い入れが困難になるのは、やはり時間の問題」であり、「将来的には、買い入れ額が減額される可能性は高い」とみるものの、「インフレ目標達成前、あるいはオペに明確な問題が生じる前に減額に踏み切れば、目標へのコミットメントが疑われ、円高が進む恐れがあるため、当面は考えにくい」と指摘する。

  伊藤忠経済研究所の武田淳主席研究員は「現行の金融緩和のフレームワークが限界に来ていることは、日銀が追加緩和を見送り続けていることからも明らかだ」と指摘。「次回の追加緩和の後も安定した物価上昇の実現が見通せない場合、フレームワークの修正を迫られる」とみている。

(8段落目に24日に行われた黒田日銀総裁会見の発言を追加し更新します.)
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