【今週の債券】長期金利低下か、緩和観測根強い―超長期オペ減に警戒も

  • 長期金利の予想レンジはマイナス0.30%~マイナス0.15%
  • 40年入札、警戒感あるが買わなければいけない向きも―三井住友AM

今週の債券市場で長期金利は低下すると予想されている。週末の日本銀行の金融政策決定会合では、政府の景気対策の策定に合わせて追加緩和策に踏み切るとの観測が根強く、利回り曲線にフラット(平たん)圧力が掛かりやすいとの見方が背景にある。

  長期金利の指標となる新発10年物国債利回りについて、ブルームバーグが前週末に市場参加者5人から聞いた今週の予想レンジは、全体でマイナス0.30%~マイナス0.15%となった。前週は21日にマイナス0.215%と、約3週間ぶりの高水準まで上昇する場面があった。黒田東彦日銀総裁のヘリコプターマネーの否定発言報道を受けて、週末はやや買い戻された。

  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、「今週は米国、日本と金融政策会合が続くが、注目度が高いのは日銀会合。安倍晋三首相はすでに景気対策を指示しているが、物価安定目標の達成に向けて日銀も追加の金融緩和政策を決定しよう」と言う。「緩和の具体的な内容については見方が分かれており、為替市場の変動要因にもなっているが、国債買い入れによる量的緩和の拡大は限界に近づいていると思われ、マイナス金利政策の小幅拡大や指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ増額などが決定されよう」と話した。

  日銀は今月28、29日に金融政策決定会合を開く。会合の結果発表時に新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)を策定する。29日午後3時半から会合結果を踏まえて、黒田総裁が記者会見を行う。

  SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは、「週末の日銀決定会合を注視する一週間となる。金融政策関連のニュースに市場は過敏な反応を示したり、政府の財政パッケージも同じタイミングでの決定が目指されているため、追加的な報道がされる可能性もある」と指摘。「財政政策は相当な水膨れの事業規模になってくる公算があり、実質を伴うような対策が盛り込まれるかどうかに市場の関心は向かうのではないか。それがなければ株式市場もこれ以上のポジティブな反応は難しいだろう」と言う。

  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、「英国、欧州の中央銀行が緩和を見送る中で、日銀だけが強力な追加緩和を打ち出す可能性は低いだろう」と指摘。「市場の反応は円高とイールドカーブのフラットニング化が基本シナリオだろう。円は105円では止まらず、102円程度まで上昇するかもしれない。中期ゾーンは緩和期待を相当織り込んでいる一方、超長期債はヘリコプターマネー懸念で売られてきたのが、巻き戻されるイメージだ」と話した。

  米国では26、27日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。5会合連続で利上げが見送られる見通し。昨年12月にゼロ金利を解除した後、金融引き締めに慎重な姿勢を維持している。

  岡三証の鈴木氏は、「FOMCでは米景気の底堅さが確認され、早期の米利上げ観測が高まる可能性もあろう。英国のEU離脱による世界経済の減速懸念は残るが、主要国の政策期待からしばらく投資家のリスク回避姿勢は後退しよう」と言う。

  日銀決定会合終了後の29日午後5時に、当面の長期国債買い入れ運営方針が発表される。8月初回の国債買い入れオペで、超長期ゾーンの購入額が前月に続いて減額されると懸念する見方が出ている。

  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、「足元で国債買い入れの柔軟化が日銀会合内でも指摘されたが、柔軟化は超長期の買い入れ減と同義となる。国債買い入れに対する日銀の方向性が見えない中で、超長期債のボラティリティが高まる要因となりそうだ」と述べた。

40年債入札に注目

  財務省が今週実施する国債入札は40年物と2年物の2本。26日実施の40年債入札は発行額が4000億円程度。利回り競争入札によるダッチ方式で、応札は0.5bp刻みで行う。9回債のリオープン発行となり、表面利率は0.4%となる見込み。一方、28日の2年債入札は発行額が2兆3000億円程度。表面利率は0.1%に据え置かれる見込み。

  三井住友アセットマネジメントの深代潤債券運用グループ理事兼副ヘッドは、「40年債入札については、利回り曲線が傾斜化したので波乱はないと思う。警戒感はあるが、買わなければいけない人はいる。2年債入札もマイナス金利政策で追加緩和期待がくすぶっているので、多少応札が入るのではないか」と話した。

予想レンジと相場見通し

  市場参加者の今週の先物中心限月、新発10年物国債利回りの予想レンジと債券相場見通しのコメントは以下の通り。

*T
◎パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長
先物9月物=152円50銭-153円80銭
10年物国債利回り=マイナス0.30%~マイナス0.15%
  「日銀決定会合は悩ましい。ヘリコプターマネーはないとしても、3次元の緩和は実施する可能性がある。ただ、マイナス金利は失敗しているし、ETF増額だけだと金融政策とは言えないので、量の面でも財投債の買い入れなどを出してくるかもしれない。一方、異次元緩和の継続性に日銀内部でも疑念が出ているとの報道もあり、買い入れの柔軟化を打ち出す可能性もある。これはヘリコプターマネーとは真逆で、むしろ金融引き締め的ですらある」

◎メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジスト
先物9月物=152円30銭-153円80銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.30%~マイナス0.15%
  「超長期債のボラティリティに注目。まず財政政策がどうなるか。これまで20兆、30兆円といった規模が報じられたほか、ヘリコプタマネーへの思惑もあってイールドカーブはスティープ化圧力が加わってきたが、修正される可能性がある。日銀会合では、財政政策をサポートする意味合いでETFなどの買い入れ増額が想定される。国債以外の債券の買い入れの可能性も排除できない。2%目標達成見通しなどを展望リポートで掲げ、緩和を実施しない可能性も排除できない」

◎三井住友アセットマネジメントの深代潤債券運用グループ理事兼副ヘッド
先物9月物=152円90銭-153円65銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.27%~マイナス0.20%
  「経済対策期待から国債増発に対する懸念が多少盛り上がっていたが、真水ではそれほど出ない見通しだ。需給逼迫(ひっぱく)の状況も変わらない。真水の増額や金融政策の枠組み変更がなければ、長期金利は上昇しないだろう。週末の日銀決定会合を控えてリスクが取れる環境でもないので、もみ合いではないか。日米で経済指標も出てくるが、景気はそれほど悪くなっていない。イベントを控えて身動きが取れない半面、売りも出ないとみている」

◎岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジスト
先物9月物=152円80銭-153円50銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.25%~マイナス0.20%
  「追加緩和が相場を支えようが、景気対策への警戒感が続くことで、長期国債利回りの大幅な低下は見込みづらいだろう。英国のEU離脱による世界経済の減速懸念は残るが、主要国の政策期待からしばらく投資家のリスク回避姿勢は後退しよう。26日に40年国債の入札が予定されていることも、相場の上値を抑える要因となろう。財政面からの景気対策が警戒されることで、長期、超長期国債を中心に上値の重い展開が続こう」

◎アムンディ・ジャパンの浜崎優市場経済調査部長
先物9月物=153円00銭-154円00銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.30%~マイナス0.20%
  「日銀決定会合までは、長期金利はそれほど下がらず、上がらずもみ合い圏で推移し、会合後に水準を切り上げるとみている。日銀が次回会合でマイナス金利政策の深掘りや、国債買い入れの拡大など、何かしらの追加緩和策を打ち出せば、いったんは金利は下がるものの、その後は材料出尽くし感が広がり、金利は上昇に転じると予想している。為替は追加緩和後でも円が上昇し、緩和が見送りとなった場合は円が急伸する可能性が高いとみている」
*T

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE