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日銀内に広がる持続可能性への懸念、量的・質的金融緩和-関係者

更新日時
  • 7月29日の金融政策決定会合には言及せず-関係者
  • 大規模な国債購入や2%物価目標は見直しが必要との声も

日本銀行内で、巨額の長期国債を買い続ける現在の量的・質的金融緩和の持続可能性について懸念を示す向きが増えつつある。複数の関係者への取材で明らかになった。

  木内登英審議委員をはじめ何人かの日銀幹部やOBはこれまでも、黒田東彦総裁の異次元緩和の下での大規模な長期国債購入は持続不可能であり、2%物価目標の早期達成は困難だと公言してきた。

Bank of Japan Gov. Haruhiko Kuroda Press Conference

日銀本店

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  複数の関係者によると、日銀内ではここに来て、政策運営はより慎重に効果とコストを見極めるべき局面に来ているとの見方が広がっている。これらの関係者は、29日の金融政策決定会合や、黒田総裁自身の見解については言及していない。関係者は、新たな政策の在り方や、そのタイミングについても言及していない。

  日銀OBを含む外部の識者の多くは、量的・質的緩和の導入から3年以上経過しているにもかかわらず、いまだに2%の物価目標の早期達成のめどが立たず、度重なる達成期限の先送りを迫られている現状を踏まえ、2%目標を「2年程度の期間を念頭において、できるだけ早期に実現する」とするコミットメントを修正するよう求めている。

  市場では、日銀が政府の財政支出を紙幣増刷で賄う「ヘリコプターマネー」導入への関心も広がっている。黒田総裁は21日に放送された英BBCラジオ4の番組で日本にはヘリコプターマネーの必要性も可能性もないと否定。その上で、日銀が必要とすれば追加緩和に大きな制限はないと語った。インタビューは6月17日に収録されたものだとBBCが明らかにした。

国債金利

  1月のマイナス金利の導入以降、20年物国債利回りが一時マイナスに沈むなど、超長期まで金利が大きく低下していることを受けて、三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の三菱東京UFJ銀行が国債市場特別参加者(プライマリーディーラー、PD)の資格を返上するなど、金融業界の不満が高まっている。生保など機関投資家の運用難も著しく進んでいる。

  複数の関係者によると、日銀内では、歴史的低水準となっている国債利回りが今後、実体経済や物価に及ぼす影響を期待する声とともに、このタイミングで長期国債の買い入れのペースを一段と加速すれば、現在の枠組みの寿命がさらに短くなることへの懸念も出ている。

  日銀は2013年4月、就任したばかりの黒田総裁の下で量的・質的金融緩和を導入し、長期国債の保有残高が年間50兆円増えるペースで買い入れを行うと表明。14年10月にはこれを80兆円に拡大した。さらに今年1月には日本で初となるマイナス金利の導入に踏み切った。

  しかし、日銀は前回4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で目標の2%に達する時期を「17年度中」と従来の「17年度前半ごろ」から先延ばしするなど、世界経済の減速や期待外れの賃上げなどを理由に、度重なる目標の先送りを強いられている。月末の展望リポートで再度先送りすれば、1月以来3カ月ごとに半年先送りするという事態になる。

2つの大きなうそを改める機会に

  広がる金融政策の限界論に対し、黒田総裁は6月に行った講演で、できるだけ早期に物価2%を実現する目標は変えないと強調。4月28日の記者会見では「金融政策に限界があるとは考えていない」とし、今後も必要と判断すれば量・質・金利の3次元で追加緩和をする考えを示した。

  元日銀理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブフェローは19日のインタビューで、17年度中の2%達成は「とうていあり得ない」とした上で、日銀が月末の会合で「何もしないというのは無理だろう」と述べた。その上で、「近い将来に2%達成が無理なことや、緩和手段が際限なくあるはずはないことは、誰もが知っている」と指摘。今会合は、2%目標の早期達成は可能であり、その手段は無限だとする「2つの大きなうそ」を改める絶好の機会だと語った。

  同じく前理事の門間一夫みずほ総合研究所のエグゼグティブエコノミストは11日のインタビューで、マイナス金利拡大も量の拡大も慎重な判断が必要で、もはやバズーカ砲第3弾の「余地はない」との見方を示した。量は次第に限界に近づいており、そう遠くない時期に長期国債の買い入れペースを落としていくことが「常識的な将来の見通し」だと語った。

  

(21日夕配信の記事に黒田氏のBBC番組での発言について説明を追加.)
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