【インサイト】今や4割の運用担当者が期待するヘリコプターマネー

債券アナリストが米経済の悲惨な見通しを先を争って出すものだから、債券投資家は一層不機嫌な一団と化した。

  モルガン・スタンレーの金利戦略責任者は米国債の10年物利回りが、これまでの過去最低をかなり下回る水準である1%に向かうとみているが、スリクマール・グローバル・ストラテジーズからはもっと極端な見通しが出ている。現在のインフレ率を下回る0.9%に達するというのだ。しかし、そこで止まる理由はあるのだろうか。マイナス利回りを予想する向きはないのか。

  利回りが低下すれば価格は上昇するので、こうした見通しは債券相場に強気ではあるが、世界の成長という観点からすれば、非常に暗い。利回りがほとんど見込めない資産に現金をつぎ込むという投資家の衝動を正当化できるのは、インフレや成長が実質的にない世界のみだ。

  このため中央銀行が追加緩和することに投資家が楽観的であるのは、それほど驚きではない。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の7月のファンドマネジャー調査によれば、財政政策を引き締め過ぎとみる割合は過去最高の44%に達した。日本銀行の次回の政策決定会合で、利下げか資産購入拡大という何らかの緩和があるとみるのは3分の2。向こう12カ月にヘリコプターマネーが実施されるとみるのは約39%で、前月調査時の27%を上回った。

  この調査結果は結構、衝撃的だ。債券購入者はこれまで何年も、低金利政策は資産バブルをあおり貯蓄者を罰するとして批判してきたのに、今では刺激策が先行き唯一合理的な措置だとみる投資家が増えている。しかも、資産運用担当者の相当な割合がヘリコプターマネーという構想を含む一連の追加緩和が予見可能な効果を市場にもたらすと確信しているようだ。

  しかし、中銀の行動へのこのような完全な信頼は間違っている。これまでで最も積極的な緩和を講じても逆効果を引き起こしかねないのは、日銀だけみても明らかだ。日銀がマイナス金利を発表した際、比較的リスクの高い資産への投資が進み成長が促進させると期待された。だが、債券利回りが急低下すると、株式相場も下落。と同時に、円は相当高くなり、輸出の面で不利になった。

Odd Response

The yen strengthened versus the dollar after Japan announced a negative-rate policy earlier this year

Source: Bloomberg

  欧州では中銀が国債のほか、社債購入も積極的に進めているが、債券投資に対する投資家の熱狂は幾分冷めつつあるようだ。実際、欧州の国債利回りは上向き始めている。

Lower Bound?

German bond yields have started to tick up, even as the ECB maintains its stimulus program

Source: Bloomberg

  一方の米国では連邦公開市場委員会(FOMC)が近い将来の利上げを引き続き示唆するものの、利回りは過去最低を更新してきた。 

Up Means Down

U.S. Treasury yields have fallen since the Federal Reserve raised rates in December

Source: Bloomberg

  ヘリコプターマネー構想は盛り上がりつつあるが、実際の政策がどのようなものになるかについて幾つもリポートが出るなど、その構想自体が曖昧だ。コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツで世界の資産分散の共同責任者を務めるトビー・ナングル氏は、量的緩和が実質的にヘリコプターマネーの別形態であるとの議論を展開する。つまり、空から降ってくるはずの現金は既にそこにあるということだ。そこに新たな形が多少加わっても、インフレや成長を本当に押し上げられるかははっきりしない。

  投資家は明らかに自信を喪失している。BofAの調査によれば、資産の現金保有比率は2001年以来の高水準。そして、低利回りがどこまで行くのかに関する力学を完全に理解していないことを自覚している。アナリストも予想モデルを何度もいじっては修正している。そして、政策担当者らも力学を完全に把握できていない。 

  投資家の期待にもかかわらず、中銀は助けに来てくれない。当局自身が予測不能な債券の嵐の中で、立ち尽くしている。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:44% of Fund Managers Listening for Helicopter Money: Gadfly(抜粋)

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