67兆円規模のLNG契約に影響の可能性-転売制限は違法と判断なら

  • 欧州事例みると「半分は外交交渉」-仕向け地条項の削除めぐる協議
  • 交渉には数年単位の時間が必要になる可能性も

公正取引委員会は現在、液化天然ガス(LNG)の長期売買契約に含まれる転売を制限する「仕向け地制限条項」について情報収集を進めているが、仮にこの条項が独占禁止法に抵触すると判断されれば、国内の企業が締結した約67兆円規模の長期契約をめぐり、売り手との再交渉が必要になる可能性がある。

  日本は世界最大のLNG輸入国。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによると、国内の電力やガスなど各社が2017年から40年までの間に調達するLNG(既契約分)は約14億6300万トン。このうち転売が制限されていないと考えられるものを除外すると、約10億3000万トンに仕向け地制限条項が課されている可能性があり、これは15年の1トン当たりの輸入金額を基に試算すると約67兆円に相当する。

  従来LNG供給者側は天然ガスの液化設備やLNGの輸送船建造など多額の投資を確実に回収するため、買い手側のLNG受け入れ基地を定める仕向け地条項を契約に盛り込み、長期的に販売先を固定してきた。

  国内では電力小売りの全面自由化による需要の変動に加え、原発再稼働や再生可能エネルギーの導入拡大など他電源からの供給も見通しが立ちにくい状況。しかし、調達したLNGが余剰となった場合でも契約にこの条項が含まれていると転売はできない。公取委はこの条項が付与されていることで市場での自由な競争が制限されている恐れがあるとして、予備的な調べを進めている。

  日本エネルギー経済研究所の橋本裕研究主幹は、LNGの売買契約からの仕向け地条項撤廃は、個別の契約ごとに調査しなければいけないため「難しい問題」と指摘する。欧州委員会は04年、仏ガス公社GDF(現エンジー)が隣国イタリアの2社と締結したLNGや天然ガスの売買契約に含まれる仕向け地条項について、競争法(独禁法)上違反と決定。しかし、これを契機に欧州域内の仕向け地条項が全面的に無効となったわけでなく、露ガスプロムと中東欧企業間の交渉は現在も継続しているという。

産ガス国との外交交渉

  財務省の統計によると、15年の日本のLNG輸入先を見ると首位はオーストラリア。その後にマレーシア、カタール、ロシア、インドネシアと続く。エネルギー資源の輸出を国営企業が担うケースが多い。

  立教大学法学部の東條吉純教授は、欧州の事例では「半分は外交交渉」だったと指摘する。日本でも公取委が独禁法違反との決定を下して排除措置命令など行政処分を出す代わりに、「調査は取りやめるが、契約から仕向け地条項を今後は外すというような譲歩を取り付けることはあり得る」という。その場合、欧州のように交渉に数年単位の時間を要する可能性もあるとの見通しを示した。

  電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は15日の定例会見で、LNG火力の燃料調達で「柔軟性を持つのは非常に重要」と述べ、電力各社は契約期間や価格決定時に利用する価格指標の多様化、足元の需要に応じて受け取る量を柔軟に変化させる条件などを売り手との間の交渉で獲得してきたと説明した。公取委の動きはそうした電力業界の取り組みを後押しするものと話した。

  同氏は「需給の変動にしっかり対応できるのは、トータルの電力の安定供給と安価な供給につながる」との考えを示し、LNG火力発電所を有する電力会社から電気を購入する一般家庭や企業などに電気料金の引き下げなどで間接的に好影響を及ぼす可能性があると指摘した。

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