高橋是清蔵相の生涯と死に見るヘリコプターマネーの功罪

  • 高橋蔵相は日本を大恐慌から救ったとバーナンキ氏は2003年に指摘
  • 二・二六事件で高橋蔵相暗殺後、日本は財政規律破綻とインフレに

「ヘリコプターマネー」採用に向けた圧力に直面する日本銀行の黒田東彦総裁は、戦前の高橋是清蔵相の生涯、そして死をぜひとも思い起こすべきだろう。

  高橋蔵相は1930年代前半、日本経済の立役者として日銀による国債引き受けという、ヘリコプターマネーに相当する政策を打ち出した。金本位制からの離脱と相まって、高橋蔵相のリフレ策は「日本を大恐慌から見事に救った」と、当時米連邦準備制度理事会(FRB)理事だったバーナンキ前議長は2003年の来日時の講演で指摘した。円相場の急落も寄与した。

  残念ながら話はここでおしまいとならない。高橋蔵相はその後、軍事費削減による赤字抑制を目指したが、1936年の二・二六事件で反乱軍の将校に暗殺された。財政規律の破綻とインフレ高進に見舞われた日本は、第2次世界大戦に歩みを進めることになった。

  そして今、デフレ的な落ち込みを回避しようと黒田総裁が努める中、どのような教訓を導き出すべきだろうか。

  バーナンキ氏の言う通り、高橋蔵相の施策は効果を発揮した。だが、その後の歳出引き締めはできずじまいとなり、日本の財政と経済に悪影響を及ぼした。

  ノーベル経済学賞受賞者の故ミルトン・フリードマン氏が1969年に考案したヘリコプターマネーという言葉は、財政政策と金融政策の融合の簡略表現となった。政府が市中で国債を発行するのではなく、中央銀行から直接的に資金を引き出し、減税ないし歳出の形で経済にそのまま資金を投入する。それがどのように機能するか、正確な動きは十分に定義されていない。

  日本の場合、金融政策それ自体で経済に対してできることが最も限界に近づいており、ヘリコプターマネーに関する議論の最前線にある。だが、FRBのイエレン議長や欧州中央銀行(ECB)のプラート理事を含め他の中銀当局者も、事態が極めて切迫した場合は、こうした急進的な戦略の採用の可能性を排除していない。

  問題は、ヘリコプターマネーが破滅への道につながりかねない点だ。繰り返し活用されれば最終的にハイパーインフレーションに陥ることとなる。1861-65年の米南北戦争時の南部連合や2000年代のジンバブエの例が挙げられる。

  それこそがまさに、日銀をはじめとする中銀の多くがそうした措置を強く否定している理由であり、黒田総裁も4月に国会で、既存の法的枠組みの変更がない限り、ヘリコプターマネーは不可能だと語った。

原題:Helicopter Cash Clues Lie in Life and Death of Japanese Viscount(抜粋)

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