【今週の債券】長期金利上昇か、政府・日銀対策めぐる議論に不透明感

  • 長期金利の予想レンジはマイナス0.27%~マイナス0.18%
  • 月末までどのようなかく乱材料登場するか分からず-SMBC日興 

今週の債券市場で長期金利は上昇すると予想されている。ヘリコプターマネー政策など政府が策定する景気刺激策への警戒感から、売り圧力が掛かりやすいことが背景にある。

  長期金利の指標となる新発10年物国債利回りについて、ブルームバーグが前週末に市場参加者4人から聞いた今週の予想レンジは、全体でマイナス0.27%~マイナス0.18%となった。前週末は、政府・日銀によるヘリコプターマネー政策をめぐる議論に対する警戒感から売りが優勢となり、一時マイナス0.225%と2週間ぶり水準まで上昇した。

  野村証券の松沢中チーフストラテジストは、「まさに空から降って沸いたようなヘリコプターマネー論が債券市場でフラット化修正のきっかけとなった」と指摘。「ヘリコプターマネーや永久国債といった極端な政策論は、いったんこれに乗りかけた海外勢の間でも徐々に下火になっていこうが、政府・日銀がそれぞれ近い将来、政策を打ち出すであろうことには変わりがない」とみる。

  安倍晋三首相と先日官邸で会談したベン・バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、今春に訪米した前内閣官房参与の本田悦朗氏との間で、永久国債発行のアイデアを議論していたことが分かったとブルームバーグが14日に報じた。デフレ克服の最も強力な手段として比喩的に「ヘリコプターマネー」に言及し、政府が市場性のない永久国債を発行、これを日銀が直接全額引き受ける手法を挙げたとしている。日銀は今月28、29日に金融政策決定会合を開く。

  SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは、「英国の欧州連合離脱決定がもたらしたグローバルなリスク回避局面がとりあえず終息。そこにバーナンキ前FRB議長の来日を一つのきっかけとしてにわかに盛り上がりをみせるヘリマネブーム。不確かな材料で国債市場も左右されている状況からすると、ここから月末の金融政策決定会合までの間、どのようなかく乱材料が登場するかは分からない」と言う。

  政府は安倍晋三首相が指示した経済対策について10兆円規模を軸に調整に入っている。事情に詳しい当局者が明らかにした。財源については2015年度の決算剰余金や国債金利の低下に伴う利払い費の減額、建設国債などを想定している。政府は月内の取りまとめに向け、今後、与党側と調整する。

  野村証の松沢氏は、「政策が固まるのに8月上旬までかかるとみられるため、少なくとも28、29日の日銀会合前に、政策期待が消えてしまうことは考えにくい。また、極端な政策の思惑によって相場調整が一気に進まない分、時間をかけてゆっくりと進むと思われる」と言う。

  前週末にトルコで発生した軍部の一部によるクーデターは失敗となった。中東情勢も含めた政情不安を背景に先行した米国債買いが、週明けには一転して売りが優勢となった。連休明けの円債市場でもこうした流れを引き継ぐ見通し。

20年債入札

  財務省が今週実施する国債入札は20年物と流動性供給の2本。20日に行われる20年債入札は発行額が1兆1000億円程度。157回債のリオープン発行となり、表面利率は0.2%に据え置かれる見込み。一方、22日の流動性供給入札は発行額が5000億円程度。残存期間が5年超から15.5年以下の国債が対象となる。

  20年債入札について、パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、「マイナス金利ばかりなので、プラス金利の年限は買いに向かいやすい。20年債は水準的にはあまり魅力はないが、日銀が買い入れを減らしても持ちこたえられる年限。10年債が売られなければ、現行水準から大きく離れないと思う」と予想した。

  週内最大の需給イベント終了後には、追加緩和観測を背景に債券相場が堅調推移に転じるとの見方が出ている。マスミューチュアル生命保険運用戦略部の嶋村哲金利統括グループ長は、「当面は経済対策への期待で上値の重い動き」としながらも、「金利上昇もマイナス金利の深堀りや国債買い入れ増額などの追加緩和観測で相殺される部分がある」と指摘。「週末にかけては金利が徐々に低下トレンドになっていくとみている。日柄的には20年債入札が行われる20日が底打ちの可能性がある」と話した。

予想レンジと相場見通し

  市場参加者の今週の先物中心限月、新発10年物国債利回りの予想レンジと債券相場見通しのコメントは以下の通り。

*T
◎岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジスト
先物9月物=152円80銭-153円40銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.25%~マイナス0.20%
  「上値の重い展開。やや軟調なもみ合いではないか。金融緩和期待や日銀の買い入れもあり、積極的に売る人もいないだろうから、相場の下値も限られる。ポイントは20年入札で相場の上値を抑える。30年入札も低調だった。どのくらいの利回り水準で収まるかだ。入札は0.2%程度がめどで、調整含みの展開が続くのではないか。若干スティープ化が予想される。10年金利がどこまで上昇するかによるが、0.2%ぐらいが目線ではないか」

◎パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長
先物9月物=152円60銭-153円50銭
10年物国債利回り=マイナス0.27%~マイナス0.18%
  「日銀の金融政策をめぐる思惑が注目される。月末の会合で追加緩和があるのかどうかだろう。あるならどのような手法でやるのか。ないなら5年債などの水準は買われ過ぎなので金利上昇してもおかしくない。日銀の国債買い入れ額がどうなっていくかも焦点だろう。ヘリコプターマネーで買うのか、それとも柔軟化して減らしていく方向性なのか。それによって利回り曲線の形状が変ってくる」

◎アムンディ・ジャパンの浜崎優市場経済調査部長
先物9月物=152円75銭-153円50銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.27%~マイナス0.20%
  「先週はリスクオンとなり、株高・円安が進んだほか、日本の景気対策の規模が大きくなりそうだということで、長期金利には上昇圧力がやや掛かった。中国の経済指標が悪くなく、マーケットセンチメンが崩れなかったことも金利上昇要因となった。ただ、景気対策に伴う国債増発は需給を崩すような金額に膨らまない見込み。実際に景気が回復していかない限り、長期金利はマイナス0.2%台での推移が続くとみている」

◎大和証券の山本徹チーフストラテジスト
先物9月物=152円80銭-153円40銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.26%~マイナス0.20%
  「米国株では史上最高値の更新が続き、国内20年債利回りは0.1%台まで上昇し、これまでとは打って変わって明るいムードに変化している。短期金利が政策期待で押さえつけられる一方で、長期金利は景況感の改善やヘリコプターマネーへの思惑などを反映し、イールドカーブはスティープニング化。政策対応期待では、国内では月末の日銀決定会合での追加緩和が確実視されることに加え、10兆円超の財政出動、さらにはヘリコプターマネーに対する思惑まである」
*T

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