JPモルガンは米国の縮図、ダイモンCEOが格差是正に取り組む決意

  • ダイモンCEOが米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿
  • 「多くの米国人の賃金はあまりに長く、上がらないままできた」

米銀JPモルガン・チェースはある意味、米国社会の縮図だ。一部は高給取りだが、その他大勢の賃金は伸び悩んだままだ。

  賃金格差をめぐる議論が全米に広がる中、同行のジェイミー・ダイモン会長兼最高経営責任者(CEO)も声を上げた。12日付の米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿し、まとまった数の従業員を対象にした賃上げ計画を明らかにした。

  この寄稿でダイモン氏は、低賃金や所得格差が何百万人もの人々のより良い人生の妨げになっていると指摘。大手銀行がトップバンカーへの報酬を減らす方向にある中、ダイモン氏は低賃金で働く従業員が経済的により恵まれたポジションにステップアップできるよう米企業社会に支援を促した。

  「多くの米国人の賃金はあまりに長く、上がらないままできた」と同氏は記した。

  働けども楽にならない労働者の代弁者にダイモン氏はふさわしくないかもしれないと思う者は多いだろう。JPモルガンは昨年、CEOである同氏の報酬を35%引き上げて2700万ドル(約28億1000万円)とした。対して、同行で最も給与が低い従業員の時給は10.15ドルだ。

  金融危機で大銀行が公的資金で救済されてから8年。経済成長と賃金は低迷したままで、従来の経済学への信頼は失われた。英国民投票で欧州連合(EU)離脱支持となり、米国では不動産王ドナルド・トランプ氏が大統領選で共和党の候補指名獲得を確実にするなど、欧米全般にポピュリズム(大衆迎合主義)が広がっている。

  こうした政治環境と労働市場逼迫(ひっぱく)の兆しを受け、場合によっては何十年も据え置かれてきた賃金は緩慢ながらもようやく上がりつつある。ギャップやスターバックス、ウォルマートなどの米企業が報酬引き上げに動き始めた。

  だが、JPモルガンのような大銀行ほど、賃金格差が顕著な米企業は少ないだろう。同行で働く従業員23万7420人の仕事は、低賃金の窓口係から高給取りの投資銀バンカーまでさまざま。投資銀部門の従業員4万9067人の昨年の報酬は平均して20万3252ドルだったが、ここまで幸運でない行員も多い。カリフォルニア大学バークレー校の2013年の調査によると、米国の銀行に勤める窓口係全員の3分の1近くが、食費や医療補助など何らかの政府支援を受けていた。

  ダイモン氏は寄稿で、米国民のあまりにも多くが「成功への公正な機会」を得ていないとし、普通の労働者の賃金を上げる時期が到来したと主張。まずはJPモルガンで窓口や顧客サービス担当が大半の1万8000人を対象に昇給を実施すると説明した。19年までにこうした従業員の時給は12ー16.50ドルに上がるという。もっとも、放っておいても一部地域では賃金が引き上げられたかもしれない。ニューヨークやサンフランシスコなどコストが高い都市では18年までに最低賃金を15ドルとすることが承認されたからだ。

  とはいえ、今回の展開は賃上げが小売りやファストフード業から金融の底辺まで広がりつつあることを示唆する。調査会社ヤルデニ・リサーチのエドワード・ヤルデニ社長はJPモルガンの動きについて、「労働市場の逼迫を示唆する」とした上で、「労働者には確かにプラスだ。低所得者の賃金が上がれば消費に回る」とコメントした。

  ダイモン氏(60)は自身が国家にとって重要と見なす問題に声を上げた。過去には移民や都市の衰退についても発言した同氏だが、12日の寄稿では米国にとって非常に重要な課題として教育を取り上げた。「約500万人の若者が仕事もしていなければ学校にも行っていない。働いている者はもっと給料の良い仕事にキャリアアップするための技能も持たず、低賃金の仕事にはまって抜け出せないでいる。彼らは長期的な成功のために必要な適切な教育や資格を欠いている。これは国家的悲劇であり、経済的危機だ」と記した。

原題:At House of Dimon, a Raise for the Little Guy as Bankers Fret(抜粋)

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