川崎重新社長:円高はM&Aに追い風も、車両とエネルギーで模索

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  • 具体的候補を米国とアジアで検討中、規模は追わず
  • 英EU離脱問題で英関連事業への影響を慎重に見極め

Yoshinori Kanehana.

Photographer: Yuriko Nakao/ Bloomberg
Photographer: Yuriko Nakao/ Bloomberg

川崎重工業は海外での中小規模の企業の合併・買収(M&A)を行い、鉄道車両やエネルギー事業領域の質的向上を目指す方針だ。現地のニーズと同社が有する高い技術力を組み合わせたり、弱点を補強する形を整え収益の拡大を狙う。

  同社の金花芳則社長がブルームバーグ・ニュースとのインタビュー で明らかにした。金花氏は6月に社長に就任したばかり。同社長は「規模を追うだけのM&Aはしない」と言明。その上で、現在の円高傾向は、海外売上高比率が約6割の同社の業績へのマイナス影響ばかりではなく、海外企業のM&Aの面では追い風になるとの認識を示した。

  金花社長は、米国の大手鉄道事業会社は自社工場を持ちメンテナンスまで手掛けることが多いが、労働組合問題などでコストが負担となり、外注したいとの一定の要望があると説明。米国では車両の保守・管理に特化した中堅規模の会社が複数存在する。「その中で良いところはないかと探している。このような会社は大企業ではないが人材が魅力。数百億円規模のディールではなく数十億円規模になるだろう」とした。

  川崎重は、高速鉄道から地下鉄まで対応の総合車両メーカーとして日米に工場を持ち世界的に販売している。同社長は、米国での車両保守・管理事業について「われわれの技術力を駆使すれば一層のコスト削減は可能」とし、同事業拡大に意欲を示す。切り札として、さまざまな機器をインターネットでつなぐIoT技術の開発・研究に取り組んでいるとした。「車両にセンサーを付けることで、部品などの長期活用が実現する可能性がある。一部電機メーカーの協力も受けるが、最終的にまとめるのは川崎重工。このビジネスモデルが理想だ」とした。

EPC強化

  もう一つの企業買収はエネルギー関連事業領域だという。川崎重は、産業用ガスタービン発電設備やガスエンジンなどの製品では世界トップクラスの技術水準を誇る。現在、プラント建設や都市開発などでプロジェクトとして組み合わせて販売する場面では、エンジニアリングの設計、機材調達、製作、建設を一括して請け負う「EPC」の専業事業会社の能力がプロジェクトの成否を握るとされている。

  金花社長は「わが社の製品は単品ではすごく質が高い。ただ、そういうものをうまく組み合わせるEPCが少し弱い」と指摘。そこを補強するための買収を模索中だとし「M&Aである必要はなく、提携から将来的にM&Aに発展する可能性でもよい。トータルなエンジニアリングができる会社が望ましく、インドネシアやフィリピンにはいくつか候補がある」と語った。

EU離脱問題の影響見極め

  金花社長は、1976年に入社後、中核事業の一つ鉄道車両カンパニーでの業務に従事し、米国滞在なども経験。その後、常務、副社長を経て社長に就任した。今年4月に発表した、16年度から3カ年の中期経営計画には、村山滋前社長とともに深く策定に関与した。中計では18年度の売上高は1兆7400億円、営業利益1000億円を目標に掲げている。15年度は航空宇宙、車両事業が好調で、売上高は前期比3.6%増の1兆5411億円、営業利益は同10%増の960億円だった。

  社長就任直後に世界を揺るがせた英国の欧州連合(EU)離脱問題に端を発した、円高ドル安の業績への影響ついては、「今期は110円の見通しで計画を立てている。海外売り上げ比率が高く、為替はかなり効く」という。ただ、ボーイング787を大量に受注した後の急激な円高に見舞われた経験から対応は可能であり、必要であれば円安時に海外から国内に戻した調達先などを、再び外に出すなどの柔軟な対応で乗り切ることはできるとした。

  また、同社が英ロールス・ロイスと協業している航空機エンジン分野での製品が、欧州航空機メーカー、エアバスに納入されたときに関税がどうなるかについては「数百億円規模の仕事をしており、離脱交渉の行方には注目している」と述べた。

(第7段落以下に英国のEU離脱の影響などの記述を追加しました.)
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