トヨタ、ウーバーと提携に難題-タクシー業界が相乗り拡大に猛反発

  • 「業界の歴史始まって以来の未曾有の危機」-タクシー業界会長警鐘
  • 政府は「シェアリングエコノミー」推進-海外では急速に普及

国内自動車メーカー最大手のトヨタ自動車が配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズと資本業務提携を発表したことをめぐり、国内でライドシェア(相乗り)の動きが広がることを懸念するタクシー業界が危機感を強めている。

  全国ハイヤー・タクシー連合会の富田昌孝会長(日の丸交通会長)は6月の通常総会のあいさつで、最近の配車サービスの国内普及について、法が禁じる「白タク」の解禁・合法化の動きとし、政府が成長戦略に「シェアリングエコノミーの推進」を盛り込むなどこの1年でかなり浸透して、「業界の歴史始まって以来の未曾有の危機に直面」しているとの認識を示した。特にトヨタがウーバーと提携したことはタクシー業界に大きな打撃になりかねないと指摘した。

  トヨタは5月、スマートフォンを利用した配車サービスを手掛けるウーバーとライドシェア分野の協力について検討を開始したと発表し、ウーバーに出資するほか、ウーバーのドライバーへ自動車リースの提供で協力する方針だ。富田会長はこの発表後まもなく、トヨタの豊田章男社長や役員と会談し、提携対象地域に日本は含まれないとの説明があったとしながらも、タクシー業界の敵に塩を送るようなもので、到底納得できるものではないとした。

  富田会長は日本のタクシー業界について、安全・安心の確保に細心の注意を払い、国民の重要な足として地域公共交通機関としての使命も果たしてきたと強調。一方、米国ではライドシェアの攻勢を受けて、多くのタクシー事業者が経営破綻していると指摘した。

  日本では営業許可を受けたタクシーは緑地のナンバープレートを付けており、白地ナンバープレートの無許可車両がタクシー営業することを道路運送法が禁じている。富田会長は、白タク解禁・合法化の動きを見過ごしていると、日本のタクシー事業を短期間に根幹から崩壊させるとして、強い危機感を示した。連合会は国内タクシー会社の7割以上が加盟する最大の業界団体。

革新者に冷や水

  「これは規制をめぐる話というより変革に対する考え方の問題」と指摘するのは、日本政府などにアドバイザーとして支援活動するウィリアム齋藤氏だ。「これから新興企業を立ち上げようとする革新者に対して冷や水を浴びせることになり、心理面で障壁があると認識させることになる」と電話取材に話した。

  トヨタ広報担当の土井賀代氏は、社長が富田会長と会談したのかについてはコメントを控えた。トヨタとウーバーとの提携対象には日本が入っていないという。ウーバージャパン広報担当の北尾恵子氏は「世界の各都市が抱えるモビリティ課題の解決に取り組んでいる」とし、「今後とも関係者の方々とともに、各地域が抱える課題に対して少しでも解決策を提供できるよう、尽力してまいりたい」とコメントした。

  全国ハイヤー・タクシー連合会の中崎真裕労務課長は取材に対し、会長の総会発言は連合会の総意だとした上で、相乗りは安全性などに問題があり、業界として協力関係を結ぶことも考えておらず、国へ働き掛けを強めていくなどして阻止していきたいと話した。

世界で広がるライドシェアの動き

  ライドシェアの動きは世界で広がっており、世界3大自動車メーカーの独フォルクスワーゲン(VW)と米ゼネラルモーターズ(GM)はそれぞれ、ウーバーと競合するイスラエルのゲット、米リフトと提携している。自動車業界以外からも、米アップルが中国の配車アプリ最大手の滴滴出行への出資を発表している。

  米カリフォルニアのクロスパシフィック・キャピタルというベンチャー企業の創設パートナーのグレッグ・タル氏は「トヨタはタクシー業界団体の事業目標を保護するのでなく、今後の販売に目線を合わせた」とみている。

  全国ハイヤー・タクシー連合会によると、国内の法人・個人のタクシー車両数は20万台規模で、このうち8割程度がトヨタ車となっている。トヨタによると、15年には約6600台のタクシー向け車両を販売した。トヨタは次世代タクシーの専用車両を開発し、20年の東京五輪に向けて現行車両からの代替を目指している。

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