米利上げの緊急性薄まる、雇用情勢と英EU離脱で見通しに影

  • リスク山積で米金融当局者は静観の構え-FOMC議事録
  • 成長率やインフレ率めぐり当局者間の意見の相違鮮明に

米金融当局者は近い将来の利上げの必要性について、確信を失いつつある。国内外の成長見通しをめぐる不確実性が高まっているためだ。

  米金融当局は、雇用創出ペースが健全さを取り戻して経済の基調的な勢いが定着し、インフレ率が将来的に2%の目標に達するとの証拠を求めている。これが6日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で確認された内容だ。前回のFOMCは英国民投票の約1週間前の6月14、15両日に開催された。23日の投票結果が欧州連合(EU)離脱となったことで、見通しの不透明感が増した。

イエレン議長

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  今月8日に公表される6月の米雇用統計を皮切りに、米国のファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)がもっとはっきりし始めたとしても、英国のEU離脱に伴う世界の金融への影響や中国の安定性のほか、成長鈍化を招くまでにどの程度の利上げ余地があるかなど、米金融当局はさらなる懸念材料を抱える。

  イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長の視界は濃霧に遮られた形で、そうした状況下では金融当局はペースを落として行動する。ただ、数週間ないし数カ月先、さらには年内に状況がはっきりするのかどうかがそもそもの問題だ。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のシニアグローバルエコノミスト、マイケル・ハンソン氏(ニューヨーク在勤)は、「これは、年内利上げ見送りに向けたゆっくりとした歩みの最初の一歩かもしれない」と指摘。同社は12月利上げの可能性を排除していないが、同氏は「それでも予断を許さない。12月以前はなさそうだ」と論じた。

7月はゼロ%

  英国によるEU離脱の選択を受けた金融市場の新たな混乱や、世界の成長についての新たな疑問を背景に、金利先物市場が織り込む7月26、27両日のFOMCでの利上げ確率はゼロ%、年末までの利上げの確率もわずか12%にとどまっている。

  TDセキュリティーズ(USA)の米国担当リサーチ・戦略副責任者、ミラン・マルレーン氏(ニューヨーク在勤)は、「米金融当局が成長見通しの全容を把握するにはしばらくかかると考えられ、利上げがあるとしても少なくとも3ないし4カ月先となることをそれは意味する」と話した。

  今回のFOMC議事録では、米経済の基調的なトレンドに関する金融当局者間の意見の相違も浮き彫りになった。

  5月の非農業部門雇用者数が前月比3万8000人の増加にとどまったことについて、当局者の多くは通信会社のストライキや統計上のブレなど一時的な要因によって、実際の基調的な雇用ペースよりも小さい数字となったと判断。だが一部の当局者は、雇用の伸び鈍化は「経済活動の拡大ペースの幅広い減速を示唆」している可能性があると指摘した。

「確信持てず」

  インフレ動向をめぐっても、当局者の「大半」はインフレ目標に向けた「持続的な前進」が見込まれるとし、資源活用の逼迫(ひっぱく)やドル相場の安定化に言及した。他方で、海外の低成長や低水準にあるインフレ期待といった「根強いディスインフレ圧力」を理由に、「あまり確信が持てない」とする当局者もいた。

  ポイント72・アセット・マネジメント(コネティカット州スタンフォード)のチーフエコノミスト、ディーン・マキ氏は、「議事録で鮮明となったのは、リスクをめぐるFOMC内でのタカ派とハト派の深い溝だ」と語った。

  議事録によれば、世界の金融情勢は今年初めから改善したが、当局者の一部は英国のEU離脱に加え、中国の通貨政策を取り巻く不確実性や、同国を含む新興市場国の高債務水準が「世界の金融の安定性と経済的パフォーマンスにとって相当なリスク」であるとの認識を示した。

  今年と来年は米利上げはないと予想するBNPパリバのエコノミスト、ブリックリン・ドワイヤー氏(ニューヨーク在勤)は、「FOMCで語られるのは下振れリスクばかりだ」とコメント。「成長率にせよインフレ率にせよ、見通しの上方修正について話す向きは皆無だ」と述べた。

原題:Fed’s Urgency to Hike Fades Away as Jobs and Brexit Dim Outlook(抜粋)

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