社債よお前もか、利回り消滅しマイナス化急増-英EU離脱で資金流入

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  • 流通利回りがマイナスの社債は7日時点で768本、年初はゼロだった
  • マイナス金利拡大を見込む向きなどが購入と、SMBC日興・橋本氏

日本銀行のマイナス金利政策で、たびたび発生していたマイナス金利での社債取引が6月以降、急増している。英国の欧州連合(EU)離脱問題で、質への逃避から日本国債の利回りが一段と低下。利回りを求める買いを集め、信用リスクのある社債の金利までもがゼロ以下に押し下げられた。

  ブルームバーグのデータによると、流通利回り(気配値)がマイナスの残存期間1年以上の社債は今年初めには存在しなかったが、7日時点ではトヨタ自動車やNTTドコモの社債など768本ある。過去1カ月で約9倍に増えた。SMBC日興証券によると、それまでは日銀の社債買い入れオペ前後にマイナス金利での売買があった程度だったが、6月以降は取引が急増しているという。

  EU残留か離脱かを問う英国民投票をめぐり、金融市場では6月に入り不透明感からリスク回避の動きが強まった。同月23日の投票で予想外のEU離脱が決まると、欧州での離脱ドミノやイタリアの銀行経営への不安から主要国の国債が買われた。日本国債の場合は年限20年までがマイナス金利に突入し、社債市場への資金流入が加速。バンク・オブ・アメリカのデータによると、国内社債の平均利回りは6日時点で、データで遡れる96年以降で最低の0.11%を記録した。

マイナス金利導入を1月末に決めた黒田日銀総裁

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  SMBC日興証券の橋本宗治クレジットアナリストは、6月に急速に市場金利が低下したり、流通する社債が減ったことで、キャピタルゲイン狙いで「もっとマイナス金利になるという人や金利がマイナス0.1%の日銀当座預金よりはましだという人が買っている」と指摘する。ボーナスシーズンで手持ちの現金が潤沢な金融機関などによる買いが見込まれるという。

  

日銀オペ

  日銀による社債買い入れオペも利回り低下の要因だ。マイナス金利政策決定後の2月以降、平均レートはマイナスに陥り、直近の6月20日に行われた同オペの平均レートはマイナス0.217%、足切りレートはマイナス0.304%。ともに前回5月の過去最低水準を更新した。

  日銀はマイナス金利でも社債を買い取っており、SMBC日興の橋本氏は、社債価格について「ディーリング目的の場合は、買ってくれる人がいるところまで行く」と指摘。「オペ金利がマイナス0.3%近くまで行っているので、社債利回りが一段と低下してもおかしくない」と話す。ニッセイ基礎研究所の徳島勝幸・年金部長は、「日銀が買い入れ対象にする銘柄のマイナス取引は今後増えていく」との見方を示す。

  日銀は月1回程度のペースで社債買い入れオペを行い、今年は1-6月で6537億円買い上げた。対象は格付けがトリプルB格相当以上で、1発行体当たりの買入残高の上限は1000億円、総発行残高の25%以下となっている。

  ブルームバーグが英国民投票より前の6月6-10日に実施した調査(エコノミスト40人が対象)によると、日銀が7月28、29日の政策決定会合で追加緩和を行うとの予想は22人(55%)を占めた。6、7月の両会合を合わせると緩和予想が33人(83%)と圧倒的多数を占めたが、6月会合では金融政策は据え置かれた。

  バンク・オブ・シンガポールのチーフエコノミスト、リチャード・ジェラム氏は、英国民投票後に一段と円高が進み、国内経済への懸念が出ていることを背景に「日銀が追加緩和する可能性はより高くなった」と語った。

新発債

  社債は流通市場に限らず、発行市場でも金利が低下している。トヨタファイナンスは6月、表面利率0.001%の3年債を発行した。ただ、ニッセイ基礎研の徳島氏は、現状では金融市場の決済機能を担う証券保管振替機構のシステムが「社債にマイナスのクーポンをつけられない」ことを挙げ、新発債でのマイナス金利は当面出にくいとの見方を示した。

  同機構はコマーシャルペーパー(CP)については、マイナス金利発行に対応したが、その直後に三井住友ファイナンス&リースが3月に初めてマイナス金利でCPを発行している。

  SMBC日興は8日付リポートで、仮に追加緩和が行われた場合の新発債市場への影響として、トヨタファイナンスが行ったようなゼロに近いクーポンでの発行がさらに増えるほか、低金利環境を活用して「社債調達の長期化に動く企業がさらに増加すると考えられる」と指摘した。

(最終段落を追加して、更新しました.)
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