【コラム】米国債利回り、過去最低にある理由は何か-エラリアン

米国債は今週、他の先進国国債に続き10年物利回りが過去最低に低下した。イールドカーブのフラット化も続いた。

  だが、この展開は従来の要因では説明がつかない。これは市場に伝達されているシグナルや、経済と政策に対する影響について通常の方法では分析できないことも意味している。前例のない状況について、大きく三つに整理してみよう。

1.今回の米国債の大幅低下は従来の様相とは異なる。従来は米国債の利回りが低下し、イールドカーブがフラット化すれば、リセッション(景気後退)が迫っている強いシグナルとなった。今回の利回り低下幅やフラット化の度合いを考えると、厳しい景気下降の警告を発していることになる。
  だが、その読みは今回当てはまらない。米国債のイールドカーブは米国の状況ではなく、欧州や、程度は低いが日本の状況が動かしている。具体的には、再び景気減速に陥るとの見込みや、(英国の利下げや欧州中央銀行の大規模な資産買い入れ策など)中央銀行が追加刺激策を打ち出す可能性だ。
  欧州国債の大半は利回りがマイナスに沈んでいるため、世界中の債券投資家にとって米国債はいっそう魅力的に映る。その結果、米国の経済や政策の見通しといった観点からだけでは正当化できない利回り低下や、それに伴うイールドカーブのフラット化が起きている。

2.低金利が経済に及ぼす恩恵は限定的だろう。金融業界の状況を考慮すれば、この恩恵は打ち消される恐れすらある。
  先進国ではこぞって低金利を採用しているものの、経済活動を押し上げる公算は小さい。そればかりか、欧州連合(EU)と英国の通商・企業活動面の先行き不透明感により過去数日間で悪化している構造的な障害には、ほとんど対処していない。
  また利回りの変化は銀行の利益見通しを曇らせ、銀行システム全体をさらに圧迫するだろう。ノンバンクによる過剰なリスクテークを促す懸念も増幅させる。現実味が薄れた従来の収益目標を達成しようと投資家が無理し、先行きの金融安定へのリスクが高まる公算が大きい。

3.これらは米連邦公開市場委員会(FOMC)が直面する難しい問題をいっそう複雑にする。すでに過大な政策負担を背負っているFOMCにとって、こうした展開のうち追い風となるものは何もない。
  年内に利上げするかどうかなど金利判断がより複雑になることに加え、将来の金融安定や経済の健全性確保に向けてマクロプルデンシャル政策や規制当局が対処する能力について、最近の展開で不安が強まりそうだ。

(エラリアン氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

  

原題:Why U.S. Bond Yields Are at Record Lows: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE