【インサイト】ゴールドマンの「甘い考え」では利回り低下止まらない

ウォール街のアナリストらは米国債利回りは上昇すると依然として警告しているが、はなから相手にすべきでないことをトレーダーらは学び、恐らくその行動は正しい。

  ストラテジストらの見通しはここ数年外れてきたし、特に今年はそうだ。米国債利回りは上がるどころか、低下してきたし、底をつけた明確な兆しもないまま過去最低を更新。米国債の今年これまでのリターンはプラス5.9%で、同様の期間で比較すると1995年以降では最高であることをバンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチ指数が示している。利回りがマイナス圏にある債券の規模は12兆ドル(約1210兆円)を超えた。

  にもかかわらず、今度はゴールドマン・サックスだ。米国債利回りは上昇方向にあるとか投資家は英国民の欧州連合(EU)離脱選択に過剰反応しているとか、またもやだ。ケビン・バックランド記者の5日の記事によれば、ゴールドマンの金利ストラテジスト、ロハン・カンナ氏(ロンドン在勤)は調査リポートで、「英国は世界経済の指標ではない。従ってどのような経済活動の鈍化であれ、限定的なインパクトしかないはずだ」と指摘した。

  米国債利回りが間もなく上昇すると確信しているのはゴールドマンだけではない。ブルームバーグが銀行に所属するアナリストを対象に実施した調査によれば、米国債利回りは今年緩やかな上昇が見込まれている。

Bold Predictions

Analysts believe 30-year Treasury yields will rise this year, even as they fall to record lows

Source: Bloomberg

  英国民のEU離脱支持そのものが世界経済に壊滅的な影響は与えないというゴールドマンのアナリストの見方は正しい。とはいえ、それは利回り低下を引き起こしている唯一の要因でもなければ、主因であることさえ疑わしい。

  ここで、米国債利回りが低水準にとどまったり一段と下がったりする公算が大きい全ての理由を挙げるよりも、指標となる利回りの意味ある上昇を引き起こすために何が必要かを考えてみよう。

1)米国とそれ以外の先進国・地域の金利について、従来の関係性が崩れる必要がある。日本とドイツの10年債利回りはゼロを下回り、これに比較して、米国債利回りはまだ高くみえる。

2) 英国民投票の結果は覆されるか、もしくは英国に有利な新たな貿易協定などによって和らげられる必要がある。また、世界中で高まる政治リスクのシグナルというより、1回限りの出来事である必要もあるが、銀行危機に見舞われるとともに政治改革をめぐる国民投票を控えるイタリアの情勢や先鋭化する米大統領選の論戦をみれば、これは考えがたい。

3) 日本や英国、スウェーデンから米国まで主要中銀は金利を上向かせる、あるいはせめて低下しないようにさせる必要があるが、それとは逆に向かっているようだ。

4) インフレの何らかの兆しが必要だが、少なくとも大幅な度合いを示すものはない。英経済は縮小するかもしれず、原油価格もこのまま推移するか近い将来にまた下がるかもしれない。デリバティブ(金融派生商品)市場で織り込まれている長期インフレ率は1.49%と、2009年以来の低水準に近い。

  というわけで、政治の不透明感や前例のない規模の景気刺激、それにもかかわらず低迷が続く経済成長という環境下で、ウォール街のアナリストらはますます逆張りの見方を展開している。そして公正を期して言うなら、これほど低水準の利回りを嫌うのは簡単だ。

  低金利は銀行や機関投資家のバランスシートを痛めるし、日本や欧州の企業が資金を借りるのにお金をもらえるというのはこれまでのどんな投資ロジックに照らしてもおかしい。それでも市場の力には逆らえない。モメンタムは依然として金利低下の方向にあり、これを何がストップさせるのかはまだ見えない。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:Goldman’s Wishful Thinking Won’t End Rut in Bond Yields: Gadfly(抜粋)

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