同調しやすいバンカーほど金融犯罪に手を染めやすい-その理由は

企業は皆そうだが金融機関は特に、圧力を受けながらも下しにくい倫理的な判断を下すことを個々の従業員個人に頼っている。人々はなぜ間違いを犯すのだろうか。

  純粋な貪欲さかリスクを求める冒険心か、規則軽視か。オランダの経営・会計学教授、フランク・ハートマン氏は意外な答えを出した。同調しやすい性格だ。

  ハートマン氏はロッテルダムの研究室で今年、学生たちに宇宙時代の水泳帽のようなものをかぶらせスクリーンの前に座らせた。画面に映し出される恐怖、嫌悪、喜びといった表情を浮かべた顔を見ている学生たちの脳波が記録されコンピューターに取り込まれる。約30人の被験者たちは数週間前に、将来に会計監査担当者となった時に遭遇し得る状況についてのアンケートに答えていた。監査担当者は企業の財務報告書の準備や税申告の業務に携わる。それぞれのシナリオで被験者らは上司からさまざまな理由で会計を粉飾するよう圧力をかけられる。上司がくびにならないように、チームが目標を達成できるように、などだ。

バンカーらが集まる英金融街シティー

Photographer: Simon Dawson/Bloomberg

  ハーマン氏とロッテルダム・エラスムス大学の同僚、フィリップ・エスケナツィ、ウィム・リーダイク両氏は圧力を受けて規則を曲げる傾向と個人の感情的な敏感性の関係を調べようとした。実験の核になるのは「ミラーニューロンシステム」と呼ばれる行動学上の現象で、これは他の人が取った行動を自分が行ったかのように脳が反応すること。誰かが転んだのを見て顔をしかめたり、人が笑っていると理由は分からなくても、自分も笑い出したりするのはこのためだ。

  ロッテルダムでの実験では、スクリーンで見せられた感情に強く共感する被験者ほど、規則を曲げたり破ったりする傾向が強かった。「大量の感情的な圧力にさらされても冷静に自己をコントロールできる」超然とした会計士というのは非常に望ましいものなのだと、研究者らは論文に書いている。論文は「アカウンティング・オーガナイゼーションズ・アンド・ソサイエティ」誌の2016年4月号に掲載された。

  共感や社会的相互関係は多くの場合良いものだと考えられており企業内で指導されることもあるとロンドンのカス・ビジネス・スクールの組織行動学教授、アンドレ・スパイサー氏は指摘。「しかし従業員が真実を述べることや問題を発見することよりも、社会的相互関係を重視してしまうために、最終的には問題を見過ごしたり、非倫理的な行動を取ってしまったりすることになりかねない」と分析した。同教授はロッテルダムの実験には関わっていない。

  ロッテルダムの実験は良い会計士を育てる指針となるものだが、金融業界の他の仕事にも適用できる。ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)操作をめぐる裁判で被告らは上司に言われたことをしただけだと主張した。自分に都合のいい言い訳にしか聞こえないが、ハートマン氏は「皆が同じ事をしていて『いっしょにやっている』ということに居心地の良さを感じている時に、曖昧な(倫理的)概念に基づいて謹厳な規則や規制をそこに適用しようとしても、ほとんどの場合は感情と生物的な衝動が勝つと思われる。これらは強く根源的なものだからだ」と解説した。

  直感に反するようだが、バンカーや会計士を縛る規則を減らすことが一つの解決策かもしれないと同氏は言う。2000年代初め以降に導入されたさまざまな規則を順守するのはあまりにも面倒で、理解できない規則に直面すると人間は、そうでない場合よりさらに神経生物学的衝動に従いやすくなると分析した

原題:Why Sensitive Bankers Are More Likely to Commit Financial Crime(抜粋)

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