日立造船社長:複数のM&A検討、主力のごみ処理発電プラント中心に

  • 16年度までの中計期間のM&A目標額400億円、実績はほとんどない
  • 世界でエンジニアリングから運営まで一括受託できる組織に

Takashi Tanisho.

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

2030年に売上高1兆円企業を目指す日立造船は、海外展開を加速するため合併・買収(M&A)を積極化する。造船不況時に造船業から脱し、世界最大級のごみ処理発電プラントのエンジニアリング会社に成長した同社は、M&Aで主力事業を補完し海外売上高比率を50%に高める狙い。

  谷所敬社長はブルームバーグのインタビューで、主力事業を補完するために複数案件のM&Aを検討していることを明かした。2016年度までの3年間の中期経営計画ではM&Aの目標額として400億円を掲げたものの、これまでの実績はほとんどないという。「相手がいるので思った通りのスケジュールで進まないが、今年度できるだけ進めたい」と述べた。

  国内やアジアでごみ焼却発電事業を手掛ける日立造船は、10年に同業のスイスのAE&Eイノバを買収し、グループ全体の累計で世界最大級の840件以上のごみ処理発電プラント受注実績を誇る。世界最大の中国市場やインド、中東地域などでイノバと共同で設計の標準化などによるコスト削減に取り組み、受注の獲得を目指す。海外企業の買収で同事業拡大を狙うJFEエンジニアリングや新日鉄住金エンジニアリングに対抗する。

  環境省の報告書によると、国内の一般廃棄物を処理する発電プラントは338カ所で、出力は原子力発電所約2基分相当の190万キロワットに上る。別な報告書よると、国内では家庭から出るごみの8割以上が焼却処理されているのに対し、欧米諸国ではその割合は低く多くが埋め立てられている。人口増に伴うエネルギー需要の増加やごみ処理問題の解決策として、ごみ処理発電市場に拡大の余地は大きい。

海外で一括受託

  日立造船は国内では自治体からごみ焼却施設の建設や運転保守などを受注し、自治体がごみの収集と焼却灰の埋設を行う分業体制をとる。一方で欧州を中心に事業を展開するイノバは、設計から調達、建設まで一連の工程を請け負うEPC事業者として案件を受注している。

  海外では全工程を一括受託できる事業者に自治体が運営権を売却するコンセッション方式を採用するケースがあり「トータルとしてやっていかないと儲からない。足りない部分はいっぱいあり、国ごとにパートナーを見つければならない」とし、現地企業の買収や提携によって事業領域を拡大していく考えだ。

  谷所社長は、英国が欧州連合(EU)を離脱することによって新たに関税制度が生まれる可能性があるほか「規格や規制が変わるとリスクになりうる」との懸念を示した。イノバは英国内でごみ焼却発電プラントを建設する場合、ボイラーなどの主要機器のほか設計・試運転のための人材をEU域内から送っている。ただ関税の問題は英国とEU間の交渉次第となるため現段階で「リスクが顕在化したわけではない」とし、英国内の3拠点の移転は検討していないと話した。

売上高の6割超

  15年度のごみ焼却発電を含む環境プラント部門の売上高は全体の6割超を占める2416億円で、営業利益段階では機械部門の赤字やインフラ部門の不振を補う。1965年に大阪市で日本初のごみ焼却発電を手掛けた当時は「お荷物的存在だったが、今は再生可能エネルギーという認識に変わった」ため、収益の大半を稼ぎ出す存在へと変貌を遂げた。

  短期的には環境プラント部門が利益を出しているときに機械部門やインフラ部門をてこ入れして全体として高い収益を生み出す組織に変え、将来的には洋上風力発電事業など新しい柱を育てていく考え。

  今年4月に風力発電事業推進室を社長直轄の組織にし、6月に秋田県内で設備の開発に着手。設備の規模は累計で8000キロワットとなる。陸上の適地は残り少ないとみており、今後は造船技術を生かして洋上風力を拡大する方針だ。「もともと造船会社。浮体構造物への波や風の影響は知見がある」とし、すでに造船ドックのある堺工場で福島県沖の洋上風力事業用の浮体構造物を一部手掛けている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が北九州沖で行う実証実験向けに、仏イデオルから技術提携を受けて浮体構造物を製造する予定だ。

  

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