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現職閣僚が「野党統一候補」と激突、福島と沖縄で-参院選

  • 福島は東電福島第一原発事故からの復興、沖縄は米軍基地で課題
  • 自民、公明に対抗、民進、共産、社民、生活が32の1人区で一本化

参院選(7月10日投開票)では、民進、共産など4野党は自民、公明の連立与党に対抗して全国32の1人区全てで候補者を一本化。原発事故からの復興が道半ばである福島と米軍基地問題を抱える沖縄では、安倍晋三政権の現職閣僚が野党候補としのぎを削っている。

福島

  東日本大震災と大津波に加え、東京電力福島第一原子力発電所事故に見舞われた福島県。あれから5年3カ月あまり。甚大な被害を受けた沿岸部と比べ、福島、郡山両市などの内陸部は日常を取り戻したかのように見えるが、一部の地域に入ると住宅の敷地内に灰色のビニールシートがかかった大きな容器が置かれているのが分かる。

  中に入っているのは、放射性物質が付着した土壌。つまり除染によって生じた汚染土だ。原発から離れた内陸部でも、局地的に放射線量が高い地区があり、除染が進められてきた。

Radioactive contaminated soild

住宅敷地内の汚染土

Photographer: Emi Nobuhiro / Bloomberg)

  「今、本当に厳しい戦いを進めています」-。安倍首相は公示日(22日)の午後、郡山市に入り、自民党現職の岩城光英氏(66)の隣で声を張り上げた。

  頭に「必勝」の鉢巻きを締めた岩城氏。第1次安倍、福田両内閣で官房副長官を務めた経験もあり、昨年10月、法相に就任した。支援者を前に「私たちは福島の復興策に責任がある。選挙に勝って責任を果たしていかなければならない」と述べ、東日本大震災と東電福島第一原発事故からの復興にかける自らの思いを訴えた。

  経済政策が争点と訴え、全国遊説を行っている安倍首相。福島ではこれに加え、復興に向けた取り組みに関する発言に時間を割いた。津波で被災した地区の高台移転や震災と原発事故で整備が遅れていた常磐自動車道の全線開通などを、自公政権下での成果としてアピール。「どうかあの時を思い出していただきたい。誰が復興のために本当に頑張ったのか、本当に仕事をしたのは誰だったのか」と続けた。

野党

  これに対し、福島市で出陣式に臨んだのが、民進党現職の増子輝彦氏(68)。民主党政権時代は経済産業副大臣などを歴任した。会場には、民進党に加えて、共産党と社民党ののぼり旗。自民党に在籍していたこともある増子氏は1983年の県議選に当選して以来、30年以上の政治キャリアがあるが、今回は「安倍政権にNO」を旗印に初めて野党統一候補として選挙を戦う。

  民進党の玄葉光一郎選挙対策委員長は出陣式で、「今回は、安倍さんと福島県民の戦いだと思っている。ありとあらゆる勢力を結集して、皆で団結をして手をつないで最後まで勝利するまで頑張りたい」と演説。安保法制や自民党の憲法改正草案について批判すると、共産党や社民党関係者から「そうだ」と歓声が上がった。

  安全保障や憲法の問題とともに、増子氏も「福島の復興再生に命を懸けて頑張る」と力を込めた。除染や子どもたちの健康管理、風評被害対策を喫緊の課題とした上で、それらの解決に向け、汚染された土などを保管する中間貯蔵施設の整備を急ぐべきだと語った。玄葉氏は、21日のブルームバーグのインタビューで、現職の閣僚に勝利すれば「その意味は大きい」と話した。 

 福島選挙区には、このほか幸福実現党の新人、矢内筆勝氏(54)が立候補している。同氏のウェブサイトによると風評被害の払拭(ふっしょく)などを訴えている。

放射性物質

  福島県によると福島第一原発事故によって汚染された土は2015年末現在、12万7000カ所以上で住宅などの敷地内にそのまま保管されている。住宅街では、汚染土をまとめて保管する「仮置場」の確保が難しいケースも多く、地中に埋めたり、カバーを掛けたりと保管方法は地域によっても異なるが、長期にわたって庭先に除染廃棄物が置かれたままという状態が続いている。
 
  郡山市の自営業、澤村龍太さん(35)は、自宅マンションや職場の近くに汚染土が保管されており、毎日のように目にしている。「公共の場所にはモニタリングポストがあるが、一般家庭で継続したモニタリングはない」と言い、目に見えない放射線への不安は消えたわけではないと話す。しかし、地元で仕事をしている以上、「簡単に地元を離れるわけにはいかない」のが現実だ。

  今、政治に求めるものを尋ねると、「福島に腰を据えて責任を持ってやってほしい。地元の声を聴いて、下から吸い上げることをしてほしい」と語った。

  福島市の住職、佐藤俊道さん(65)も、今も汚染された土壌に近寄らないよう幼い孫に「ここから先に行ってはいけない」と伝えなくてはいけない状況に胸を痛めている。豊かな山林があり、かつては山菜やきのこを採って食べていたが、それもできなくなってしまった。国に対しては、「とにかく元の環境に戻してほしいという思い」だという。

沖縄

  米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐり、国と県の対立が続く沖縄では現職の沖縄・北方担当相の島尻安伊子氏(51)と元宜野湾市長の新人、伊波洋一氏(64)が1議席をめぐり、激しい戦いを繰り広げている。

  伊波氏は辺野古移設に反対し「オール沖縄」を掲げる野党統一候補だ。22日に沖縄市内で行った街頭演説で「大臣を相手に新基地建設を問う参院選になっている。何としても私たちは負けられない」と語った。島尻氏は、公示前日の政策発表会見の中で「いつも基地か経済かという二者択一的な流れに引っ張られてしまう」と述べ、経済や教育、医療といったその他の課題の重要性を強調している。

  沖縄では米軍属の男が20歳の女性を殺害したとして逮捕される事件が発生。翁長雄志知事は公示翌日の23日、糸満市摩文仁の平和祈念公園で行われた沖縄全戦没者追悼式での平和宣言で、辺野古移設について「県民の理解は得られず、これを唯一の解決策とする考えはとうてい許容できるものではありません」と明言した。安倍首相はあいさつで「基地負担の軽減にひとつひとつ取り組んで参ります」と説明。女性殺害事件を受けた日米地位協定の見直しに触れたが、辺野古移設に関して具体的な発言はなかった。

  沖縄選挙区には、このほか幸福実現党の新人、金城竜郎氏(52)が立候補しており、ウェブサイトなどによると辺野古への基地移設推進、消費税減税などを訴えている。

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