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日銀:国債購入で償却負担拡大、15年度8700億円に-緩和策が財務圧迫

  • 皆が限界に気付けば「相当大きな衝撃走る恐れ」と日本総研・河村氏
  • 6月会合「主な意見」でも「最終的に国民負担に」との懸念の声

量的・質的金融緩和の導入以降、日本銀行が長期国債を額面を上回る価格で購入し続けていることを受けて、その差を毎年の会計処理で調整する償却負担が急拡大していることがブルームバーグの取材で分かった。マイナス金利の導入でそうした傾向に拍車が掛かっており、緩和が長期化すれば、日銀の収益基盤が損なわれ、いずれ赤字になるとの指摘もある。

  日銀がブルームバーグに開示した決算データによると、2015年度の償却額は8739億円に上った。12年度は3370億円だったが、量的・質的金融緩和を導入した13年度は4646億円、14年度は6382億円と拡大し続けている。

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  日銀は量的・質的金融緩和の下で大量の長期国債を購入しており、同政策を終息させる出口の局面で、保有国債の利回りを金融機関の当座預金残高に付与する金利(付利)が上回る逆ざやとなり、巨額の損失を抱える可能性がすでに指摘されている。償却負担の拡大は、そうした事態に至る前に、高値で買い入れた国債がすでに日銀の財務の圧迫要因になっていることを示すものだ。

  日本総研の河村小百合上席主任研究員は、日銀の財務の限界に皆が気がついた時点で「相当大きな衝撃が走る可能性がある」と指摘する。日銀は現在7.4兆円の自己資本を保有しているが、いったん赤字になれば「そんなものはあっという間に食いつぶされてしまうだろう。その時はもちろん、円の信認に傷が付くし、日銀は機動的な金融政策ができなくなる恐れもある」としている。

  昨年12月、量的・質的金融緩和の出口で日銀の損失が年間7兆円に達するとの試算を示した木内登英審議委員は23日、金沢市内での会見で、保有国債の償却負担が拡大していることについて、「すぐに大きな問題を生むわけではないが、マイナス金利政策が長期化した場合、大きな潜在的な問題点の1つだ」と指摘した。

負担大きくなれば赤字の可能性

  日銀は保有国債について償却原価法という会計基準を採用しており、元本を上回る部分を償還までに毎年均等に償却している。例えば、満期まで5年ある長期国債を市場から110円で買って満期まで保有しても、5年後には元本である100円しか戻ってこない。償還損に当たる10円分を満期時に一気に表面化させるのではなく、残存期間を通じて平準化させるというのが償却原価法の考え方だ。

  日銀の1月末のマイナス金利決定後、長期金利はマイナスに転じている。日銀は金融緩和時には長期国債をオーバーパー(償還時に戻ってくる元本を上回る価格)で購入しているが、マイナス金利はその価格差に拍車を掛けている。日銀は量的・質的緩和の下、年間の保有残高が80兆円増加するペースで長期国債を買い入れる方針で、今年は年内に償還される保有国債の買い換えを含め総額120兆円を買い入れる。

  元日銀副総裁の岩田一政日本経済研究センター理事長は4月4日のインタビューで、マイナス金利の下で年120兆円買い増していく中で、「仮に元本100円の国債を103円で買ったとすると、トータルで3.6兆円のロスが出る」と指摘。「国債のオペで生じる償却負担があまりに大きくなれば、赤字になる可能性が高まる」と語った。

  6月15、16日の金融政策決定会合の主な意見では、ある委員が「国債を大量に買い入れる現在の政策は、財政政策、金融政策双方の信頼性を損ねているため、見直すべきである」と指摘。「市場実勢からかい離した価格での資産買い入れは、最終的に国民の負担につながる」との懸念を示した。

非公表だった利息調整額

  日銀が5月27日に公表した15年度決算によると、同年度の保有国債の平均残高は311兆円、運用資産利回りは0.413%、利息収入は1兆2875円となっている。しかし、これらはオーバーパーで買い入れた国債について、償却原価法に基づく償却額(利息調整額)をあらかじめ差し引いた数字で、日銀はこれまで償却額とこれを差し引く前の受取利息は公表してこなかった。

  ブルームバーグの取材によると、15年度の受入利息は2兆1614億円、利息調整額は8739億円で、差し引き1兆2875億円が国債利息として計上されたことが分かった。量的・質的緩和導入前の12年度は、受け入れ利息が9595億円、利息調整額が3370億円、差し引き6225億円が国債利息だった。量的・質的金融緩和の下での大量の国債買い入れにより、受け入れ利息は増えているが、償却額も大きく拡大した。

受け入れ利息を大きく上回る償却負担

  財務省は5月10日に10年物国債342回債2兆1800億円を表面利率0.1%で発行。日銀は6月10日のオペで342回債を額面(元本)ベースで4160億円購入した。ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストによると、元本100円の国債を日銀は平均落札価格102円65銭近辺で買い入れたとみられるという。

  日銀が購入した国債の表面利率は0.1%なので、毎年の受け入れ利息は4.16億円、一方で、日銀は元本を2.65%上回る価格(オーバーパー)で買い入れたので、10年後の償還時には4160億円の0.265%の損失(110.24億円)が発生する。償却原価法により今後毎年10年間、受け入れ利息を大きく上回る11億円の償却負担が発生する。

  日銀は過去に購入した比較的高利回りの国債を保有しており、直ちに全体の収支が赤字になるわけではないが、長期国債の利息収入が今後も同じペースで増え続ける保障はない一方で、マイナス金利の下で日銀が今後、大幅なオーバーパーの長期国債を買い続ければ、毎年の償却負担は増大する。

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