欧州に暮らす英国人は「置き去りにされた気分」-EU市民権獲得急ぐ

  • EU加盟国に暮らす英国人は120万人前後
  • 英国民投票でEU離脱が決まり、加盟国での暮らしが不透明に

ロンドン生まれのガブリエル・フォーセットさんがベルリンのアパートで目覚めると、母国の欧州連合(EU)離脱が国民投票で決まっていた。人生がひっくり返ったような瞬間だった。

  ドイツを含む欧州数カ国でツアーガイドとして働くフォーセットさん(40)は「自分のあり方が大混乱しているし、これが今後のキャリアにどんな意味を持つのかよく分からない」と話す。「夜中に母船から置き去りにされた気分だ。自分で築いてきたキャリアを続けるには、ドイツの市民権を得なければならない」と言う。

  フォーセットさんのようにEU加盟国で暮らし、そこでの非常に基本的な権利や立場の見直しをせざるを得なくなった英国人は約120万人に及ぶ。今までは28カ国が加盟するEUの構成国である英国のパスポートを持っていれば、域内どこでも移動や生活、仕事ができた。だが、英国がEUを離脱してしまえば、今後の交渉次第ではそうした特権が消えかねない。年金や医療がどうなるのだろうと悩む者も多い。

  フィオナ・マルコムさん(40)もまさに同様の心配を抱えている。フランス在住歴15年で、最近はパリにアパートも購入した。2人の子供はフランス生まれだが、英国のパスポートを持っており、これを変更しなければならないかもしれないと気をもむ。

  ヘルスケア業界で統計専門家として働くマルコムさんは「ここでの暮らしが気にいってるし、残りたい。自分は欧州人だと感じていて、これまで別の市民権は必要なかったけれど、子供と一緒にフランスの市民権を申請する必要がありそうね」と語る。

  スペインに6年前に引っ越し、同国南部の沿岸にあるベナルマデナに住む英ウェールズ出身のパブ経営者ウェイン・グリーンハルさんも、突然2つの世界に挟まれた1人だ。「私は英国人として誇りを持っているが、この地域の住民でもある。つまり、欧州人でもあるわけだ」と述べる。英国に帰る予定はなく、年金やポンド建ての貯金、そして英国人旅行者向けのパブ経営に最終的にどんな影響があるのか心配している。

  ベルリンに話を戻すと、フォーセットさんはドイツの市民権取得は厳しいかもしれないと考えている。難民危機への対応で当局が手一杯で、ここにEU市民権を求める英国人が殺到したら、大陸の当局者には頭痛の種が増えるだけだ。北アイルランドのベルファストでは中央郵便局で24日、アイルランドのパスポート申請書が切れてしまい、スペインの市民権を申請するウェブサイトもパンクした。こうした余波がどこまで広がるのか、フォーセットさんは心配している。

原題:Brits Abroad Deserted by Mothership as Dash for Passports Starts(抜粋)

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