三井住友信託など不動産融資の急拡大に慎重、カネ余り過熱化に警戒

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  • 融資が不動産市況引き上げ、より短期のローン増やす-東京スター銀
  • 日銀統計では3月末の不動産業向け融資残はバブル期を超え過去最高

日本銀行のマイナス金利政策など金融緩和を背景に、大量の資金が流入した不動産市況は過熱化しているとの見方が広がっている。三井住友信託銀行や東京スター銀行などの一部銀行は、不動産向け融資の急拡大に慎重になってきた。

  日銀の統計によると、3月末の不動産業向け貸出金残高は前年比6%増の67兆6991億円で、過去のバブル期を上回り1970年の統計開始以来最大。不動産価格も高騰しており、大和不動産鑑定のデータでは2016年1-3月期の東京都心部Aクラスビルの床単価は1年前と比べて11%上昇し、08年以降で2番目の水準となった。

  黒田日銀下の異次元金融緩和で行き場をなくした資金がJリート(不動産投資信託)への投資やローンを通じて不動産市場に流入。物件価格が高騰した結果、賃料などから成る収益率も低下しており、不動産サービス会社CBREによると、都心5区の賃貸用マンションの期待利回り(4月)は調査開始の07年以来の最低となった。

  三井住友信託銀行・不動産ファイナンス部企画チームの谷口勝美チーム長は、不動産市況について「高騰期にあると思い注視している」とし、「市況全体がダウンサイドリスクを抱えていることを考えると、いけいけドンドンで貸せる状態ではない」と話す。不動産向け融資は「以前のようなペースではできていない。足下ではちょっと落ちてきている」と言う。三井住友フィナンシャルグループも、16年3月期の決算資料で「不動産市況の過熱化」によるクレジットリスクの懸念を指摘する。
    
  東京スター銀行不動産ファイナンス部長の藤井道哉氏は、今の不動産市況は融資などが押し上げている感が強く、「マーケットの状況を注視している」と指摘。信用リスク軽減に向け個別案件を慎重に検討するほか、「短期間で回収可能性の高いローンの割合を増やしていく」とした。

ホテル、物流施設へも展開

  米総合不動産JLL日本法人の赤城威志リサーチ事業部長は、銀行借り入れがしやすくなったことで不動産投資が過熱化していると見ており、「不動産投資の過熱化はオフィスビル市況の改善などファンダメンタルズによる要因よりも、金利の低下による影響が大きい」と指摘する。

  JLLの調査では、1月にマイナス金利政策が決まった後、上場リートによる日本の商業用不動産の投資額は大幅に増加し、16年第1四半期(1-3月)は前年同期比59%増の5200億円だった。リートの設立母体からの物件供給があり、金利低下の恩恵を享受したと分析している。

  不動産市況の過熱化に伴い、Jリートなどによる物件投資が一巡したこともあり、「大都市圏のオフィスや競争力のある賃貸住宅、都心の商業施設といった伝統的なコアアセットの流通量が減っている」と、三井住友信託銀の谷口氏は指摘する。「マーケットの変化にどのような耐久性を持たせてポートフォリオの構成をしていくかが肝心だ」とし、今後は成長余力のあるホテルや物流施設、ヘルスケア施設へのノンリコースローン拡大を目指していく方針だ。
  
  新生銀行の山田茂不動産ファイナンス部長も、「インバウンド増加で需要が高いホテルのリノベーションや物流施設開発などへのノンリコースローンを引き続き地道にやっていく」と話した。

  新生銀の山田氏によると、オフィスビルなど従来型施設は高騰で利回りが低下している分、ホテルや物流施設などは相対的に利回りが良いという。同行も川崎市にあるオフィスビルのホテルへの改築費用のノンリコースファイナンスを昨年に提供した。決算資料によると不動産ファイナンスの資産残高は、16年3月期に前年比15%増加して8430億円となった。

(第8段落を追加しました.)
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