英EU離脱より深刻な問題、100兆ドルの債券市場に立ちはだかる

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  • HSBCのメージャー氏は超低金利・利回りが続くと予想
  • 人口動態や過剰債務、所得格差が構造的問題に

英国が欧州連合(EU)に残留しようと離脱しようと、スティーブン・メージャー氏にとって、ある意味ではあまり問題ではなかった。

  確かに英国人としては、メージャー氏(51)は英国がEUから離脱するという驚きの投票結果をフォローしたし、ロンドン市民としてもちろん投票にも行った。だが、HSBCホールディングスの債券調査責任者として豊富な見識を備える同氏の金利や債券利回り、経済の長期的見通しに関する限り、英国のEU離脱は結局のところ前座のようなものにすぎないという。英国民投票結果をめぐる騒動が収まってしばらくすれば、(そして米大統領選の行方がどうなろうと)数十年来の問題が世界の成長を圧迫し、金利が今後何年も最低水準にとどまる状況に至ると同氏は予測する。

  メージャー氏は「重要な問題は英国民投票でもなくトランプ氏が米大統領になる可能性でもない」と述べ、「本当に重要なのは、極めて長期にわたって低金利やマイナス金利が続くことだ」と指摘した。

  英国民投票でのEU離脱派の勝利は金融市場を混乱させ、安全資産の需要急増を招いたものの、メージャー氏によれば、100兆ドル規模の債券市場の投資家は人口動態や世界的な債務拡大、貧富の格差という世界を悩ますより深刻な構造的問題に目を向ける必要があるという。

  低金利は金融危機後の政府による過剰な借り入れの当然の結果でもある。経済に切望されていた押し上げ効果をもたらしたものの、債務負担は次の10年の成長を支えたかもしれない財政出動の能力を多くの国から奪った。経済協力開発機構(OECD)は今月、世界経済が自己実現的な「低成長のわな」に陥りつつあると警告した。成長が回復しなければ、投資家が国債の安全性を求め続けると考える十分な根拠がある。

  借り入れコストの世界的指標である米国債についてメージャー氏は、10年債利回りが現水準近辺にとどまり、年末のレベルを1.5%と予想する。ブルームバーグの先週の集計によれば、同氏の予想は他のどの専門家より低い。ウォール街の予想の平均値では利回りが上昇し始めることが示されている。

  英国民投票の結果を受けて米10年債利回りは24日に、過去約5年で最大の低下となり、1.56%で取引を終えた。一時は2012年に付けた過去最低の1.38%に接近した。

  メージャー氏の見通しが市場予想中央値とかけ離れたのは今回が初めてではない。

  14年は米経済の改善で米金融当局が引き締めに動くとの観測から、米国債利回りは最終的に上昇するとの見通しが大勢だったが、メージャー氏は米国債の需要が持続して10年債利回りは2.1%に低下すると予想していた。米10年債利回りは同年に0.86ポイント低下し2.17%で終了した。

  メージャー氏は「誰でも何も仕事をせずにただ賛成できないと言って反対することはできる」が、「私は心から低金利が極めて長期にわたり続くと信じている。構造的問題はいかなる景気循環的な回復にも勝る重い要素だ」と指摘した。

  イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は今後の利上げは主に米国の統計次第になると述べながらも、中国の景気減速や英国民投票も利上げ先送りの理由に挙げていたことから、先週の英国民投票はメージャー氏の長期的な低金利見通しを強めるだけだろう。

  先物市場では年内の米利上げ確率は英国民投票前の50%から、24日の結果判明後に15%に落ち込んだ。トレーダーらは利下げさえ織り込み始めている。

  メージャー氏は「米金融当局はあまり動けないという見通しにいずれ集約されてくるように私は受け止めている」と述べ、「私は既にその見方に到達した。どちらかと言えば構造的問題であり、米金融当局は国際的な理由と構造的理由で利上げできない」と語った。
  
原題:The $100 Trillion Bond Market’s Got Bigger Concerns Than Brexit(抜粋)

(メージャー氏の2014年の予想などを追加して更新します.)
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