財界や企業の反応、英国投票でEU離脱派勝利-現地拠点を移転検討も

英国の欧州連合(EU)残留・離脱を問う国民投票で離脱派が勝利したことで、現地に進出する日本企業の間で懸念が高まる。

  帝国データバンクの24日付リポートによると、英国には6月時点で1380社の日系企業が進出し、業種別では製造業が40.4%と最多で、卸売業(18.7%)、サービス業(17%)、金融・保険業が(11.5%)が続く。

  同リポートでは、英国がEU諸国との輸出入関税の見直しのほか、EU域内で自由な金融サービスを低コストで提供できる「パスポート」制度の枠組みから外れることで、英国に拠点を置く金融機関はその権利を失うことになると指摘。「他のEU加盟国への拠点移転や資本の引き揚げ、欧州撤退も含めた対応を迫られる恐れがある」としている。

  日本貿易振興機構が日系企業を対象にした今月のアンケートで回答のあった54社のうち「英国のEU離脱によりマイナスの影響を受ける」とした企業が64.8%に上り、分からないとの回答が25.9%、影響はないとしたのは9.3%だったとしている。

  以下、各団体、企業のコメントの抜粋。

  • 日本経済団体連合会の榊原定征会長(東レ会長):大変残念であるが、英国国民の判断の結果と受け止めるしかない。マーケットには過剰な反応をしないよう、冷静な対応を求めたい。今回の投票結果が、各社の事業活動や今後の計画にさまざまな影響を及ぼすことを懸念する。英国がEUから実際に離脱し、EUおよび諸外国との新たな関係が確定するまでには相当な時間を要すると考えられるが、英国の立地競争力や事業環境ができる限り損なわれることのないよう期待したい。
  • 日本商工会議所の三村明夫会頭(新日鉄住金相談役):大変残念な結果となった。英国のEU脱退通告後2年で英国でのEU法の効力は失われる。EU全体のビジネス統括拠点やEUへの輸出を目的に生産拠点を設けている企業等、英国に進出する日本企業を含め各国企業は、今後の英国のEU等との交渉の行方を注視しつつ、2017年に大統領選を控えるフランスの情勢等も見極めながら、欧州戦略の見直しを迫られよう。英国のEU離脱に向けた今後のプロセスにおいて、企業心理面も含め、経済・金融に与える影響が最少となるよう、関係機関の迅速な対応を求めたい。
  • 日本貿易会の小林栄三会長(伊藤忠商事会長):当面は先行きに対する不透明感が強まり、金融市場の混乱や実体経済への悪影響が懸念されることから、英国及びEU各国政府には、日米を始めとする主要国とも連携のうえ、混乱の収束に全力を挙げることを期待する。 今回の国民投票によって、これまで英国とEUの間に築かれてきた数々の条約や協定の再構築が必要となる。英国へは、欧州におけるビジネスの拠点として、金融・製造・サービスなどさまざまな分野の日本企業が進出していることもあり、今後の協議の中で、こうした企業に対する影響に十分配慮された枠組みが構築されることを強く期待する。
  • 石油連盟の木村康会長(JXホールディングス会長、23日の会見での発言):(原油市場への影響)需給バランスからすると、極端に下落することは考えにくい。需給バランスが支えることによって、ドル高ユーロ安による原油の下方圧力はマイルドになるのではないか。(JXHD会長として)北海油田での生産は、基本的には英国ルール、法律の前提でやっているので直接的な影響はない。
  • トヨタ自動車:英国事業への影響については、競争力維持、持続的成長の観点から、英国の自動車産業やステークホルダーとともに、今後の動向を注意深く見守りながら検証していきたい。
  • 日立製作所の東原敏昭社長兼CEO:今後事業への影響を慎重に評価し、対応を検討する。
  • 備考:日本企業、英国のEU離脱に懸念-工場進出の日立や日産自など
  • パナソニックの広報担当、石井響子氏:短期的には、貿易等、実ビジネスへの影響は小さいと考える。本来的には、EUが強く結束し、オープンな単一市場であり続けることが、EU全体としての競争力を維持することにつながり、世界経済にとっても好ましい。
  • 富士通の広報担当、大久保進之介氏:英国とEUがどう変わるか慎重に見極めながら対応を検討する。英国とEUの顧客に貢献するという姿勢は変わらない。
  • 備考:大久保氏によると、英国は富士通の欧州のITインフラサービスの中核拠点で、約1万4000人の従業員がいる。2016年3月期、海外売り上げの半分の9635億円を欧州・中近東・インド・アフリカ地域から上げたが、大久保氏によれば大部分が欧州のもの。
  • 村田製作所の藤田能孝社長:直接的な影響はほとんどないが、為替影響など市況全体を注視したい。
  • ミネベアの貝沼由久社長(ベアリングや電子機器を製造):製品の多くは、一般消費財とは異なり、航空機、自動車、機械等業界のバリューチェーンに組み込まれた高度に専門的な製品であるため、英国の離脱が当社製品の販売に関し直接的な影響を与えることはほとんどない。ただ、市場自体が壊れてしまった 場合にはやはり影響が出ると考える。また、為替市場が急激に変動することは、結果的に全世界で展開しているビジネスに影響を与えることになり、今後の事態を注視する。
  • エクセディの豊原浩取締役常務執行役員(自動車用の駆動系部品を製造。トヨタ、ホンダ、日産自などに納入。英国に販売会社がある。大阪府寝屋川市の本社で取材):欧州向けの補修用クラッチ部品を英国の拠点から販売しており、関税が掛かるようになると困る。英国のEU離脱で関税がかかるようになればオランダなどへの移転を検討する必要が出てくるかもしれない。
  • 日本たばこの広報担当、菅田良平氏:離脱完了まで英国はEU域内の扱いを受けるので短期的な影響は想定していない。
  • 備考:英たばこ会社ギャラハーを2007年に約2兆2500億円で買収。
  • アサヒグループホールディングスの小路明善社長:すぐに大きな影響が出ることはないが、英ポンド安や株価の下落などにより、EU域内および世界経済の停滞、日本経済へのマイナス影響が想定される。主要国をはじめとする各国の政府・中央銀行が歩調を合わせ、世界経済の成長を見据えた協調に取り組むことを期待したい。
  • 備考:広報担当の曽我拓生氏は、買収を予定している欧州ビール事業への影響は特にないと述べた。
  • ANAホールディングスの片野坂真哉社長:英国がEUから離脱することになれば、円高の進行や株式市場の混乱、そして英国経済、わが国も含めた世界経済の停滞の懸念が生じる。航空需要への顕著な影響がすぐに生じることはないと考えるが、今後の動向を注視していく。
  • 日本航空の植木義晴社長:EU脱退に関してのコメントは控えたい。影響については現時点では何とも言えない。
  • 三井物産の安永竜夫社長:英国事業の戦略見直しを検討する必要が出てくる。ただし、個別案件ごとに事情は異なるため、現時点では見直し対象の特定は難しい。実際の離脱は2018年とみられているが、進ちょくや影響をしっかりと注視していく必要がある。
  • 第一生命保険の露木繁夫副社長(24日の株主総会で発言):欧州での事業展開については前向きに進めているが、時間をかけての検討になる。 欧州低金利、新規制、英EU離脱問題の影響、スペイン総選挙などを見極めて判断したい。
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ:英国・EUの景気低迷や英国のEUパスポート喪失等を通じて、ビジネスへの影響となり得るが、事業そのものや業績など、経営の根幹を揺るがすような影響を及ぼすものではないと認識している。英国とEU、関係各国との交渉状況を注意深くモニタリングしていく。
  • 三井住友銀行:直ちに影響が出るものではない。中長期的な影響については、英国・EU間の協議次第であり、現時点では不明。協議の推移を注視しつつ、将来の業務運営体制等について検討していく。
  • みずほフィナンシャルグループ:あらゆる状況を注視、検討し、しっかりと対応する。
  • 野村ホールディングス:事前にプロジェクトチームを設置し、Brexit(英国のEU離脱)の影響の特定、対応策の検討を進めてきた。不確定要素が多く残っているが、引き続き状況を精査しながら、必要な対策を講じる。
  • 大和証券グループ本社の日比野隆司社長(24日にトレーディングフロアーで記者団に):大変残念な結果だった。株式市場、世界経済の不透明感大きい。消化に何日かかかる。あまり経験のない値動きで、動揺は大きい。(大和証Gの拠点の配置について)今日明日で決めることではない。必要があればちょっとした拠点を持ってやるということにはなる。
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE