英投票インパクト、離脱なら円高加速し1万5000円割れも-市場関係者

欧州連合(EU)残留・離脱を問う英国の国民投票に翻弄(ほんろう)された世界の株式は今週に入り、世論調査の結果などから残留の可能性を読み戻り歩調にある。期待に反し離脱の判断が下されれば、リスク回避の動きから日本では為替市場で円高が加速、日経平均株価は1万5000円割り込む可能性が市場で警戒されている。

  日経平均は6月3週(13ー17日)の取引で6%急落、世界株式の値動きを示すMSCIワールド指数も1.8%安と、ともに2月2週以来の週間下落率を記録。世論調査の結果から、英国のEU離脱リスクが意識され、英経済の落ち込みが欧州を中心に世界経済に悪影響を及ぼすとの懸念が強まったためだ。一方、16日に英国でEU残留支持派議員が銃撃され、死亡する事件が発生。その後は残留派優勢の世論調査結果も伝えられ、今週の両指数は反発している。

  りそな銀行アセットマネジメント部の下出衛チーフストラテジストは、足元の市場は期待も込め残留確率を高めにみていると分析。仮に離脱判断となれば、「短期リアクションとして円が対ドルで100円まで急伸し、日経平均は2月安値の1万5000円割れを目指す」と警戒感を示す。日本株関係者の間では、離脱なら円高加速を通じた株安進行を想定する向きが多い。SMBC日興証券の圷正嗣株式ストラテジストも、初動ではリスクオフが鮮明化するため、短期的には速やかに危機対応型の投資戦略に切り替える必要がある、とみている。

英国国旗を模したアドバルーン

Photographer: Luke MacGregor/Bloomberg

  一方、EU残留の判断となれば、対照的にリスクオンのムードが広がり、為替の円安進行を通じた株高シナリオがコンセンサス。大和住銀投信投資顧問経済調査部の門司総一郎部長は、「離脱懸念が織り込まれ始める前に付けた1万7000円が戻りめど」と言う。

  ただし、直近最大の不透明材料をこなしたとはいえ、一気に日本株の上昇基調が強まると予想する向きは少ない。PERやPBR(株価純資産倍率)など投資指標面からみた割安感がある半面、米国の追加利上げの先送りによるマクロ景気への不透明感が根強いためだ。一部では、欧州情勢についても、26日のスペイン総選挙の結果を気にする向きもある。

  いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、「残留になっても現状維持であることから上がる理由にはならず、一時的に売り方の巻き戻しが入る程度。英投票後は米景気や利上げ時期などファンダメンタルズを判断する相場に戻り、明確なトレンドは出ない」と予想した。

  英国民投票は23日午後10時(日本時間24日午前6時)に締め切られる。大勢の判明について、ストラスクライド大学のカーティス教授は現地24日午前3時(日本時間午前11時)から午前5時(同午後1時)とみているが、賛否が拮抗(きっこう)なら午前8時(同午後4時)近くまで待つ必要がある、と言う。

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≪市場関係者の見方≫
●三井住友アセットマネジメントの渡辺英茂調査部長
  「英国のEU残留を見込んでいる。その場合、マクロへの影響はほとんどなく、マーケットは先週に離脱を織り込んで下げた分を戻すだろう。離脱なら、ボラティリティは一時的に上昇する。英国だけを見れば、EUとの自由貿易に関税がかかったり、企業が投資を控えたりすることから時間をかけてマイナスの影響が出てこよう。ただし、グローバルに景気を大きく失速させる材料ではない。株式相場全体がクラッシュすることはないだろう」

●りそな銀行アセットマネジメント部の下出衛チーフストラテジスト
  「EU残留が決まっても、米国の景気や金融政策を見極める必要から長期投資家がすぐに動くわけでなく、日経平均の戻りは1万6800円程度とみる。離脱なら、景気の下振れリスクなど先行きネガティブに捉えられる恐れがある。深刻度を計るバロメーターとして、ポンドの動向や欧州銀行株、イタリアやスペインなど周辺国の金利動向に注目している」

●野村証券投資情報部の山口正章エクイティ・マーケット・ストラテジスト
  「英国のEU離脱の確率は30%程度と予想しており、市場の反応は残留より離脱時に大きくなりそうだ。離脱なら、当初は世界的な金利低下や株安・円高の展開が見込まれる。ただし、PBR1倍割れで株価は下方に底堅い展開となり、結果的に日経平均が1万5000円からさらに底割れすることはなさそう。残留の場合は素直に株高・円安で反応するが、現状では市場がやや楽観的な立ち位置にあり、上値は限定的」

●東京東京調査センターの長田清英シニアグローバルストラテジスト
  「マーケットのメーンシナリオはEU残留に傾きつつあり、その場合の日本株は上を目指す。ただ、米国の利上げ先送り観測が広がる中、為替は円安方向に進みにくくなっている。1ドル=105円程度を戻りめどとみれば、日経平均は6月初旬の1万7000円水準を回復するのは難しい。残留でも、僅差での勝利ならすっきりしない状態を引きずる。離脱なら、円は対ドルで100円に接近し、日経平均は瞬間風速で1万5000円を割り込む可能性がある」

●大和住銀投信投資顧問経済調査部の門司総一郎部長
  「国民投票の結果は五分五分。仮に離脱が多数派を占めた場合でもEUとの交渉が難航、英国政府が離脱の判断を下さない可能性もあり、残留7割、離脱3割とみている。残留決定なら、リスクオフの巻き戻しで日本株は上昇する。日経平均は、離脱懸念が織り込まれ始める前に付けた1万7000円が戻りめど」

●丸三証券の服部誠執行役員
  「薄商いで下げてきたため、残留なら日経平均は1万6800ー1万7000円程度まで真空地帯をいったん戻す可能性がある。ただ、そこから上を買い上げる材料はなく、1万5500ー1万8000円の従来レンジに戻る。米利上げや参院選に向けての政策しかイベントがなく、薄商いは続く。残留となっても26日にはスペインの選挙も控え、EUの政策に反対する政党の躍進が伝えられている。自分のことは自分で決めたいというEU諸国に広がる政治的な不確実性は残る」
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