ポンドが英国債のアキレス腱に、EU離脱派勝利なら通貨急落観測

更新日時
  • 安全資産としての英国債の評判は危機に直面、今週の英国民投票控え
  • 英国債の外国人投資家保有は過去最高の約68兆円

欧州連合(EU)離脱か残留かを問う英国民投票を前に、ポンドが脆弱(ぜいじゃく)なことから、世界的な危機時の避難先としての英国債市場の評判は危機に直面している。

  主要7カ国(G7)の一員として安定した政府と通貨、重要な金融センターを持つという英国の位置付けから、英国債は第2次世界大戦から2012年のユーロ危機に至るまで、上昇してきた。英国の魅力は近年高まる一方で、外国人投資家の英国債保有は金額ベースで過去最高の4490億ポンド(約68兆円)、割合は27%に達した。それだけに、今週の国民投票で英国がEU離脱を選択した場合にポンドが急落するという連想が引き起こしているのは、心配だけにとどまらない。

  米ルーミス・セイレスやアイルランドのパイオニア・インベストメンツといった大口の外国投資家は、国債市場規模で世界4位の英国債市場に対しあまり強気ではないと言う。英国債需要が減少すれば、海外資金の安定流入を頼りに資金調達コストを抑制し財政・経常赤字に対処している英国財政が弱体化するとみるためだ。

  ルーミス・セイレス(運用資産2290億ドル=約24兆円)のダン・ファス副会長(82)は「マネーは厄介事から離れるものだ。英国のEU離脱はポンドに重大なリスクであり、経済や政府を弱める。ルーミス・セイレス・ボンド・ファンドではポンド建て資産のウエートを極めて軽くしている」と語った。同ファンドのポンド建て債券資産の割合は過去最低の0.95%。

  アレッティ・ジェスティエレ・SGRとパイオニア・インベストメンツも、EU加盟国で2番目に大きな経済規模を持つ英国が16兆ドルの単一市場から離脱すればポンドが大幅下落するとの観測によって、英国債の魅力は低下したと指摘する。外国人投資家はポンド安に伴うリターン低下の可能性を踏まえ、ポンドの動きに一段と敏感になっている。

  資金避難先としての英国の魅力にとってポンドは極めて重要だ。英国のEU離脱が支持された場合にイングランド銀行(中央銀行)が利下げするとの観測などから英国債利回りは先週、過去最低を付けた。しかし、ポンドが崖から落ちるような急落となれば、利下げは実現しない可能性があるとロイヤル・バンク・オブ・カナダのブルーベイ・アセット・マネジメントのパートナーでポートフォリオマネジャーのマーク・ダウディング氏は予想する。

  ダウディング氏は「ポンドの下落はかなり大幅になろう。安全資産として英国に置かれていた資金は、EU離脱の場合、英国を離れる可能性が高い」と述べ、そのシナリオでポンドが1ポンド=1.20ドルに下落すると予想。「そうなった場合、英中銀がポンド危機に直面して利下げすることは、経済に弱さが見えても難しいだろう」と分析した。

  パイオニア・インベストメンツの国債責任者、コジモ・マラシウロ氏は「市場には引き締めリスクが織り込まれていないため、英中銀が通貨防衛で利上げに踏み切れば、年限が短めの英国債は苦戦する恐れがある」と指摘。「英経済が勢いを幾分取り戻す可能性があり、残留派が勝利しても英国の短期金利の上昇は現実になり得る」と付け加えた。

原題:Pound Becomes Achilles’ Heel of U.K. Bonds at Brexit’s Precipice(抜粋)

(市場関係者のコメントを追加して更新します.)
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