確実なのは「不確実性」のみか-苦悩する日米欧の主要中央銀行

  • 当局の行動がなかったことで、投資家にも不安伝染
  • インフレ率の伸び悩みや円高進行で日銀の問題は特に深刻か

英国の欧州連合(EU)離脱の可能性という直近のリスクにせよ、高齢化の進展に伴うより長期的な問題にせよ、世界の主要中央銀行はどう対応すれば良いのか分からずにいることが今週、露呈した。

  米国と日本、英国、スイスの中銀当局者は今週の政策会合でいずれも金融政策の据え置きを決めた。当局者はEU残留・離脱の是非を問う23日の英国民投票を固唾(かたず)をのんで見守るとともに、それぞれの経済に深く根ざした要因の理解向上に努めた。

黒田総裁(前列左から4人目)、イエレン議長(同右から3人目)、ドラギ総裁(同2人目)

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  15日に記者会見した米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は「金利が長期的にどこに向かうのか極めて不確かだ」とし、生産性の伸び悩みや高齢化を踏まえると、金利は過去の標準的な水準を下回ることになるかもしれないとの見方を示した。

  世界で最も注目される中銀のうち4つが行動を控えたことで、世界経済の不振と世界的にゆがんだ金融市場に直面して、どう行動すべきか当局者の混迷が深まっているとの見方が投資家の間で広がった。こうした感触は英国のEU離脱の場合に懸念される悪影響と相まって、世界的な株安のほか、国債利回りの急低下や一部では前代未聞のゼロ%割れをもたらした。

  パンテオン・ベンチャーズのパートナー、スーザン・ロング・マカンドルーズ氏(サンフランシスコ在勤)は16日、ブルームバーグのテレビインタビューで、「投資家は現在、明らかにリスクオフの状態だ」とした上で、「市場は不確実性を嫌う」と語った。

  イエレン議長は15日の会見で、連邦公開市場委員会(FOMC)が追加利上げを見送った理由の1つに、英国民投票を控えていることを挙げた。英国のEU離脱が決まれば、日本とスイスは経済に打撃を及ぼすような自国通貨高に見舞われる恐れがある。

  スイス国立銀行(中央銀行)のヨルダン総裁は16日、ブルームバーグのテレビインタビューで、離脱の場合「混乱が生じる可能性がある」と述べるとともに、「行き過ぎ」を防ぐために主要な金融当局が国際的な市場で行動することも考えられるとコメントした。

  米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は、EU離脱が決まれば、英国は恐らく通貨危機に直面するだろうと話す。イングランド銀行(英中銀)の金融政策委員会(MPC)委員を務めたポーゼン氏は15日の会議で、英中銀は当初、信用緩和によって経済の下支えを図ろうとするだろうが、ポンドの信認回復には最終的に金利引き上げが必要になるだろうとの見方を示した。

  日本銀行の黒田東彦総裁は一段と大きな問題に対処しなければならない。日銀のバランスシートは今や、日本の国内総生産(GDP)の80%余りに相当し、米金融当局の割合をはるかに上回る。だが、超低水準にある日本のインフレ率の押し上げにはほとんど前進がない。

  黒田総裁が抱える困難はそれだけでない。日銀が今年1月、マイナス金利の導入を決めたのにもかかわらず、円相場は今年に入って15%余り上昇している。日銀の政策据え置きで約2年ぶりの円高となった16日、記者会見した黒田総裁は必要とあればちゅうちょせず行動する意向を示した。総裁はまた、日銀が金融市場の動向を注視し、英中銀を含む各国・地域の金融当局と連絡し合っているとも付け加えた。

  しかし、ラボバンク・グループの金融市場調査責任者、マイケル・エブリー氏(香港在勤)は、日銀にはデフレサイクル脱却のための力がないかもしれないとし、「彼らは為替面で危険な局面にある」と論評。「さらなる政策ミスないし失敗を犯すか、コミュニケーションが適切でなければ、経済が既に弱体化している中で極めて深刻な打撃が加わりかねない」とした。

原題:The Only Certainty for World’s Central Bankers Is Uncertainty(抜粋)

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