日銀の戦力温存で円高進行、英国民投票の結果次第で臨時会合の予想も

  • 円高は経済、物価に「好ましくない影響を与える恐れ」と黒田総裁
  • 「追い込まれ半ば強制的に追加緩和に動かざるを得ない」-武藤氏

日本銀行は16日の金融政策決定会合で現状維持を決定した。欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う英国民投票を来週に控え戦力を温存した格好だが、結果発表と同時に円ドル相場が急上昇するなど、金融市場の動揺が続いている。英国民投票の結果次第で、日銀は臨時の決定会合を開いて対応するとの見方も浮上している。

  東京外国為替市場のドル円相場は16日朝方は1ドル=106円近辺で推移していたが、昼前に金融政策運営の現状維持が伝わると同104円台半ばまで急上昇。黒田東彦総裁の定例記者会見の最中も円高の流れは止まらず、一時、2014年8月以来の高値である同103円台半ばまで円高が進行した。

  黒田総裁は会見で「こういった形で円高が進んでいることが、日本経済、あるいは将来の物価上昇率に対して、好ましくない影響を与える恐れがある」と述べるとともに、今後も毎回の決定会合でリスク要因を点検し、2%の物価目標の実現のために必要な場合は量、質、金利の3次元を活用し、ちゅうちょなく追加的な緩和措置を講じる姿勢をあらためて示した。

日銀の黒田総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  ブルームバーグがエコノミスト40人を対象に6-10日に実施した調査では、今会合での追加緩和予想は11人(28%)にとどまっていたものの、8割以上が7月までに追加緩和があるとみており、追加緩和は時間の問題とみられていた。

  大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは会合後のリポートで、「市場では、現状維持との見方が多かったが、緩和を予想する向きの間で失望感が広がった様子」と指摘した。

7月緩和予想が引き続き有力

  追加緩和のタイミングについて、市場では引き続き7月28、29日の両日開く決定会合との見方が有力だ。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは会合後のリポートで、7月1日に日銀企業短期経済観測調査(短観)が公表された後、経済・物価情勢の展望(展望リポート)の見直しも行う7月会合での追加緩和こそが、経済物価動向の把握という観点においては妥当だとみる。

  また、追加緩和の効果の是非を判断するに際して必要な期間として、7月会合は「黒田総裁が示したメルクマールにも合致するタイミング」とも指摘する。黒田総裁は4月28日の会見で、1月に導入を決定したマイナス金利政策の効果について、「1、2カ月ですぐに出るということではなくて、もう少しかかると思うが、半年も1年もかかるということではない」と述べた。

  東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは結果発表後のリポートで、マイナス金利政策の効果について、導入以降も消費は低迷し設備投資も減少するなど、「果たしてコストに見合ったベネフィットがあるかどうかも疑わしい」としながらも、「少なくとも為替レートを通じた政策の波及経路はまだ生きているはずだ」という。

  その上で、ブルームバーグの事前調査で6月緩和予想が少数派だったにもかかわらず、現状維持の発表に対して金融市場は少なからず反応した、と指摘。7月会合前の次回調査では「今回6月の緩和を予想していた回答を吸収する形で、大半が『追加緩和あり』と予想すると考えられ、追い込まれた日銀は半ば強制的に追加緩和に動かざるを得ない」とみている。

英国民投票次第で臨時会合も

  もっとも、23日に行われる英国民投票の結果次第では、7月会合を待たずに動かざるを得ない可能性も取りざたされている。黒田総裁は英国民投票後の対応について、主要中央銀行とも連携を取り合っており、十分対応できるとしながらも、「臨時会合うんぬんにはコメントしない」と述べた。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは会合後のリポートで、「仮に来週、金融市場で大きな混乱が生じ、極端なボラティリティの高まりが生じれば、日銀は臨時に資金供給を実施する可能性がある」と指摘する。日銀は東日本大震災直後の11年3月14日、金融市場に1日としては過去最大となる21.8兆円の資金供給を実施した。

  河野氏はさらに、「国民投票の結果次第では、日銀が臨時会合を開催し追加緩和に踏み切る可能性もある」とみる。ドイツ証券の小山賢太郎エコノミストも会合後のリポートで、「金融市場の混乱が高まった場合には、各国中銀と協調して対応するために、臨時会合が開かれる可能性も頭の片隅に入れておきたい」という。

ここでもマイナス金利の弊害が

  イングランド銀行(英中央銀行)は14日、EU残留・離脱を問う国民投票をにらんだ3回の臨時オペの初回で市中銀行に24億6000万ポンド(約3700億円)を貸し付けた。ポンド建て金融市場のスムーズな機能維持を確実にするための予防措置として追加流動性を供給した。次回の臨時オペは国民投票の2日前の21日、3回目は投票後の28日に予定されている。

  日銀も過去、リーマンショックや東日本大震災を受けて即日資金供給を実施し、流動性不安の解消に努めたが、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは15日付のリポートで、「マイナス金利政策下ではそうした臨時の資金供給は成立しにくい」と指摘する。

  六車氏はその背景として、「日銀は共通担保オペ(固定金利)の利率をゼロ%に引き下げたが、金融機関がゼロ金利で念のために資金を調達しても、マイナス金利の対象になってしまうためだ。予備的な資金調達を進めにくい点で、マイナス金利政策は非常時には適さない面がある」としている。

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