東電清水元社長が「炉心溶融」使わないよう指示-第三者委が報告書

東京電力ホールディングスの福島第一原子力発電所事故で炉心溶融(メルトダウン)の発表が遅れた問題を調査していた第三者検証委員会は16日に報告書を発表し、当時の清水正孝社長が、炉心溶融という言葉を使わないよう社内で指示していたことが明らかになった。

  この報告書によると2011年3月14日夜、清水氏は記者会見に出席中だった当時の武藤栄副社長に対し、広報担当社員を通じて「炉心溶融」などと記載したメモとともに「官邸から、これとこの言葉は使わないように」と指示。この会見前の東電社内のテレビ会議では、武藤氏はメルトという言葉を使い炉心損傷に至る可能性があると発言していたという。

  これに先だって3月13日、清水氏は首相官邸を訪問。第三者委の調査ではこの時にどういったことが話されたかについては具体的に確認することができなかったという。しかしこの後、東電本社に戻った清水氏は、報道機関向けに発表する内容は事前に官邸の了解を得るよう指示していることから、報告書には指示と同じ内容の要請を「受けたものと推認される」と記載した。

  報告書によると「官邸の誰から具体的にどのような指示ないし要請受けたかを解明するには至らなかった」という。しかし、武藤氏への指示内容から、清水氏が対外的に炉心溶融を認めることについて官邸からは「慎重な対応をするようにとの要請を受けたと理解していたものと推認される」と指摘した。

  原子力災害対策マニュアルによれば、炉心損傷割合が5%を超えている場合は、原子力災害対策特別措置法で通報が義務づけられた炉心溶融に該当する。5%を上回る炉心損傷が確認されていたにも関わらず、炉心溶融を通報しなかったことについて、事故時に現場で対応した緊急時対策班が「マニュアルの内容を確認していたことを示す事実」が見受けられることから、「炉心溶融」という言葉を控えるべきだとの認識が東電社内に共有された結果、通報がなされなかったと推察している。

清水氏から計4時間の聞き取り

  東電への報告書提出後に都内で会見した第三者委の田中康久委員長(弁護士)は、官邸から具体的な指示があったかについて、清水氏に対して2回、計4時間にわたり聞き取り調査を行ったものの、「記憶がなく明確な供述が出てこなかった」と話した。周辺情報を集めるために、東電社員延べ60人に聞き取り調査を行ったという。時間の関係上、官邸側を含め東電外部には聞き取り調査を行っておらず、他の事故調査委員会の調査結果も参考にしたという。

  報告書受領後に記者団の質問に答えた東電HDの広瀬直己社長は「報告書をしっかり受け止め、再発防止策をしっかり作っていかなければならない」と述べた。これを受けて、今月中に再発防止策を含めた報告を行う方針だ。
  
  東電は原発事故後2カ月間にわたり、炉心溶融と判断する根拠がないとし、「炉心損傷」と報告していた。しかし今年2月、事故後3日後の14日早朝には炉心の損傷割合が確認できており、マニュアルに明記された基準に従えば炉心溶融を判断できていたと発表していた。炉心溶融を判定・公表できなかった経緯や原因について、第三者委を立ち上げ、調査を実施してた。

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