日銀:金融政策は現状維持、3次元緩和の効果見極め-円は急上昇

更新日時
  • 円高進行は日本経済、物価に好ましくない影響の恐れ-黒田氏
  • EU離脱めぐる英国民投票、内外との連携を密に十分注視-黒田氏

日本銀行は金融政策決定会合で政策方針の現状維持を賛成多数で決めた。1月に導入を決定したマイナス金利の効果を当面見極める構えだ。現状維持を受けて東京外国為替市場の円ドル相場は直後に1ドル=104円台に急上昇した。

  マネタリーベースが年約80兆円に相当するペースで増えるよう金融市場調節を行う方針や、金融機関の当座預金残高の一部に対するマイナス0.1%の金利も据え置いた。長期国債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針も維持した。マイナス金利には木内登英、佐藤健裕の両審議委員が反対した。量的・質的緩和に対しては木内委員が引き続き反対した。

  ブルームバーグがエコノミスト40人を対象に6-10日に実施した調査では、8割以上が7月までに追加緩和があるとみており、今会合での追加緩和予想は11人(28%)、次回7月28、29日会合が22人(55%)だった。日銀の決定を受けてそれまで同105円台半ばで推移していたドル円相場は急上昇し一時103円台まで円高が進行した。

  日銀は発表文で、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の先行きについて、「当面小幅のマイナスないし0%程度で推移する」として、「当面0%程度」としてきたこれまでの判断を下方修正した。リスク要因については「金融市場は世界的に不安定な動き」が続いているとした上で、「物価の基調に悪影響が及ぶリスクには引き続き注意する必要がある」としている。

英国民投票や日銀短観

  SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは発表後のリポートで、現状維持の決定について、英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票や7月1日発表の日銀企業短期経済観測調査(短観)、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の「結果を見極めたいということだろう」と指摘。その上で、追加緩和はこれらの結果を見極めることができる7月会合の可能性が高いとしている。

ドル円相場

  黒田東彦総裁は会合後の会見で「経済のファンダメンタルズを反映しないような円高の進行であるとかボラティリティーの増加というのは好ましくないと思っている」と述べた。その上で、為替を含めて国際金融市場の動きには十分「注意し留意したいと思っている」と発言、「行き過ぎた為替の動きは適当でない」とも話した。

  同日の決定会合後の円高がファンダメンタルズを反映しているかとの質問には、直接のコメントを控えた上で、「こういった形で円高が進んでいることが、日本経済、あるいは将来の物価上昇率に対して、好ましくない影響を与える恐れがあるということはその通りだと思っている」と語った。

  EU残留か離脱かを問う英国民投票に関しては、イングランド銀行など海外の中央銀行とも緊密に意見交換を行っていると述べ、国際金融市場や経済に与える影響を内外当局との連携を密にしつつ十分注視していく姿勢を示した。国民投票の結果によって臨時会合を開くかどうかについては「コメントしない」と述べた。

  日銀は4月28日の前回会合で、物価上昇率が目標の2%に達する時期は「2017年度中」として、従来の「17年度前半ごろ」から先延ばしした。昨年4月に「15年度を中心とする期間」を後ずれさせて以来、先送りはこの1年余りで4回目。過去3回は原油価格下落が主な理由だったのに対し、今年4月は成長率の鈍化や賃金の低迷を理由に挙げたが、追加緩和は見送った。

日銀版コアCPIさらに鈍化へ

  4月の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は前年比0.3%低下した。黒田総裁は従来、コアCPIの低迷は原油価格下落が主因と説明。日銀が公表しているエネルギーと生鮮食品を除いた日銀版コアCPIが1%を上回っていることを材料に、物価の基調は着実に改善していると指摘してきた。その日銀版コアCPIも4月には0.9%上昇と、昨年7月以来の1%割れとなった。

  日銀は7月会合で新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)を策定する。同じ日に6月分のCPIも発表される。ゴールドマン・サックス証券の太田知宏シニアエコノミストは14日付のリポートで、5月の東京都区部CPIを基に計算すると同月の日銀版コアCPIは0.7%上昇、6月分はさらに0.6%上昇まで鈍化する可能性があると指摘する。

7月緩和、見方分かれる緩和手段

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストはブルームバーグ調査で、マイナス金利の効果が現れにくいことに加え、日銀版コアCPIを含む物価の基調データが鈍化し始めていることや、展望リポートで景気・物価の下振れリスクを意識せざるを得ないことから、7月会合での追加緩和を予想する。

  三井住友銀行の西岡純子チーフエコノミストも同調査で、「物価が年を通じて低空飛行する可能性が高い中、何も追加措置を講じないと金融環境がタイト化してしまうため、それを可能な限り緩和するために日銀は追加緩和を講じる」として、同じく7月緩和を予想する。

  緩和手段については、六車氏は「選択肢が限られてきていることから、ETF、J-REIT、社債買い入れ拡大などの質的緩和が中心」とみている。一方、西岡氏は緩和強化の主軸は「マイナス金利の深掘り」で、それに合わせて量的な拡大の可能性も残るとしている。

木内氏は引き続きテーパリング提案

  木内審議委員は決定会合で引き続き、「マネタリーベースおよび長期国債保有残高が年間約45兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節および資産買い入れを行う」との議案を提出したが、1対8で否決された。

  決定会合の「主な意見」は6月24日、「議事要旨」は8月3日に公表する。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイトで公表している。29日に任期を迎える石田浩二審議委員の後任として新生銀行執行役員の政井貴子氏が30日に就任する。

(第3段落に為替相場、6、7、8段落に黒田総裁の発言を追加します.)
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