【コラム】日銀が一番大変、今週会合の4中銀を比較する-エラリアン

イングランド銀行や日本銀行、スイス国立銀行、米連邦公開市場委員会(FOMC)など、今週は先進国の中央銀行が相次いで政策決定会合を開くが、これら中銀は全て、国内の流動性と国外に波及する影響の双方を管理するという難題を突き付けられる。
  
  中でも最も興味をそそられる議論は日銀でなされるだろう。同行にはもう一つの難題があるからだ。効果的な政策措置と無力かつ非生産的な措置とを分ける境界線に最も近づいたのが日銀だ。もう既にその境界線を越えてしまったかもしれない。

  非伝統的な中銀政策は広範囲に及び、限界に近い。中銀は経済成長促進という重責の大半をここ数年担ってきた。より良い手だてがあるにもかかわらず、大方の政府は中銀を側面から支える介入ができず、中銀はこの過剰な責任を負う立場から簡単に退くことができない。その結果、これら先進国の中銀はどこも、景気支援の実験的な政策を続けながら経済および金融安定への長期的リスクを最小限に抑えるというデリケートな責務に直面する。

ブルームバーグ・ビューのコラムニスト、モハメド・エラリアン氏

Photographer: Patrick T. Fallon/Bloomberg

  この二律背反的な責務は自国通貨の上昇をめぐる懸念によって一段と難しくなる場合がある。実際、日本とスイスの通貨は高く、ドルもそうなる可能性がある。

  もう一つ、状況を複雑にさせる要因は英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う6月23日の国民投票だ。離脱賛成となれば、株式市場でボラティリティが顕著になり為替相場も急激に振れかねず、中銀は自国経済への悪影響を最小限に抑える緊急措置を検討しておく必要がある。

円高

  日銀にしてみれば、ただでさえ複雑なこれら課題への対応は、政策が無力で非生産的とは言わないまでもその有効性が落ちたのではないかという感覚によって一段と難しくなる。

  日銀は1月の政策決定会合でマイナス金利の導入を決め、市場を驚かせた。円を安くして経済活動を促進させる期待があったのだろうが、それとは逆のことが起きた。円は上昇、マイナス金利に国民は怒り、政治の嵐にも巻き込まれた。

  その後の決定会合では、政策を維持し、金融市場の反応を見守ることとなったが、またもや円は上昇し、日銀はますます居心地が悪くなった。

  日銀の読みが外れる展開に終わってしまうのは、民間部門が金融システムから離れようとしていることを示唆するデータからもうかがえる。民間のこうした動きは政策効果を薄め中銀の信頼性に疑問を呈するものであるため、日銀の不安は高まる。通常なら、金融機関が弱く経済運営の拙い政府が中銀を牛耳る途上国で見られる現象だからだ。

加担

  脆弱(ぜいじゃく)な国内経済にとって円相場が高過ぎる状況が続く中で、日銀は政府が構造改革を進めると期待しながら追加措置を試す方向に傾くだろう。しかし、金利をさらにマイナス圏で下げれば一段と注目され不人気を招くため、それよりも資産購入によるバランスシート拡大措置を講じる公算が大きい。

  日銀は時間稼ぎを続けているが、その不透明感は高まっている。欧米の中銀同様、日銀も政府が強力な政策対応をとることで自らが担ってきた重責の一部が緩和され痛々しいほどの無力さをさらさずに済むことを期待している。だが、残念なことに、政治の現状からすると、中銀のそのような願いは実現されないままだろう。日銀をはじめ、先進国の中銀が経済停滞を和らげるよりもそれに加担してしまうリスクは増大している。

(モハメド・エラリアン氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

原題:As Central Banks Meet, BOJ Has Toughest Job: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

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