苦悩するイエレン議長、米国には労働者が足りないのに雇用ペース失速

  • 人材不足の恩恵は低スキル労働者にも広がる
  • アトランタのレストラン経営者「こんな状況見たことがない」

異変に気付いたのは半年前だった。人材派遣ケリー・サービシズ(ミシガン州トロイ)の最高執行責任者(COO)、ジョージ・コロナ氏は倉庫やコールセンターでの低レベル職の求人に対し、適格な人材を見つけるのに苦労するようになった。「賃金を上げないと、こうした職種に求職者を集めるのはますます難しくなっている」とコロナ氏は語る。

  今回の景気拡大が始まってから7年が経過しようとする米国では、求人があっても適格な人材が応募してこないという適材不足の兆候が出ている。コンピューターソフトの開発といった高スキルの人材についてこうした現象はしばらく前からあったが、失業率の低下を背景にこれが低スキルの職種にも広がり始めた。

  イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は今月6日にフィラデルフィアで講演し、「リセッション以降の労働市場を圧迫してきたスラック(たるみ)はもはや、解消に近づいている」と述べた。

書類を書く求職者

Photographer: Luke Sharrett/Bloomberg

  14日に始まった米連邦公開市場委員会(FOMC)では、イエレン議長が抱えるジレンマがメンバーと共有される。3月以降の非農業部門雇用者数の増加は月間平均で11万6000人となっており、昨年の平均22万9000人よりペースが落ちている。最近減速した主な要因は労働需要の減少なのか、あるいは労働者の不足なのか。

  前者であれば、FOMCにとっては利上げに際して、ますます慎重になる理由になる。後者であれば、引き締めを渋っているうちに景気がオーバーヒートするリスクを冒しかねない。

  イエレン議長は最近の講演で、このところ見られる雇用増加のペース失速は景気全般が減速している兆候である可能性に重点を置いて話した。フェデラルファンド(FF)金利先物市場の動向からは、投資家がこれを受けて年内の利上げはないと見ていることがうかがえる。

  米労働省が8日発表した4月の求人件数は580万件に増加。2000年にこの統計の集計が始まって以来の最高を記録した昨年7月に並んだ。3月は570万件だった。一方、4月に雇用された労働者は510万人と、前月の530万人から減少した。

  高スキル労働者の不足はしばらく前から見られる現象だ。大学卒業あるいはそれ以上の学歴を有する労働者の失業率は昨年中盤以降、2.5%前後で推移している。

  「エンジニアや科学者、金融業など高い資格を持つ労働者は、望みさえすれば即座に職につける」とケリー・サービシズのコロナ氏は話した。

  こうした労働者はその恩恵を享受している。エクスプレス・エンプロイメント・プロフェッショナルズのボブ・ファンク最高経営責任者(CEO)は、最近新しく雇った会計士には在職者より20%高い報酬を出していると話す。それほど市場がタイトなのだという。

  そのタイトな労働市場の恩恵がもっとスキルの低い労働者にも回ってきたもようだ。今月1日に米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によれば、アトランタ、リッチモンド両地区からは、高い技術を必要とし ない職種でも労働者の確保が困難になりつつあるとの報告があった。

  アトランタを拠点にケータリング事業やレストランを営み、約800人を雇用するフィフス・グループ・レストランツのパートナー、ロビー・カクラー氏は、「1987年からアトランタでレストラン運営に携わっているが、ここまでタイトな状況は初めてだ。特に時間給労働者がなかなか見つからない」と語った。

  洗い場や調理師など、レストランの「裏方」の人材は5年前なら1-2週間もあれば見つかったが、今では適材を探すのに2-4週間かかるという。「賃金はこの2-3年で軽く10から15%は上がる傾向にある」と続けた。

  もっとも、適材の不足ばかりではなく、雇用への需要が減退してきた兆候も見られる。エクスプレス・エンプロイメントのファンク氏によれば、最近の雇用失速は単に労働力の縮小ではなく、労働需要の不振も浮き彫りにしている。オクラホマシティーの同社では現在、約1万4000件の求人があるが、昨年は年間を通じて常時、3万件ほど抱えていた。

原題:Yellen Faces Rate Dilemma as U.S. Economy Runs Short of Workers(抜粋)

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