高効率な石炭火力技術で「現実的」なCO2排出削減に貢献-経産省

二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭の利用をめぐり、環境団体から日本が主要7カ国(G7)中で最大規模の公的支援を提供しているとの批判を浴びる中、経済産業省は高効率の石炭火力発電技術を新興国に輸出していくことが排出抑制につながると反論している。

  経産省資源エネルギー庁石炭課の覚道崇文課長はブルームバーグのインタビューで、新興国では石炭火力発電所の建設が計画されており、日本の高効率技術を広く普及させることで「今の技術のまま石炭火力発電を増やすよりもCO2の排出量は少なくてすむ」と話した。

  覚道氏は排出量が少ない超々臨界圧と呼ばれる技術を採用することが「現実的な対策」とし、経済協力開発機構(OECD)加盟国の間でも共通理解だと指摘した。経産省の資料によると、国内の最高効率の石炭火力発電技術を米国、中国、インドの石炭火力に適用するとCO2排出量の削減効果は約15億トン。2014年度に13億6400万トンだった日本全体の排出量を上回るという。

  世界の発電電力量の4割以上を占める石炭火力発電は増加傾向にあり、グローバル石炭発電所トラッカーによると、10-15年には世界33カ国で計4億7300万キロワット規模の石炭火力発電所が新たに建設された。経済成長の著しいアジアを中心に現在建設が計画されている石炭火力発電所の規模は、計10億8600万キロワットにのぼる。

押し売りではない

  覚道氏は「石炭火力を押し売りしているわけではない」と強調する。石炭火力発電所の新設計画を持つ国々では、環境だけでなく経済性や燃料の供給安定性などの観点からそれぞれ最適な電源構成の目標を持っており、全体の計画の中から石炭火力発電所だけを撤回するわけにはいかないと指摘。「CO2やイメージで石炭放棄を迫るのはやや独善的」との考えを示した。各国の事情に応じて石炭だけでなくガス火力発電の技術も輸出する方針だという。

  超々臨界圧型の石炭火力は商用化されている最先端の発電技術で、1キロワット時あたりのCO2排出量は800グラムと亜臨界圧型などの従来技術に比べて5-10%程度少ない。実証段階の先進超々臨界圧(A-USC)や石炭ガス化複合発電(IGCC)を導入すれば、さらに10%超削減することができる。一方、ガス火力の排出量は同480-375グラムと石炭火力の半分程度の排出量となっている。

  日本は30年度の最適な電源構成として、全発電電力量に占める石炭火力の割合を26%程度(15年度は32%)、ガス火力発電を27%程度(同44%)にすることを目指している。燃料供給の安定性と経済性に優れた石炭火力の割合を一定に保ちながら排出削減目標を達成するため、発電会社に対しては発電効率に関する新たな基準を設け、電力の小売会社に対しては非化石電源比率を30年度に44%以上とすることを求めている。

不良資産化しない

  覚道氏は「30年を見通した上で、国内外で石炭火力をやめるとか、運転できずに座礁資産になるということにはならない」との考え方を示し、オックスフォード大学スミス企業環境大学院が示した日本国内で約6兆円の石炭火力発電が座礁資産として不良資産化するという試算について「現実的ではない」と否定した。

  ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)は、アジア諸国での石炭火力発電の増加に伴い、40年の世界全体のCO2排出量は15年比で5%増加すると予想。特に電力需要が40年までに3.8倍に膨らむことが予想されているインドでは、石炭火力発電所が中心となることから、世界の排出量推移の鍵を握るとしている。

  OECDは15年11月、発電効率が低い石炭火力の輸出を抑制するため、国際協力銀行を含む加盟国の輸出金融機関による融資の規制で合意した。OECDは高効率の石炭火力向けについては従来通りの融資を容認しているが、米最大の年金基金カルパースをはじめとした複数の欧米年金基金では、石炭関連企業への投資資金を引き上げるダイベストメント(投資撤退)の動きも出ている。

  覚道氏は「供給側が石炭火力へのお金の流れを制限したとしても、需要側が収まることはない」と指摘した。そのうえで、火力発電所などで排出されるCO2を大気中に出さずに回収し、地中に封じ込めるCCS(二酸化炭素回収貯留)のような技術が利用可能になるまでの間は、石炭をできるだけ効率よく使って排出量を抑制する努力が必要との考えを示した。

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