日銀追加緩和は時間の問題、6-7月の予想が8割超-サーベイ

  • 7月予想が55%、6月は28%-手段はETF買い増しがトップ
  • 英国民投票結果や米利上げの行方に不透明感

日本銀行が今週開く金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るとの見方は少数派にとどまり、7月会合での追加緩和予想が大半を占めていることが、ブルームバーグが実施したエコノミスト調査で分かった。7月までに8割以上が追加緩和があるとみており、あとは時間の問題というのが市場の見方だ。

  エコノミスト40人を対象に6-10日に実施した調査で、日銀が15、16日の会合で追加緩和を行うとの予想は11人(28%)と少数派にとどまり、次回7月28、29日会合が22人(55%)と最も多かった。6、7月を合わせると33人(83%)と圧倒的多数を占めた。前回調査では4月緩和予想が56%と直前予想としては量的・質的緩和が導入された2013年4月会合以降最も多かったが、金融政策運営は据え置かれた。

  追加緩和の具体的な手法についてはエコノミスト32人(複数回答)のうち指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ増を見込む回答が25人(78%)と最も多く、ほぼ同数の24人(75%)が付利の引き下げの可能性も指摘した。

日本銀行

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「5月の米雇用統計で円高が進行したが、世界的には米利上げ観測後退からリスクオンモードなので、日銀は今月動かなくてはならない緊急性を感じていない可能性が高い」という。一方、「企業の価格設定行動は2%目標と一段と非整合的になっているように見受けられる」ことから、展望リポートを更新する7月には追加緩和が実施されると予想する。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストも「政府の消費増税先送りと経済対策の表明と歩調を合わせ、日銀が6月に追加緩和を行うこともあり得るが、確率は5割未満。7月の方が可能性は高い」との見方を示した。

英国民投票の見極め必要

  大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは財政政策と歩調を合わせて日銀も動くとの見方もあるため、6月緩和が見送られれば「相応の失望感が広がる恐れもある」とみる。ただ、「一段の緩和が行き過ぎとの批判を誘いかねない点も考慮すれば、参院選でアベノミクスへの信を問う前に日銀が動くことを政府サイドは望まないのではないか」と指摘する。

  野口氏は、日銀も英国の欧州連合(EU)離脱問題や米利上げなどをめぐる不透明感が和らいでから行動した方が良いと判断するとみる。同時に「日銀の想定通りに物価が加速するとは依然考えにくい」として、7月の追加緩和を見込む。

  JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストも、「財政タカ派」の黒田東彦総裁は「消費増税延期が財政ファイナンスでないことを記者会見で強調するだろう」とし、6月追加緩和の可能性は低いという。

  また、英国民投票前の追加緩和には「慎重になると思われる」とみる。ただ、7月に追加緩和がなければ、市場は17年度中の2%物価目標達成への意欲に懐疑的になって失望し、「日銀の信認が低下する」との見解を示した。

6月緩和予想も

  6月緩和予想も根強く残っている。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「マイナス金利の影響をある程度見極められるようになってきた上、年初から急激に進んだ円高の影響などから物価の基調にも変調が出てくる」ことから、追加緩和は近いと予想する。

  日銀が重視してきた「生鮮食品及びエネルギーを除く消費者物価上昇率」は4月に前年比で1%を割り込んだ。5月下旬の主要国首脳会合(伊勢志摩サミット)は「全ての政策手段」を用いることを確認。6月1日に安倍晋三首相が消費税率引き上げの先送りと秋に経済対策を講じる方針を表明した。矢島氏は日銀も歩調を合わせる形で「金融緩和に踏み切りやすくなった」とみる。

  野村証券の松沢中チーフストラテジストは「米雇用統計後のドル円相場の下振れは6月追加緩和の見方を補強した」とし、4月に続いて「6月も再びゼロ回答ならば、政策催促相場の様相を強める」と想定。消費増税の先送りについても、金融・財政政策を総動員する一方で、為替政策は封印するG20共同声明の枠組みの中で、「金融緩和を阻害しない」との見方だ。

サプライズ狙いも

  信州大学経済学部の真壁昭夫教授も「5月の米雇用統計が予想を大きく下回り、再度、ドル安円高リスクが上昇しているため、雰囲気として追加緩和への期待は高まりやすくなっている」とする。その上で、「日銀が動かないなら、市場が失望し、為替相場を中心に荒い動きが広がる可能性は無視できない」と警戒する。

  東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは安倍首相が伊勢志摩サミットでリーマンショック並みの危機の可能性を示唆する前でも、黒田総裁が緩和に前のめりの発言をしていと指摘。6月会合で「米雇用統計による円高シフトも材料として追加緩和の可能性がある」と予想する。市場がおおむね今回はないと判断していることも、サプライズを好む黒田日銀にとって「狙い目のタイミング」だという。

マイナス金利は回避か

  マイナス金利には副作用が目立ち、その拡大に踏み切りにくくなったとの見方もある。国債市場では10年物国債利回りまでマイナス化する中、三菱東京UFJ銀行が国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)の資格返上を検討していることが明らかになっている。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は、物価の基調がどの指標でも「かなり大きく下振れしている」ことから、「日銀は6月会合で、少なくとも10兆円規模の追加的な量的・質的金融緩和を実施すべきだ」という。

  ただし、マイナス金利の深掘りについては「金融機関の中で逆ザヤが発生し続けている中で、短期金利のマイナス幅を拡大して長期金利のマイナス幅を一段と大きくすることは、一部金融引き締めを実施するような政策となる」ことから、現時点では望ましくないとしている。

  UBS証券の青木大樹シニアエコノミストは「サプライズ重視であれば6月の可能性もあるが、国債の買い入れ増額は難しく、マイナス金利の拡大には市場はネガティブに反応する可能性が高い」と推測。日銀の追加緩和の効果を高めるためには「補正予算の公表・決定と合わせる必要がある」と、9月会合を予想した。

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