キューバ拠点再開相次ぐ、総合商社-制裁解除にらみ未開拓市場に先手

  • 三菱商事や三井物産、丸紅がハバナに拠点設置を再開へ
  • 拠点を持つ住商は常駐の駐在員配置、双日は情報収集を一層強化

総合商社が相次いでキューバに拠点の設置を再開する。キューバと米国との国交回復を受け、米国による経済制裁の解除を見据えて今後の事業機会が高まると判断。未開拓とされる市場に先手を打つ。三菱商事が1日付で首都ハバナに駐在事務所を開設したほか、三井物産や丸紅も拠点開設を同国政府にそれぞれ申請した。

  三菱商事がキューバに事務所を設置するのは1981年以来、35年ぶりとなる。7月以降に現地スタッフ2人が勤務する予定。現在はキューバからコーヒー豆の輸出のみを手がけているというが、経済制裁解除後の事業拡大を目指し現地拠点を再開する。経済制裁の影響もあり、事業の将来性が見込みにくいなどとして2006年に撤退した三井物産も9月以降の開設を見込む。丸紅も95年に現地事務所を閉鎖したが、5月末に拠点設置の申請を行った。各社の広報担当者がブルームバーグに対して述べた。

  昨年7月に米国とキューバは54年ぶりに国交を回復。キューバの人口は約1100万人と東京都よりも少ないが、観光や医療機器、農業、ニッケルなどの資源といった分野で事業機会が見込まれている。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、日本とキューバの貿易額は1975年には約2311億円と当時のキューバにとって日本は西側最大の貿易相手国だった。ただ、80年代初めにキューバが債務不履行に陥ると貿易額は大きく減少。2015年は67億円だった。

視察団を派遣

  ジェトロでは5月31日から6月3日まで日本などから建設会社や医療機器メーカー、物流会社、機械メーカー、総合商社など約30社が参加した現地視察団を派遣。海外調査部米州課の西沢裕介課長代理は「ミャンマーやベトナムなどと比べると人口も少なく大きな市場ではないものの、キューバは米国企業が全く進出していない中南米最後のフロンティア」と指摘する。

  投資余力のないキューバではインフラなどのあらゆるものが老朽化しており、設備刷新の需要も見込まれる。何十年も前に日本企業が納入した発電設備がいまだに使われており、その古さに日本の技術者も驚くような状況だという。

  マッコーリーキャピタル証券のアナリスト、ポリーナ・ディアチキナ氏は「新たな市場を開拓するのが総合商社の役割」として「長年にわたって閉ざされてきたキューバは自動車などの消費者関連の分野とともに産業やインフラなどにおいても事業機会にあふれている」とみる。

  資金不足のため海外からの投資誘致に力を入れるキューバは年間25億ドル(約2700億円)の外国直接投資の目標を設定していると、同国経済に詳しい米カリフォルニア大学サンディエゴ校のリチャード・フェインバーグ教授は指摘する。

農業関連や自動車など視野

  住友商事は1974年、双日は76年からそれぞれ駐在員事務所を開設。現在、情報収集のみを行っている。住商は92年に日本人駐在員を引き揚げ、グアテマラ事務所長が兼務していたが、5月22日からハバナに常駐の事務所長を派遣した。住商広報部は「農機・農薬などの農業関連資機材、防疫用殺虫剤、建機・自動車をはじめ、あらゆるビジネス分野での可能性を探っていきたい」と電子メールでコメントした。

  現地スタッフを置いている双日も「日本政府の支援体制と歩調を合わせて経済協力案件などを中心に開拓していきながら、情報収集の一層の強化に努める」と広報部がメールでコメントした。

  ジェトロの西沢氏は「経済制裁が解除されると地理的な近さからも米国企業があっという間に進出してくるのは目に見えており、制裁が解除されてからでは遅い」と指摘。ただ、経済制裁の解除については大統領選挙の結果にも影響されるとして、時間はかかりそうだとみている。

  また、現状では日本貿易保険(NEXI)の規定で決済期間が2年以上の中長期貿易保険の引き受けを停止している。昨年12月に主要債権国会議(パリクラブ)で日本を含む債権国側がキューバ向け債権の大部分を放棄することで合意したが、中長期貿易保険の再開については、残る日本向け債務の返済条件などについてキューバと日本の両政府間で合意し、実際に返済が開始されることなどが判断基準となる。

  伊藤忠商事ではキューバでの現地拠点の再開については、状況を見極めている段階で具体的な計画はないと説明している。

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