日本企業、英国のEU離脱に懸念-工場進出の日立や日産自など

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  • 英国に鉄道工場新設の日立社長「難しい局面に立つ可能性」
  • 日産自ゴーンCEO、非離脱が「雇用や貿易、コスト面で最も納得」

英国の欧州連合(EU)離脱(Brexit)について、現地の世論調査で支持派が、残留派に対して世論調査で優位に立った。離脱となれば影響を被るとして、現地に拠点を置く日本企業からも懸念の声が上がる。

  「離脱は絶対に反対だ」-。日立製作所の東原敏昭社長は先月、都内での会見で述べた。日本から英国への2013年末時点の直接投資残高は6兆円を超えており、現在も日本にとって米国に次ぐ投資相手国。その国の行方を決める投票を2週間後に控え、日立の他にも日産自動車やトヨタ自動車など、日本企業は投票の行方を見守る状態が続いている。

  英国は首都ロンドンが欧州の金融センターでもあることから、日本企業が多く進出している。メーカーは英国からEU各国に製品を輸出することで域内貿易製品として関税免除を得ることができ、価格競争力を持てる。しかし英国がEU離脱を選択した場合、EU域内国との貿易に新たに関税が課せられる可能性がある。

  林幹雄経済産業相は7日、閣議後の会見で、基本的には英国民の問題としながらも「英国に進出しているわが国企業とも関連しており、日本の国益に関わるものでもある」と指摘。「わが国としては英国がEUに残留することが望ましいと考えている」と述べた。

車両販売の戦略的拠点

  日立は昨年、英ダーラム州に約150億円を投じて高速鉄道向けなどの車両の最新工場を建設。将来的には欧州への車両販売の戦略的拠点とする方針だ。東原社長は、「英国がEUの一員であるということで鉄道工場を作り、そこからEUに展開する前提なので、難しい局面に立つ可能性が出てきた」と会見で述べた。

  英国で6月1-3日に3405人を対象に実施された世論調査によると、EU離脱に投票するとの回答が45%と、残留支持の41%を上回った。11%が態度をまだ決定していないと答えた。4月と5月の調査では残留支持派がリードしていた。EU離脱の賛否を問う国民投票は23日に行われる。

  日産自も1980年代から英国に進出し、同国で最も生産台数の多いメーカーになった。従業員は8000人以上、投資額は累計で30億ポンド(4640億円)を超える。カルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は2月に声明を発表、「当社はビジネスの観点から、英国がEUにとどまることを希望する。それが雇用や貿易、コスト面で最も納得がいくからだ」と述べた。

「自由なアクセス権失う」

  大和総研の山崎加津子シニアエコノミストは、英国がEU離脱となれば海外からの投資の前提条件が変わり、英国経済にはダメージとなるという。EU残留希望派からは、「人口約5億人のEU単一市場への自由なアクセス権を失うことや、EU内の英語圏との魅力を失うことで直接投資の減少が懸念されるなどの声が上がっている」と話す。

  トヨタも英国工場を1992年から稼働している。現地での副責任者を務めるトニー・ウォーカー氏は、英国のEU離脱が結果的にコスト増につながり、将来の投資計画を台無しにしかねないと、3月のイベントで発言している。トヨタの広報担当者は7日、ウォーカー氏の同発言に付け加えることはないと述べた。

  日本貿易振興機構(ジェトロ)が発行する世界貿易投資報告の最新版によると、14年の日本から英国への直接投資額は1兆60億円で、国・地域別では米国に次いで2番目の投資相手国。製造業では他に、富士通、東芝、協和発酵キリン、日本たばこ産業などが投資や工場進出を通じて現地で事業を展開している。それに伴う中小企業も日本から進出している。

移行期

  23日の国民投票で離脱が決まると、関税の扱いなどの詳細な部分について、正式に離脱するまでの数年間の協議で決められるという。日立のアリステア・ドーマー鉄道ビジネスCEOは1日、都内での会見で「仮に離脱となっても2-3年かけて移行期について取り決めることになるだろうが、現時点においてわれわれに何かそのための特別な計画があるというわけではない」と述べた。

  SMBC日興証券の木村和典エコノミストは、5月26日付リポートで、経済分析チームがEU離脱の可能性が40%程度存在するとみていると紹介。離脱に至れば、「金融市場は混乱が避けられず、また実体経済面でも英国とEUの双方に悪影響が及ぶ可能性が高い」と述べている。

(最後に2段落書き加えます.)
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