「グレーで怖い」とのイメージから敬遠されがちだった不動産の競売市場に、個人投資家の関心が集まっている。日本銀行のマイナス金利導入で金融商品の利回りが低下する中、割安で買え賃貸収入で高い利回りを期待していることが背景にある。

  首都圏の戸建て住宅やマンションを1万円から競りに掛ける公開オークションが5月下旬の2日間、東京ビッグサイトで行われた。提示されたのは東京・八王子市やさいたま市などの6物件。全て落札され、186万ー506万円で売れた。参加定員40人に対し、ほぼ満席だった。

  個人が不動産投資に意欲的なのは、低金利が続く中で少しでも有利な運用先を見つけたいという事情がある。米総合不動産JLLの資料によると、都心オフィスビル(グレードA)と10年国債の利回り格差は3月末時点で305ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と昨年末の260bpから拡大、2007年以降で最大となった。

住居ビル(印西市)
住居ビル(印西市)
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  裁判所の不動産競売物件を取り扱う業者が加盟する不動産競売流通協会に所属する富士企画の新川義忠取締役は、「低金利で銀行にお金を預けていても利息がつかない。不動産投資で利益を出したいという人が増えている」と語る。同社には不動産投資に関する問い合わせが今年に入り月間200件程度と前年の3倍に膨らんでいるという。5月には千葉県の1棟マンションを約5億円で個人が買うための仲介をした。

競売のイメージ

  裁判所が行う競売は、ローンの債務者が返済できない場合、抵当権を設定した不動産を差し押さえ強制的に売却する仕組み。同協会の青山一広代表理事は、いまだに「競売=グレー、怖い」のイメージがあるとし、「一般の方の認知度はまだまだ低い」と話す。競売には「お得に不動産を入手できる」利点があると述べ、認知度を高めるため、一般の不動産物件を売り出すオークションを今回初めて企画したと言う。

  三友システムアプレイザルの資料によると全国10地方裁判所の競売開札件数は15年4-9月(15年度上期)で6半期連続で減少したものの、落札総額は前期比0.4%増の844億円で、裁判所が決めた最低価格と実際の落札価格の開きを示す落札価格倍率も2.1倍に上昇した。

  同社の福迫良輔専務は、競売件数の減少傾向について、金融機関の返済条件緩和が続いていることに加えて「競売に至らずに任意売却でより高い値段で売れるケースが増えていることも影響している」と述べた。しかし、「出てくる物件が限られており、特に人気が高い物件は買い手が殺到する」と話すように、需要は底堅い。競売物件をリニューアルしてより高い収益で運用する手法も広がりつつあるという。

大手も個人投資に注目

  大手不動産会社も個人投資家のニーズ取り込みに動いている。三菱地所レジデンスは個人の投資用マンションの開発に着手。千代田区と品川区でワンルームなど小さめの新築マンションの分譲を予定している。推定価格帯は3000万ー4000万円。野村不動産アーバンネットは6月に「サラリーマン投資家」、「初心者限定」と銘打ったセミナーを開く予定だ。

  一方で投資の過熱による物件価格の上昇で、賃料収入を元にした収益性は低下。不動産サービスのCBREによると、都心5区の賃貸用マンションの期待利回り(4月)は調査開始の07年以来の最低となった。JLLの日本法人の赤城威志リサーチ事業部長は「利回りは下がっているが、低い借り入れコストや節税効果を考えると、個人の不動産投資は納得できる経済行為だ」と話している。

  デフレ脱却に向け異次元金融緩和を進めてきた日銀は1月にマイナス金利政策を決定した。これを受け市場金利は一段と押し下げられ、長期金利の指標となる10年物国債利回りはマイナスで推移。個人投資家が安定利回りを求める債券型投資信託などの運用利回りも低下している。

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