米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は6日の講演で、米経済は前進しているとの認識を示したものの、追加利上げの時期には言及しなかった。利上げ時期を特定しなかったことは、6月利上げの見送りを示唆したとの見方が出ている。

  議長はペンシルベニア州フィラデルフィアでの講演で、「中長期的な物価安定と最大限の持続可能な雇用を確保するため、フェデラルファンド(FF)金利は時間をかけて緩やかに上昇しなくてはならないだろうと、私は引き続き考えている」と述べた。

  また5月の雇用者数の伸びについて、「期待に及ばなかった」とした一方、雇用統計で見られた明るい要素の一つとして平均時給の増加を挙げた。

  この日の講演では、追加利上げの時期をめぐる表現が従来よりも具体的でなくなった。5月27日のハーバード大学でのイベントでは、「今後数カ月のうちに」追加利上げが適切になる可能性が高いと発言していたが、この日の講演ではこの文言は使われなかった。3日に発表された5月の雇用統計では雇用者数の伸びがほぼ6年ぶりの低水準となり、市場の利上げ期待は大きく落ち込んだ。

  三菱東京UFJ銀行のチーフ金融エコノミスト、クリス・ラプキー氏は「イエレン議長は次回の緩やかな利上げの時期を述べなかったが、これは議長が急いでいないことを示す」と指摘。雇用統計に関する議長のコメントで「来週の金利の変更はほぼなくなった。7月の利上げも有力ではない」と説明した。

  FF金利先物の動向に織り込まれた7月利上げの確率は5月末の時点で53%、今月3日は27%だったが、その後、約22%に低下した。

   パンセオン・マクロエコノミクスのチーフエコノミスト、イアン・シェファードソン氏は顧客向けリポートで、「イエレン議長の講演は明らかに、市場心理を落ち着かせようとしたものだ。5月の雇用統計の弱さを認めながらも、それが一時的なものだと考える確固とした根拠を述べている」と分析した。

  イエレン議長は「気がかりな」5月の雇用統計が労働市場を注視し続けるべき理由だと述べたが、同統計から早まった結論を導くべきではないと警告。「1つの雇用統計を重視し過ぎるべきではない」とし、「5月の雇用統計が一時的な逸脱、もしくは年初の経済活動の低調さに起因する一時的な減速の反映であれば、雇用の伸びは今後上向き、所得の一段の増加を支えるだろう」と指摘した。

  経済見通しについては「4つの不確実な分野」を注視していると発言。低調な投資トレンドや5月の雇用統計などを挙げ、そうした状況は「世界情勢が非常に起伏の激しい」時期において米経済の抵抗力に疑問を生じさせると説明した。

  このほかグローバルリスクも懸念材料だと指摘。中国の経済成長率や、今月実施される英国の欧州連合(EU)離脱の是非をめぐる国民投票を挙げた。また米国の生産性が上向くかどうかや、インフレ率が金融当局の目標である2%に向けてどのようなペースで上昇していくかについて不透明感があると話した。

原題:Yellen Sees Rates Rising Gradually But Avoids Precise Timing (2)(抜粋)

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