門間前日銀理事:17年度中2%「ハードル高い」-「中長期」に修正を

  • 特定時期の達成目指すと「想像を絶する対応取らなければならない」
  • 近い将来に金融緩和をしなければならないような大きなリスクはない

日本銀行の前理事である門間一夫氏は、2017年度中に2%の物価上昇率を実現するのは「相当ハードルが高い」と述べ、物価目標の達成時期を「中長期」に修正することを検討しても良い時期に来ているとの見方を示した。

  門間氏は日銀のチーフエコノミスト的存在である調査統計局長をはじめ、金融政策担当理事、国際担当理事を歴任し、5月末に退任。1日付でみずほ総合研究所のエグゼグティブエコノミストに就任した。

  6日のインタビューで門間氏は、日銀はすで相当思い切った手を打っているので、2%を特定の時期に達成するためには、「さらに想像を絶するような対応を取っていくことになる」と指摘し、「そうした極めて劇的な政策のメリット、デメリットをよく考えなければならなくなってくる」と述べた。  

門間日銀前理事(2013年)

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  日銀は4月28日の金融政策決定会合で、2%達成時期を「17年度前半ごろ」から「17年度中」に先送りしたが、市場予想に反して追加緩和は見送った。黒田東彦総裁は会合後の会見で、「今後、毎回の決定会合で経済・物価のリスク要因を点検し、物価安定目標の実現のために必要と判断した場合はちゅうちょなく量・質・金利の3次元で追加緩和措置を講じる」と述べた。日銀は次の会合を15、16の両日開く。

近い将来、金融緩和は必要ない

  門間氏は、日本経済は「そこそこ緩やかな回復を続けている」と述べ、世界経済の成長率も2018年にかけて徐々に高まっていくと国際通貨基金(IMF)が予想していることに触れ、「大きな構図は今のところ変わっていない」と指摘。「海外の下振れリスクがここにきて一段と強まっているという感じではない。4月時点と比べてほとんど変わってない」と述べた。

  金融政策運営も、「近い将来に金融緩和をしなければならないような大きなリスクはない」と語る。緩和が必要だとすれば「17年度中に物価上昇率を2%にする可能性をより確実にするという理屈だけだ」と述べ、そこを重視すれば「近い将来を含めていつでも緩和をするというロジックはあり得る」と言う。

  門間氏は物価について、足元では有効求人倍率がバブル期以来の高水準で労働市場が相当引き締まり、経済も緩やかな回復が続いているので、「いずれは賃金・物価上昇圧力がさらに高まっていくと考えるのが自然だ」と指摘。問題は「その度合いが、現時点で明確にこのくらい高まるだろうとは言えないことであり、そこは相当注意してみていかないといけない」と語った。

歴史的使命は相当程度達成

  日銀は13年4月、黒田総裁の下で2%の物価目標を「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」と表明、量的・質的金融緩和を導入した。

  門間氏は、これまでは「2年を念頭に置いて、できるだけ早期に達成するということに非常に大きな意味があった」と語る。13年は世界経済全体がリスクオンに切り替わる時期で、そのタイミングで「非常に強いメッセージを発して、デフレから脱却していく。しかも3本の矢の1本目として他の政策と合わせてやっていくというのは、メッセージとして非常に意味があった」と振り返る。

  さらに「他の中央銀行も2%を目標にしているので、日銀だけが2%を達成できないがゆえに日本経済は弱い、という誤解を払しょくする意味も含めて、2%を早期に達成すると言ったのは非常に意味があった」と語る。

  門間氏はただ今は「その意味での歴史的使命は相当程度達成できたと思う」と指摘する。ほとんど完全雇用の下で緩やかながら景気回復が続いており、「物価がどんどん下落して、それで不安が不安を呼ぶようなデフレにはないことを考えると、日銀が当初描いていたデフレ脱却の道のりは相当程度来たのではないか」と言う。

「中長期」が自然の流れ

  黒田総裁は14年11月の講演で、日銀が2%達成時期にこだわる理由について、「いつかは2%にする」ということでは、「デフレマインドが蔓(まん)延していた企業や家計が『これからは2%を前提として行動しよう』とは思わないだろう。デフレ期待を払しょくし、人々の気持ちの中に2%を根付かせるには、それなりの速度と勢いが必要だ」と述べた。

  門間氏は、物価目標はどの中央銀行も基本的に中長期的な目標で、2年と期限を切る方が「特別な枠組みだ」と指摘。13年の時点ではデフレ脱却のため特別なメッセージが必要だったが、今は日本も「はるかに普通の国になっている」ことから、「金融政策は中長期的に一定の物価目標を達成していくという普通の枠組みにしていくことが自然な流れではないか」としている。

  日銀の佐藤健裕審議委員は2日、釧路市で講演し、「私は、2%の物価目標は中長期的目標とすることが望ましく、その実現への道のりは長期戦であると思うので、そのためには現在の短期決戦型の政策の枠組みを持久戦に適した枠組みに修正していくことが今後の課題と考えている」と述べている。

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