流れ星を人の手で、元ゴールドマンのリケジョ「ビジネス黎明期」

更新日時
  • 18年にサービスを開始予定、イベントやテーマパークでの使用想定
  • 半径100キロメートルの範囲、関東地方なら3000万人が観賞可能

流れ星を人の手で作り出すー。ALE(エール、東京・港区)の最高経営責任者(CEO)、岡島礼奈氏(37)が挑むのは宇宙ビジネスだ。人工的に作り出した流れ星を、花火のようにイベントやテーマパークで利用し、収益を上げることを考えている。

  「今の宇宙ビジネスの状況はIT企業の黎明(れいめい)期に似ている」。岡島氏はブルームバーグとのインタビューで話した。流れ星を使ったビジネスプランを他の企業とも協議しており、世界中の注目が集まる2020年の東京五輪で披露することが目標だ。岡島氏は「皆が待ち望んでくれるようなサービスにしないといけないと思っています」と話す。

人工衛星から最大1000個にのぼる直径1センチ程度の金属の粒が放出され、大気圏に突入すると地上からは流れ星に見える

Bloomberg

  国家プロジェクトとして行われてきた宇宙開発だが、衛星とロケットの打ち上げ価格下落を受け、民間企業の進出が相次いでいる。米の起業家で大富豪 のイーロン・マスク氏率いる宇宙ベンチャー企業、米スペースXは、無人宇宙船「ドラゴン」を早ければ18年に火星に送る計画を発表。日本でも超小型人工衛星を開発するベンチャー企業アクセルスペース(東京・千代田区)が超小型衛星を打ち上げ、地球観測画像データ事業に参入する。

資金調達

  アクセルスペースに投資するベンチャーキャピタル(VC)、グローバル・ブレインの青木英剛氏は「衛星とロケットの値段が下がったことで、新規参入が生まれた」と分析し、VCにとっても宇宙産業が投資対象になってきたと述べた。またエールにとっては「最大のハードルは資金調達できるかどうか。資金調達ができれば一気に加速する」と話した。

  エールには岡島氏本人や社員に加え、個人投資家が出資している。今後は個人投資家に加え、企業にも資金提供を呼びかける考えだ。

  政府も宇宙の民間利用を促進しており、4月に閣議決定した「宇宙基本計画」では「宇宙に関連した新事業・新サービスを創出する民間事業者の取組を後押しし、国民生活の質を向上させ、持続的な産業発展と雇用機会の創出に貢献する」としている。岡島氏は「われわれは新しいことをしている。間違った行動をすると後に続く人の大迷惑になってしまう」という。

金属の粒

  エールは人工衛星から直径1センチほどの金属の粒を発射し、宇宙のチリが大気圏に突入した際に燃えてできる流れ星のメカニズムを人工的に作り出すことを目指している。17年後半に衛星を打ち上げ、18年にサービスを開始する予定だ。1号機を打ち上げるために、約10億円必要だという。

岡島礼奈氏

Photographer: Nobuhiko Ohtsuki

  1つの衛星には500-1000個の粒を搭載する。粒の素材の構成を変えることで、さまざまな色を生み出すことができ、青、緑、オレンジの3色の実験に成功した。実験では北極星とシリウスの中間の明るさは実現しており、都会の空でも見えるレベルという。上空60-80キロメートルを飛ぶため、地上では半径100キロの範囲で見ることが可能。関東地方ならば、3000万人が見られる。

  夜空を眺めるという点では、流れ星と花火は近い。日本煙火協会の専務理事、河野晴行氏は「流れ星だけではなく、ショーにしないといけない」と言う。「花火も300年という伝統のなかで何十万人が見に来るイベントになってきた。花火ももともとは日本では神事、欧州ではキリスト教のお祭りの一環だった」と述べた。

5色の流れ星

  岡島氏は東京大学大学院で天文学の博士号を取り、ゴールドマン・サックス証券などを経て起業した。「流れ星」起業のアイデアを得たのは大学で天文学を専攻していた01年、同級生と一緒にしし座流星群を見たときだった。「流れ星は小さなちりだから、空から流したら人工的に作れるのではないか」と同級生と話をしたという。

  実は流れ星を人工的に作るアイデアそのものは宇宙業界にいれば「10人に1人ぐらいは考えている」ものだという。ただ宇宙業界に「マネタイズまで考える人はいなかった」と岡島氏は言う。事業化や資金調達のノウハウを得ようと入社したゴールドマン・サックス証券を09年に退社後、事業化へ向け動き出し、11年にエールを設立した。

実験室で再現した流れ星

Source: Shinsuke Abe

  「オリンピック委員会には話をしに行っていない。ただ、事あるごとにオリンピックで流したいです、というのは言っています」と岡島氏。18年のサービス開始を目指しているのは、五輪で採用される前に実績が必要なためだ。

  東京五輪では、5色の流れ星を実現したいという。

(第5段落に企業にも資金提供を呼びかけるという記述を追加しました.)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE