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ソフトバンク孫社長、財務改善に本腰-アリババ株売却で1兆円超

更新日時
  • 買収のための負債で財務悪化、3月末で12兆円の有利子負債
  • 資産の流動性や含み益を示すことで資産価値を顕在化-アナリスト

ソフトバンクグループの孫正義社長が財務改善に本腰を入れ始めた。先週、相次いで発表した保有株の売却により得た資金は1兆1000億円を超えた。

  ソフトバンクは、アリババ・グループ・ホールディングの保有株式の一部売却で総額100億ドル(約1兆650億円)、ガンホー・オンライン・エンターテイメント株で730億円を手にした。アリババ株売却の発表資料では「主目的は当社の財務体質の強化」としている。

Masayoshi Son's $58 Billion Payday on Alibaba

ソフトバンクグループ 孫正義社長

Photograph by Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  ソフトバンクは借り入れによる資金調達で大型買収を行い、事業を拡大してきた。その結果、財務基盤は同業他社に比べて弱く、3月末で約12兆円の有利子負債を抱えていた。関係者によると、保有資産の一部を売却して財務体質を改善する方針で、フィンランドを拠点とするスマートフォン向けゲーム子会社スーパーセルの売却の検討に入ったことも明らかになっている。

  SMBC日興証券の菊池悟シニアアナリストはアリババ株などの売却について「直接的に現金を得られる効果もあるが、クレジットおよび株価の改善を狙っている」とみる。アリババの売却により資産の流動性や含み益が容易に現金化できることを示したことで、他の保有株式についても「価値が認められる可能性がある」と述べた。

投資会社

  ブルームバーグの集計データによると、ソフトバンクの財務の健全性を示す純債務・EBITDA倍率は13年3月期には1.97だったが、スプリント買収後の14年3月期には3.63に悪化。16年3月期には3.9となっていた。国内競合のNTTドコモの直近の同指標はマイナス0.1、KDDIは0.62、米国のベライゾン・コミュニケーションズは2.12、AT&Tは2.4だ。

  また信用格付けは、ムーディーズ・インベスターズ・サービスとS&Pグローバル・レーティングともに投機的等級の最上位にあたるBa1とBB+、日本格付研究所で投資適格の下から4番目にあたるA-。

  SMBC日興の菊池氏は、ソフトバンクを「投資会社」だとみており、投資先の価値が上がれば「利益を確定させていくのが基本的な企業行動」と指摘。「ガンホーやアリババの売却は投資会社としては自然」と述べた。

  ゴールドマン・サックス証券の松橋郁夫アナリストは1日付リポートで、アリババには成長余地があるという見方が多く、今回の売却には「意外感がある」と分析した。またアリババのような重要企業でも状況次第で売却がありえると確認できた点は「ポジティブ」だと評価した。

懸念

  ただ市場には、ソフトバンクの財務体質に向けた取り組みを言葉通り受け止めない向きも多い。次の大型合併・買収(M&A)に向けた準備ではないかとの懸念だ。

  BNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジットアナリストは、孫正義社長は「何かを買収するのだと思っている」と指摘する。数多く抱える投資候補の中で「お眼鏡にかなう何かが出てきたんでしょうね、としかいいようがない」と電話インタビューで話した。

  朝日ライフアセットマネジメントの中谷吉宏シニアファンドマネジャーは、保有株式の現金化による財務体質強化は評価しつつも「孫社長のことだから別の投資を考えているのではないかという心配もある」と言う。

  こうした懸念の背景には、ソフトバンクが資金調達と大型投資を繰り返してきた歴史がある。1981年にパソコン用パッケージソフトの流通事業として始まり、出版、インターネットプロバイダー事業へ進出。2006年までに英ボーダフォンの日本法人や日本テレコムを約2兆円で買収し、本格的に携帯電話事業を始めた。

  13年7月には1兆8000億円を投じて米スプリントを手中に収め再建に取り組み始めた。しかし市場の期待に追いつかず、ソフトバンクの時価総額は保有するアリババ株の価値を下回る状態になったこともあった。ブルームバーグのデータによれば、6日の時価総額は約7兆3000億円と、保有株式の時価総額合計約9兆3000億円を大きく下回る。

米へ巨額投資

  BNPパリバの中空氏は次の買収先候補について「米国へ巨額の投資をするか、大きな事業体を買う」とみている。米国以外の国であれば、1兆円を超えるような資金は必要ないはずというのが理由だ。

  ソフトバンクは14年、米市場でスプリントに続き同業のTモバイルUS買収を試みたが、規制当局からの承認獲得をめぐる懸念が強いとして協議を打ち切った。15年には経営陣による自社買収(MBO)を検討し、資金調達について海外の出資候補者と協議したが、出資候補者と条件面で折り合いがつかず断念したことが明らかになっていた。

  ソフトバンク広報担当の小寺裕恵氏は、アリババ株売却について「財務の改善が目的だ。得た資金は一般事業目的にも使う」と話した。大型買収を計画しているかどうかについては、コメントしなかった。

  6日のソフトバンク株は一時、前営業日比1.7%高の6123円まで買われた。終値は同1.2%高の6093円。ガンホー株は一時、同3.6%高の313円まで買われ、終値は同2%高の308円。

(6日終値に基づき株価と時価総額を更新しました.)
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