佐藤日銀委員:これ以上のマイナス金利の深掘りには明確に反対

更新日時
  • 2年で2%実現のコミットメントは再考を要する時期に来ている
  • マイナス金利政策は緩和効果をもたらすどころか、むしろ引き締め的

日本銀行の佐藤健裕審議委員は2日午前、釧路市内で会見し、「これ以上のマイナス金利の深掘りには明確に反対だ」と語った。

  日銀は15、16の両日、金融政策決定会合を開く。黒田東彦総裁は緩和期待が強い中で金融政策運営方針を据え置いた4月28日の前回会合後の会見で、「マイナス金利についての金融機関その他の批判によって、マイナス金利をさらに引き下げることが難しくなったというようなことは全くない」と指摘。「必要があれば、まだまだいくらでもマイナス金利を深掘りすることができる」と述べている。

  佐藤委員はこれに先立ち行った講演で、2%の物価目標の実現への道のりは長期戦であるとした上で、「現在の短期決戦型の政策の枠組みを持久戦に適した枠組みに修正していくことが今後の課題」だと述べた。具体的には、「資産買い入れの運営の柔軟化、ひいてはマネタリーベース目標の柔軟化」にまず着手すべきだと訴えた。
 
  佐藤委員は日銀が1月末に導入を決定したマイナス金利に反対した4人の政策委員のうちの1人。同委員は2014年10月の量的・質的金融緩和の拡大にも反対した。佐藤委員の講演を受けて、東京外国為替市場では、消費増税の延期と歩調を合わせた追加緩和が難しくなったとの見方から、ドル円相場が一時、円高・ドル安に振れた。

2年で2%、再考の時期に

  佐藤委員自身は、日銀の展望リポートが描く18年度までの2%の物価目標到達は実現しないと予測しているが、「無理に2%を達成する必要はないと考える。人々も、 所得の上昇を伴わない物価上昇は望んでいない」と述べた。

  日銀は「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に」2%の物価目標を実現するため、13年4月に「量的・質的金融緩和」を導入したが、佐藤委員は「既に導入から3年以上経過しており、このコミットメントの意味については再考を要する時期に来ている」と語った。

  マイナス金利の導入に反対した理由については「マネタリーベースの拡大とマイナス金利の採用は本質的に矛盾があり持続性に欠ける」と指摘。現行政策の枠組みでは、マネタリーベースの増加分の大半を占める日銀当座預金の限界的な増加分にマイナス金利という一種のペナルティーを課すものだとした上で、「ペナルティーを課しつつマネタリーベースの増加目標を維持するのは論理矛盾である」と述べた。

マイナス金利は緩和どころか引き締め的

  さらに、マイナス金利政策は「緩和効果をもたらすどころか、むしろ引き締め的である」と指摘。「金融システムの安定性に影響を及ぼす可能性がある」とも語った。

  具体的には、1月会合後ほどなくして株式市場が銀行株を筆頭に急落し、為替市場は円高となったことや、MMFや中期国債ファンドといった安全運用商品の募集停止・繰り上げ償還が相次いだことを受け、「マインドも悪化した」と指摘。その要因として、「預金の目減りへの不安感はもとより、マイナス金利という奇策を取らねばならないほど日本経済は悪化しているという誤った認識が浸透した」と述べた。

  「金融機関はイールドカーブの極度のフラット化と長期ゾーンまでの利回りのマイナス化から限界的な資産の逆ざやリスクに直面している」とも指摘。「逆ざや化はバランスシート拡張ではなく圧縮が合理的な経営判断となることを意味する」と語った。

03年の国債市場ショック前の危うさ

  先行きも「潜在的な信用コストの高い貸出先への融資抑制、資金アクセスの乏しい企業への貸出金利引き上げなどの動きが広がる可能性がある」と指摘。さらに、「収益・体力面に課題を抱える金融機関がリスク検証をおざなりにした投融資を行う危険性もある」と述べた。

  国債市場についても「わずかなプラスの利回りを求め、超長期国債の購入に向かう足元の動きには03 年のいわゆる『VARショック』前のような危うさを感じる」と語った。

  東京外国為替市場は足元、1ドル=109円近辺で推移している。大和証券の亀岡裕次チーフ為替アナリストは、佐藤委員はもともと量的・質的金融緩和に懐疑的な人だとした上で、佐藤氏の発言自体が為替相場に効いたのかは定かではないが、緩和への期待を弱める内容だったとしている。

  外為オンライン情報サービス室の佐藤正和顧問は、安倍首相が批判を承知で消費税増税を延期し、政策の総動員が必要な状況で、「当然、日銀の援護射撃を欲しがっていると思う」と指摘。「これがそう簡単ではないというところが佐藤日銀委員の発言ににじみ出て、円買いにつながった面もある」としている。

格下げならさまざまな影響

  佐藤委員は同日午後に行った会見で、消費増税が延期されたことに関連し、「持続可能な財政運営は持続的な成長のために必須だ」と指摘。政府に対しては「慎重な財政運営をお願いしたい」と述べた。一方で、財政政策と金融政策はそれぞれ独立しており、消費増税の延期が「金融政策の緩和スタンスに何らかの影響を与えるものではない」と語った。

  消費増税の延期に伴い、国債の格付けが引き下げられた場合の影響については、「さまざまな影響が生じる可能性がある」と指摘。格下げによって「金利が急騰する蓋然(がいぜん)性はかなり低い」としながらも、「金融機関の外貨調達コストがさらに上昇する可能性がある」との懸念を示した。

  

(会見内容を1、2、15段落以降に追加し見出しと本文を差し替えます.)
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