消費増税延期、日本株への短期影響薄-日銀連動や格下げ有無注視

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2017年の国内景気の押し下げ要因として、株式市場で懸念の強かった消費税率の引き上げが先送りされた。年初来の日本株低迷の一因となってきただけに、増税見送りの決断は不透明感の後退につながる。ただし、事前の報道を通じ相場への織り込みが進んだとみる市場関係者は多く、短期的に株価の押し上げ要因とはなりにくい。

  安倍晋三首相は1日、17年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを再延期すると正式に表明、今秋に総合的な経済対策を発動する考えを示した。首相は14年11月、当初は15年10月からを予定していた増税スケジュールを1年半延期することを決め、直後に衆院解散・総選挙を実施、国民の審判を仰いだ経緯がある。今回は衆院を解散せず、7月の参院選で民意を問う。

  東証1部全体の値動きを示すTOPIXは2月12日の1196.28を底値に回復基調にあるが、年初来の騰落率はマイナス12%(1日時点)と、主要先進国の中で日本はイタリアに次ぐワースト2位となっている。米国のS&P500種株価指数は2%強のプラスだ。安倍首相は1日夜の記者会見に先立ち、午後の自民党会合で増税再延期の決断を明らかにしていた。同日の日本株は下落、為替はドル安・円高方向に振れた。

  日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジストは、「米国の成長率に比べれば、増税時期が日本の年間1株利益に与える影響は小さい。9割の海外投資家に織り込まれており、延期は短期的に株価にノーインパクト」と分析。今後編成される今年度補正予算も、5ー10兆円程度の規模は既に織り込み済みとみる。安倍首相は1日夜の会見で、経済対策の詳細を明らかにしなかった。

  岡三証券の阿部健児チーフストラテジストも、消費税増税の延期は既にメディアで大きく報じられていたため、「延期決定を手掛かりにあらためて日本株が上昇する公算は小さい」と予想。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは、足元の株価に中立で、「日経平均株価は短期的に1万7000円付近でもみ合いそう」と言う。

国債増発なら日銀に買い余地、格下げの副作用リスクも

  市川氏は、今後は景気浮揚につながる対策を政府が矢継ぎ早に打ち出せるかどうかに注目。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、増税延期による税収不足を補うため、「国債増刷に動くことは必至。日本銀行の買い入れ余地が拡大するとみれば、金融緩和という面でも株式市場にプラス」と話している。三井住友アセットの市川氏、岡三証の阿部氏はともに、6月に日銀が追加金融緩和に動く可能性に言及した。

  日興アセットの神山氏は、消費税増税の先延ばしは中長期的には国内景気に好影響を及ぼすとみている。消費や市場のセンチメントにプラスに働くほか、「賃金上昇が消費につながりやすくなり、経済全体を押し上げる」と予想。増税時の悪影響も、米国景気の回復後に企業の利益や給与水準が上がってから実施した方が相対的に小さく、今回の延期で日本株のリスクプレミアムは低下するとみる。「マーケットのリスクプレミアムが下がることが市場の落ち着きに早く貢献し、来年3月とみていた日経平均2万円程度が1-3月に前倒ししやすくなった」と言う。

  経済協力開発機構(OECD)が1日に発表した最新の世界経済見通しでは、日本の成長率は16年がプラス0.7%、17年がプラス0.4%と減速が見込まれている。

  一方、中長期的なリスク要因の存在をみているのはピクテ投信の松元浩常務執行役員だ。「副作用の一つは国債の格下げ。これまで影響はなかったが、日本の信用問題でドル調達が難しくなるという形で実体経済に出始めてくることを懸念している。喜ばしくない円安になる」と警戒感を示す。また同氏は、消費税増税を可能にするため最大限に努力してきた黒田東彦日銀総裁のスタンスも変わりかねず、「ポリシーミックスが変わる。『財政緊縮・金融緩和』が『財政緩和・金融中立』というフェーズに入るのではないか」とも話した。

  三井住友アセットの市川氏も、「税収の落ち込みは避けられないため、中長期的な財政再建の道筋を明確に示せないと、海外投資家の資金流入が細るリスクが高まる」と指摘している。

  2日の日本株は、日経平均が393円安の1万6562円と大幅続落。為替市場では一時1ドル=108円80銭台と5月18日以来の円高水準に振れた。JPモルガン・チェース銀行は、1日夜の安倍首相会見では経済対策の具体的内容に言及せず、発表を急いでいないことが示されたとし、日銀による早期追加緩和の可能性を低下させるものとの認識を示した。野村証券は、増税延期を受け日本経済見通しを改定。駆け込み需要顕在化の時期が後ずれするとし、18年度の実質国内総生産(GDP)成長率予想を前年比プラス0.5%と、従来のプラス0.7%から下方修正した。

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