消費増税延期で日銀動くか、6月緩和で割れるエコノミストの見方

訂正済み
  • 「良いタイミング」-政策協調必要と日銀出身の愛宕氏
  • 六車氏:財政規律の緩み否定できず、かえって動きにくい

安倍晋三首相は、2017年4月に予定していた消費増税を2年半先送りすることを表明した。エコノミストの間では、日本銀行が15、16両日開く金融政策決定会合で、財政の拡大と歩調を合わせて追加緩和に踏み切るとの見方がある一方で、財政規律の弛緩(しかん)により、かえって6月の追加緩和はやりにくくなったとの見方も出ている。

  日銀出身の岡三証券の愛宕伸康チーフエコノミストは6月会合は「日銀が動くには良いタイミングだ」とし、「日本は強い政策協調を必要としている」と指摘。同じく日銀出身のJPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「政府の増税延期に関係なく日銀は物価の弱さを認め、それを行動によって示さなければならない」とし、7月会合での追加緩和を予想した。

  日銀は前回4月28日の会合で、市場予想に反して現状維持を決定。黒田東彦総裁は会合後の会見で、「世界経済の先行き不透明感が強い下で、わが国の経済・物価の下振れリスクは引き続き大きい」と言明。「今後、毎回の決定会合で経済・物価のリスク要因を点検し、物価安定目標の実現のために必要と判断した場合は、ちゅうちょなく量・質・金利の3次元で追加緩和措置を講じる」と述べた。

黒田東彦日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg *** Local Caption *** Haruhiko Kuroda

  関係者によると、日銀内の一部では消費増税が先送りされれば2%の物価目標達成には追い風になるとの見方が出ていた。当初15年10月に予定されていた10%への引き上げ延期が14年に決まった際には、日銀内で延期に否定的な意見が強かったのとは対照的だ。

物価の基調は鈍化

  4月の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は前年比0.3%低下と2カ月連続マイナスとなった。基調的な物価を測るための指標として日銀が独自に公表している生鮮食品とエネルギーを除いたいわゆる日銀版コアCPIは0.9%上昇と昨年7月以来の1%割れとなった。

  ドイツ証券の松岡幹裕チーフエコノミストは1日付のリポートで、16年7ー9月期に0.1%の利下げを見込んでいるものの、増税延期に伴い「その後の追加金融緩和の必然性は従来比で低下しそうだ」と指摘する。ただ増税延期でも物価上昇率が「2%に達しないことに変わりはない」として、17年後半には利上げ、国債買い入れの減額、政策目標の変更など、「金融政策の根本的な転換の可能性について引き続き注目したい」としている。

  日銀の佐藤健裕審議委員は2日、釧路市内で行った会見で、日銀の展望リポートが描く18年度までの2%の物価目標到達について「無理に2%を達成する必要はない」と指摘。13年4月の量的・質的金融緩和の導入から3年以上経過しており、「このコミットメントの意味については再考を要する時期に来ている」と語った。

  また、「これ以上のマイナス金利の深掘りには明確に反対だ」とも発言。東京外国為替市場では、消費増税の延期と歩調を合わせた追加緩和が難しくなったとの見方から、ドル円相場が一時、円高・ドル安に振れた。

  佐藤委員は消費増税が延期されたことに関連し、「持続可能な財政運営は持続的な成長のために必須だ」とも指摘。政府に対しては「慎重な財政運営をお願いしたい」と述べた。一方で、財政政策と金融政策はそれぞれ独立しており、消費増税の延期が「金融政策の緩和スタンスに何らかの影響を与えるものではない」と語った。

財政規律の緩みは否めない

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは1日付のリポートで、消費増税の再延期により「財政規律の緩みは否定できない」と指摘。「政府の経済対策策定の表明に歩調を合わせ、15、16日の金融政策決定会合で緩和を検討する可能性は、今回の大幅な増税延期で逆にやりづらくなったのではないか」と指摘する。

  黒田総裁は1日、北海道新聞のインタビューで、13年1月に出した政府・日銀の共同声明で政府は財政再建を進めていくことを約束していると述べ、財政健全化の重要性をあらためて強調。20年度までに基礎的財政収支の黒字化を目指す政府目標の実現に向けた対応を求めた。

  中国の景気減速や原油安などを背景に、年初来、円高が急速に進み、5月上旬には一時1ドル=105円台と14年10月以来の高値に上昇。日経平均株価は2月に一時1万5000円を割った。米国の早期利上げ観測や消費増税の先送り報道を受け、5月末に日経平均株価は一時1万7000円台を回復、円相場も1ドル=110円台に下落した。   

  みずほ証券の丹治倫敦シニア債券ストラテジストは5月31日付のリポートで、増税再延期による株価へのポジティブな影響を腰折れさせない観点から、追加緩和パッケージを打ち出す可能性は否定できないと指摘。その上で、「株価・為替だけでなく期待インフレに底打ちの兆しが見られ始めたことで、追加緩和のカードが限られる日銀が、緩和を見送る理由付けをしやすい状況になってきたことも確かだろう」として、6月会合は見送りをメーンシナリオとみる。

  3月で日銀審議委員を退任した白井さゆり慶応義塾大特別招聘教授は1日、ブルームバーグに対し、日銀はマイナス金利政策の効果と副作用をしっかり見極める時だとして、今月の決定会合で追加緩和の決定は見送るとの見通しを示した。

  

(第7、8、9段落に佐藤日銀審議委員の講演内容を追加し更新します.)
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