東京証券取引所のインフラファンド市場に2日、運営する第1号ファンドを新規上場させたのは分譲マンション開発のタカラレーベンだ。新たなマーケットの扉を開いた挑戦心はリーマン・ショック後の苦い経験で培われ、分譲事業依存からの脱却を目指し育成したメガソーラー事業の拡大で、投資先インフラ資産を現在の10倍以上にするシナリオを描く。

  2015年4月に開設された東証インフラファンド市場で、上場第1号となったのはタカラレーベン・インフラ投資法人。昨年8月設立の太陽光発電設備を資産としたファンドで、公開価格は10万円、分配金配当利回りは5.8%。運用はタカラレベの100%子会社であるタカラアセットマネジメントが行っている。資料によると、資産総額は約87億円(インフラ資産約80億円、インフラ関連有価証券約7億円、オーバーアロットメント除く)。

  タカラレーベンの島田和一社長(50)はブルームバーグのインタビューで、インフラ市場について「これからどう発展していくのかという興味がある」とし、「上場だけで頭打ちでなく、発展できるものにしていくための企業努力はしていきたい。太陽光にとどまらないエネルギーの研究、成長戦略を出せるスポンサーでいたい」と述べた。

  タカラレベは、日本初の「戸別蓄電付き売電可能太陽光マンション」を発売するなど太陽光発電マンションの供給実績は5年連続で全国1位。同社がメガソーラーへの新規展開を中期経営計画で打ち出したのは、再生可能エネルギーの固定買い取り制度が始まった直後の12年7月だった。翌年夏に栃木県塩谷郡で発電規模約3メガワットで稼働を開始、事業参入を果たす。

  現在稼働しているのは53メガワットで、さらに約50メガワットが工事中。候補案件の効率性などを考慮すれば、「130メガくらいは現実稼働でき、200メガまでは持っていきたい。そうなると、資産規模で800億から1000億円近くになる」と島田社長は言う。バイオマスなど太陽光以外の再生可能エネルギーも将来は組み込めるように研究を行っている、とも話した。

リーマン・ショックが与えたテーマ

  本業の不動産販売以外の新規事業の必要性を感じたのは、08年のリーマン・ショックによる業界の落ち込みやそれに伴う新興デベロッパーの淘汰を経験したためだ。島田社長は、「分譲事業がフローであれば、そこに依存しないビジネスモデルの再構築が必要というのがリーマン・ショック後のテーマだった」と指摘。13年秋に東証インフラ市場が創設されることが分かった直後から、上場1号を「実現できるかどうかは分からなかったが、チャレンジしていこうという決断は早かった」と振り返る。

  そうした中で選択したメガソーラー事業について、同社長は「20年間の固定買い取り制度が魅力。安定的な収入が入ってくるというのが大きなきっかけになった」と言う。施設建設に必要な土地の手当てには目利き力がある上、「東日本大震災以降の日本を長い目で見たとき、原子力発電所以外のエネルギーに関わることに大きな意義がある」と感じた。太陽光発電の買い取り価格はキロワット当たり当初40円、その後36円、20円台へと徐々に低下しているものの、同社が事業を行っているのは早期に事業を開始したことが寄与し、40円と36円の高価格帯に限られ、同価格帯の権利物件だけで200メガは達成可能な状況という。

ライツ・イシューに次ぐ2度目の「第1号」

  タカラレベが資本市場で得た「第1号」の称号は、今回が2回目だ。10年3月に上場企業としては初めて、資金調達手法としてライツ・イシューを採用した。増資の際、既存株主に新株予約権を無償で割り当てるもので、増資に応じない既存株主は予約権を行使すれば、持ち分の希薄化を回避できる。海外では定着していたが、国内でも制度改正を経て可能になった。

  同社は、平等性の高いライツ・イシューを通じ約47億円を調達。島田社長は、「リーマン・ショック後でまだ軌道修正し切れなかった中でのトライで、資金的にも取りたい時期だった」とし、結果的にリーマン・ショックは「経験を含め後から思えば良かった。それが会社として変化、進化していかなければならないという一つの転換になった」と話す。

  同社によると、不動産管理やメガソーラーなどストックビジネスを中心に事業の多角化・多様化を進めてきたことで、企業構造も変化した。5年前はフロービジネスが9割だったが、現在は半分まで低下。今回のインフラ事業への上場を機に、投資家に対してもこうした構造変化をアピールしたいとしている。

  インフラファンド市場は、オフィスビルやマンションなど不動産を投資対象とした投資法人、投資信託が上場するREIT市場と同様の仕組みで、太陽光発電や港湾施設などインフラを投資対象とする投資法人と投資信託が上場対象だ。ファンドは、保有するインフラからの収益を投資者に分配する。メガソーラーの想定運用期間が約20年である点を踏まえ、16年度以降、インフラファンドの利益に対する法人税の非課税期間が10年から20年に延びるなど税制上の優遇措置も強化された。

  きょう新規上場したタカラインフラFは、公開価格に対し9.9%高の10万9900円で初値を付けた。終値は24%高の12万3900円。セゾン投信運用部の瀬下哲雄ポートフォリオマネジャーは、「REITが過熱し、国債利回りはマイナス金利と、今は利回りがある商品が投資家から渇望されている。上場のタイミングとしては良い」と指摘。一方で、現在は金余り状態で国や地方自治体はほぼゼロで資金を調達でき、「供給サイドから上場物件は出にくい」との見方も示した。

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