国内企業の身売り・事業売却加速、過去10年で最高ペース-危機対応で

  • 年初来で6兆円、日本企業が売り手の案件が7割
  • 東芝、三菱自、シャープが事業や株式売却、身売り

国内企業による身売りや事業売却が記録的なペースで伸びている。背景にあるのは、必要に差し迫られての売却であり、歴史ある企業それぞれが直面した危機だ。

  ブルームバーグの集計データによると、日本企業による事業や株式などの売却は、年初から5月30日までの間、発表ベースで総額554億ドル(6兆1600億円)。前年同期比62%増で、過去10年の同期では最高額となった。日本企業が売り手となった案件は、金額ベースで買い手も合わせた国内全案件の7割を占める。

  難局に直面する国内企業で再編が相次いでいる。不正会計問題で前期(2016年3月期)に赤字転落した東芝は医療機器と家電事業を売却。燃費不正が明らかになった三菱自動車は、日産自動車との資本業務提携に存続の活路を見いだした。負債が膨らみ、自力での経営再建を断念したシャープは、台湾の鴻海精密工業の傘下で再建する道を選んだ。危機から脱するため、こうした企業がさらに現れる可能性がある。

  「海外市場の需要を取るための成長戦略型の買収が増える一方、いわゆる危機対応型のディールが、グローバル競争の激しいエレクトロニクスや自動車業界などで起きている」と合併・買収(M&A)のアドバイザリーなどを手掛けるフロンティア・マネジメント常務執行役員の光澤利幸氏は話す。「今後しばらくは、似た案件が見られるだろう」とみている。

歴史ある企業

  東芝は1875年、シャープは1912年創業と、いずれも100年を超える歴史のある日本企業。三菱自は1917年に三菱重工業(当時は三菱造船)の乗用車部門として国産初の量産乗用車となる「三菱A型」の製作を開始したのが前身で、1970年に三菱自動車工業として独立した。

  事情に詳しい関係者によると、エアバッグのリコール問題を国内外で抱えるタカタは、米KKRをはじめ複数のスポンサー候補と協議をしている。別の関係者によると、東芝は現在進める構造改革の中で、さらなる事業売却に発展する可能性がある。東芝広報の平木香織氏は、各事業について、常に位置づけや環境に応じたさまざまな可能性を検討していくが、現時点で決定しているものはないと話した。

  事業売却の一方、日本企業は海外の需要を取り込むための買収姿勢も維持している。アサヒグループホールディングスは4月、英ビールメーカーのSABミラーから傘下の伊ペローニ、蘭グロールシュなど欧州4社を買収する契約を締結した後に、M&Aに今後最大4000億円を投じる方針を明らかにしている。

  ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「日本企業は攻めと守りのディールをスピーディーにバランスよくやっていくべきだ」と話す。「ノンコアで低収益の事業を縮小・撤退する一方、コア事業をグローバル市場で拡大させるためにアジアのビッグプレーヤーとの連携や資本提携、合弁事業などを迅速に進めていくべきだ」と述べた。