シリコンバレーとの架け橋、日本の存在感向上に前米駐日大使が一役

  • 三菱商との投資ファンド組成で日本企業への提携先紹介など狙い
  • 三井物も現地に駐在員6人を派遣-総合商社で最大陣容

「ポートフォリオに組み込んだ企業だけでなく、投資先以外の幅広いシリコンバレーの先端企業を提携先として日本に紹介できることが強みの一つだ」。2013年8月までの4年間、米国駐日大使を務めたジョン・ルース氏。三菱商事と組み、シリコンバレーで成長段階にある企業に投資するファンドを立ち上げた。ブルームバーグとのインタビューなどで狙いを語った。 

  日本に赴任する前は世界的な情報技術(IT)企業が集まる米カリフォルニア州シリコンバレーで25年間、弁護士としてベンチャー企業を支援してきたルース氏。そんな経歴を持つ同氏も大使の任期を終えて帰国すると「あらゆる業種においてITが基本的にそのやり方を変えていた」。かつて経験したことのない大きな技術革新の変化を感じたという。

  一方、市場や提携先としての日本への関心が非常に高まっていることにも気づいた。80もの言語が飛び交い、世界中から人々が集まるというシリコンバレー。日本の存在感は一定程度あるとはいうものの、中国やインド、イスラエルなど他の国々と比べればまだ劣るのが現状だと指摘。「もっと日本のプレゼンスをシリコンバレーで拡大することが極めて重要」として、大使時代に個人的な知己のあった三菱商事の小島順彦前会長にファンド設立を持ち掛けた。

  立ち上げたのがジオデシック・キャピタル(米カリフォルニア州)。米著名ベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツにてフェイスブックツイッターなどの投資に関わったアシュヴィン・バチレディ氏も参加した。ルース氏は「ジオデシック・キャピタルの設立を通じてシリコンバレーと日本の架け橋の一翼を担いたい」と力を込める。

約10社が投資

  ジオデシックが運用するファンドの総額は3億3500万ドル(約370億円)。三菱商事のほか三井住友銀行三菱重工業三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、損害保険ジャパン日本興亜ニコンなど約10の日本企業が資金を拠出。ファンドは1社当たりに500万ドルから3000万ドルを投じ、運用期間は10年を計画。すでに携帯電話向けメッセージアプリを手がけるスナップチャットなど4社に投資した。

  バチレディ氏は17日の都内での会見で「先進国においても途上国においても技術が成長の推進力として機能している。シリコンバレーでも一流の優良技術を持つ企業が日本に進出し、成功するための手助けをしたい」と語った。ルース氏の幅広い人脈などを生かして、将来的に産業構造の変革を主導できるソフトウェア技術やビジネスモデルを持つ企業を発掘、成長資金を投じる。

  会見に同席した三菱商事の吉田真也常務執行役員は「投資のリターンは当然期待しているが、ビジネスにおける先端技術の応用や新規事業の開発、既存事業のビジネスモデルの変革にも主眼を置いている。そのためにもシリコンバレーとの接点を深めたい」と狙いを述べた。

  三菱商事は今期からの新中期経営計画で、人口知能(AI)やさまざまな機器をインターネットでつなぐIoTといった先端技術との組み合わせによって事業の成長を目指す方針を打ち出した。4月からは執行役員の柳原恒彦氏がシリコンバレー支店に駐在。同社として初めてシリコンバレーに役員を常駐させ、先端技術を取り込む体制を強化する。

  子会社を通じて投資した損保ジャパン日本興亜ホールディングスは「現地情報収集力を飛躍的に高め、シリコンバレーにおけるネットワークづくりを加速することができる」と発表資料でコメント。シリコンバレーに研究・開発拠点を4月に新設しており、4人の駐在員を派遣。金融とITを融合させた新たな保険商品の開発などを目指す。

  他の総合商社でもシリコンバレーに対する関心は高い。三井物産はシリコンバレー支店とベンチャー投資専門子会社の三井物産グローバル投資(MGI、カリフォルニア州)に東京本社から計6人の現地駐在員を派遣。総合商社としては最大規模の陣容といい、新技術やビジネスモデルの獲得につなげる。ICT事業本部長の北森信明執行役員は「情報産業分野の新しい技術やビジネスモデルは米国で発生しており、アンテナを高く立てておきたい」と話している。

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