主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は26日の会合で世界経済について討議した。日本政府の説明によると、議長の安倍晋三首相は機動的な財政戦略や構造改革を提案し、リーマン・ショックを引き合いに出して世界経済の危機(クライシス)に懸念を示したが、危機の度合いの表現をめぐって疑問も出たことから引き続き調整することになった。

  世耕弘成官房副長官が記者説明した。それによると、安倍首相は金融、財政と構造改革の総動員、特に機動的な財政戦略や構造改革にG7が協力して取り組みを強化することの重要性を訴えた。その上で、世界経済をけん引するため、「G7伊勢志摩経済イニシアチブ」の取りまとめを提案した。

  世界経済の認識については、多くの首脳から新興国の現状に厳しい認識が示され、G7が連携して対処していくことを確認した。ただ安倍首相が世界経済のリスクが高いと発言したことに関しては、「クライシスとまで言うのはいかがなものかという意見も出た」という。世耕氏は「最後の要調整部分は現在の世界経済のリスク認識の表現の仕方」に絞られていると述べた。

  ブルームバーグ・ニュースが26日入手した英文の首脳宣言草案のコピーには、「時宜を得て適切な政策対応を取らなければ、世界経済が通常の景気サイクルを逸脱して、危機に陥るリスクがあることを認識している」という文言が盛り込まれている。

  26日の討議では、デジタルエコノミーや環境など将来や成長への投資という形での財政出動や、民間投資促進で各国が合意、それぞれの取り組みについてコミットしたという。中国についても意見交換。過剰生産や過剰供給の問題を議論し連携を確認した。具体的には鉄鋼産業に言及があった。為替についてもあまり議論になっていない、と世耕氏は説明した。

「大きなリスクに直面」で一致

   安倍首相は、サミットで世界経済の状況がリーマン・ショック並みに悪化しかなねいとの懸念を示す複数の資料を提出した。例えば経済成長率に関する資料では、国際通貨基(IMF)の2016年世界経済見通しで先進国や途上国ともに下方修正が続いていることを示し、「リーマン・ショック時において、直前までプラス成長が予測されていたが、実際はマイナス成長に陥った」と説明。08年4月に3.8%だった世界の成長予測は09年実績で0.1%減に大幅に下方修正したことに言及している。

  別の資料では、新興国・途上国の投資伸び率が15年に実質2.5%と08年のリーマン・ショック後の3.8%を下回ったことを指摘。新興国・途上国の国内総生産(GDP)や輸入伸び率も同ショック以降、最も低い水準に陥っていると指摘するとともに、新興国への資金流入も15年に初めてマイナスに転じたことを示している。

  またエネルギー・食材・素材などの商品価格が14年以降55%下落しており、リーマン・ショック前後の下落幅と同じだとしている。

  安倍首相は従来、17年4月からの消費税率引き上げは、リーマン・ショックや大震災などの重大な事態が起きない限り予定通り実施すると国会などで繰り返し発言。重大な事態かどうかは専門家の知見を踏まえた上で政治判断すると述べてきた。世耕氏によると、サミットの討議では日本の消費税は話題に上らなかったという。

  安倍首相は26日夕、一部記者団に対し、「世界経済は大きなリスクに直面をしているという認識については一致することができた」と述べた上で、そのリスクに立ち向かうための伊勢志摩経済イニシアチブについて「取りまとめについて合意できたことは大きな成果であった」と述べた。発言はNHKがニュースで放映した。

  第一生命経済研究所の熊野英生エコノミストは26日付のリポートで、伊勢志摩サミットで各国に協調的な財政出動を呼び掛ける日本と足並みがそろわないのは「日米欧で世界経済に対する認識が違っているからだ」と指摘。その上で、「多くの人が世界経済の先行きに対する不安を抱いていることは間違いないが、リーマン・ショック後の様子と同一視することが的確だとは思えない」との見方を示した。

各国の事情

  安倍首相は今月初めの欧州訪問で各国首脳に機動的な財政出動への理解を求めたが、慎重なドイツ、英国との隔たりは埋まらなかった。木原誠二外務副大臣は20日、ブルームバーグの取材に対し、「経済については各国の事情もある」と説明。「大切なのは、世界経済がやや停滞している時に、G7がそれぞれ全員で責任を果たしていくのだと確認すること。構造改革もあるだろうし、財政出動に限るものではない」と話していた。

   サミットに先立って21日まで仙台市で行われたG7財務相・中央銀行総裁会議。日本の財務省が公表した議長サマリーによると、各国は世界経済を成長経路に回帰させるため、「各国の状況に配慮」しつつ、金融、財政、構造政策を動員するというコミットメントを確認。財政出動に関しては、「債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せることを確保しつつ、経済成長、雇用創出および信認を強化するため機動的に財政政策を実施することの重要性に合意した」と記述された。

  各国首脳は26日、世界経済の討議に続き、貿易や政治外交について議論。2日目の27日午前にエネルギー問題などについて意見が交わされる。安倍首相はサミット終了後、オバマ米大統領と広島市を訪問する。

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